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第17話 黒い罠

カーラ 公爵令嬢 銀髪に翠の瞳

レフ  転生者 琥珀狐 カーラの相棒

コラン カーラの想い人(両想い) 王子 金髪碧眼

ヘルン コランの姉 王女 金に近い茶色の髪 碧眼

ロナルド(ロニー) カーラの兄


プラシノ  風の精霊


(ハク) 沼地に住む魔物 人の姿をしている

ハクリ   白の執事 白蛇の姿をしている

トッチョ  白に救われた少年


キャンディ 帝国第七王女

「ヘルン様の結界かーー!」

「助かった」


 あちこちで安堵の息が漏れている。

 何が起こったのか分からなかった者もいただろうが。


 光の壁が、皆を守ってくれていた。

 結界の外では、小動物や草木が死んで朽ちている。

 強い風が吹いて、凝った瘴気のようなものが霧散した。


『気をつけなさいね』


 ベルトにつけた、小さな鏡から声がした。

 念のために持っておけと、ヘルンから渡されていた。

 光の壁が消失したが、もう異臭はしない。エリアスたちは何もなく呼吸する事ができた。


「すみません。油断しました」


『あなたに何かあったら、私がミルティアに殺されちゃうわ』

 おどけて口を尖らせる王女。


「この事はどうぞご内密に……」

 エリアスは赤茶色の髪をかきまぜた。婚約者の名前を出されると、辛い。


 エリアスが見ていたすべての映像は、ヘルンにも共有していた。

 ヘルンの咄嗟の判断と魔法がなければ、大きな被害が出ていただろう。


『恐らく術者はこっちをうかがっているでしょう。何か気づいたら』


「すぐに、対処いたします」


『ではね』






 通信を切りあげたのは、その気配に気づいたからだ。


「お姉さん、あいつの匂いがする」


 ニヤつくような声がする。

 易々と背後をとられるなど、いつぶりだろう。

 ふん。面白いではないか。

 胆力ならば負けはしない。妖艶な笑みを浮かべ、声の主を振り返るヘルン。

 浅黒い肌に黒髪の少年だった。


「あら。黒蛇の親玉はぼうやかしら。ご丁寧に、こっちにもご挨拶に来てくれたのね」


『ヘルン殿下!』


 部下たちの声が遠く響く。

 結界により、一対一になるよう、周囲から隔離されている少年とヘルン。


 結界をはったのは、ヘルンだ。


 部下を守りながらでは、存分に戦えないと判断した。


「甘いなぁ。やっぱりあいつの仲間だ」

 

 ヘルンの考えを読んだように、くつくつと笑う。

 少年のうしろから、黒い鞭のようなものがしなり出てきた。

 咄嗟に剣を抜いて受ける。

 鞭ではなく、黒蛇だった。

 蛇にしては大きく、恐らく少年の体と繋がっているけれど。


 口蓋を裂きながらも剣に食らいつこうとする黒蛇を、力任せに切り払う。


 斬られた黒蛇は肉塊となりながらも少年の元に戻り、何事もなかったかのようにくっついて、再び蛇の姿になった。


「次はこちらから行かせてもらうわね」


 魔力をのせた剣撃が少年を捕らえようと縦横無尽に舞い踊る。しかしヘルンに手応えはない。

 思わず品もなく舌打ちしてしまう。

 そこに立っているだけのように見えるにもかかわらず、少年は全てをかわし切ってきた。

 ならば。

 荒っぽいが、結界があるので部下には被害がないだろう。

 もしかしたら爆風により多少の怪我くらいはするかもしれないが。

 そこまで配慮できる余裕は、もはや無いのだ。

 少年のいる空間ごと、吹き飛ばしてやろう。

 ()()()()()()()退()()()()()()()()()()()


 何に気を取られたのか、少年がちらりとよそ見をする。


(今っーー!)


 結界を壊さず維持できるギリギリの強さで、ヘルンは爆破の魔法を使用した。

 自身には三重の結界を張っていた。

 なのに。

 爆風を追い風にするようにヘルンに向かってくる少年が、にやりと笑う。

 黄ばんだ牙が唇の中でいやらしく光る。

「罠だよ」


(いけすかないやつねーー!)


 焦りを逆手に取られた。

 かかってくるなら切り捨てるまでと、迎え打つヘルン。

 次の瞬間。

 少年の()()が、右の肩を貫いた。


(くっーー!)


 咄嗟に体をずらして離脱し、間髪入れず回復魔法をかける。

 毒でも仕込まれたのだろうか。痛みはないが違和感が残る。

「やってくれるわね……」


「思ったよりは、楽しめたよ」

 少年はこともなげに距離を詰め、ヘルンの耳元で囁いた。


「あいつに伝えてよ。十年ぶりに遊ぼうって」


 あいつとは誰の事だと、聞こうとした時には姿を消していた。

 ヘルンの結界など、最初からなかったかのように。






「たまごは眠る。たまごは黙る」


 木の上で、少年は歌うように呟いていた。


「たまごは何も思わない。たまごだから思わない。思わないから、気づかない……」

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