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プロローグ1 夢を夢であると自覚できたためしがない

ダンジョン登場ビックラポン

 夜がふけて、人々が寝静まったころ。

 彼は大きな揺れを感じ、ベットから飛び起きた。


(なんだこの揺れ!?地震か!立ってられない、とりあえず窓と部屋のドアを開けて回路の確保だ。) 


 揺れの中、どうにか移動して避難経路の確保をした後、避難準備をしつつ、スマホで情報を集めた。


(やっぱりネットは大騒ぎだな。揺れは日本全国で発生したらしい。地震の原因は不明?直下型地震や南海トラフ地震じゃないのか?まぁ、まだわかってないだけだろう。)


 未だ小さな揺れを感じながら、2階の自室から1階のリビングまで移動し、焦る気持ちを抑えつつ、財布や通帳、その他貴重品を集めていく。


(やっぱり物が多い一階はある程度散らかってしまっているな。大きな物だけは固定しておいてよかった。

 それより揺れはだいぶ収まったな。でも、次は津波だ。ここまでの揺れがあったんだ。津波が来る可能性が高いだろう。これはついにアレの出番だな。)


 彼が津波が来る可能性があるにもかかわらず、避難所や高台に向かわず、家の中を漁っているのには理由がある。それは地下シェルダーだ。親の遺言で不安だから今後住む家に地下シェルターを設置してくれと言われていたため、両親の多額の遺産で地下シェルター付きの家を購入した。だが、地下シェルター付きの家の多くは、家族で暮らすための大きな一軒家であったため、彼は一人暮らしには似合わない家に住んでいたのだ。


(最後の親孝行だと思ってこの家を買ったが、これまでこの家に住んでいてよかったことなんてなかった。なんなら掃除が面倒という大きすぎるデメリットしかなかった。

 でも、今日こそこの家の真価を発揮できる!)


 そんなことを考えながら、ブレイカーを切り、多くの荷物を抱えてシェルターの入り口へ向かう。


(入り口の開け方は覚えている。つい先日、中の掃除と備蓄の入れ替えをしたばかりだからな。)


 手順通りに入り口を開けて中に入り、施錠する。


(ふぅ、取り敢えずこれで安心だな。ここには1ヶ月分の食事や蓄電器、はたまたテレビやパソコンまで用意してある。このシェルターでの生活を満喫しよう。)


 彼は暇な時に色々なものを買ってはシェルターに置くのが半ば趣味と化していた。どんな物があるのか全てを把握してはいない。そのため、彼はネット上の揺れについての情報が出揃うまでシェルターを探索しようと考えた。


(おー!暇つぶし用のゲームまである!いつもは仕事が忙しくてやる時間も気力もないからな。こんな時ぐらいならしても許されるだろう。よし、もっと奥に行ってみるか。)


 棚に置いてあるものを物色しながら、彼はゆっくりとシェルターを進んでいく。10分ほど経った後にシェルターの最奥の壁まで辿り着いた。そしてそこで彼はあるものを発見した。


(は?なんだこれ?穴か?この前に中に入った時にはこんなものなかったぞ!ていうかそもそも壁は鉛とコンクリートでできているのにどうやって穴なんて出来るんだよ!)


 壁には高さ5m、幅5m程の穴が空いていた。穴はその存在を主張するかの如く、シェルターの壁を突き破っていた。


(おいおい、やばいな。こんなでかい穴があったら、津波が来た時にここから浸水してしまう。いつ津波が来るかわからないのに今からここを出るのはあまりに危険だ。やっぱり、どうにかしてこの壁の穴を塞ぐしかないか。)


 そうと決まると、手に持っていたゲームのカセットを投げ捨て、使えそうな道具を選び、奥の壁まで持っていく。


(使えそうなのは土嚢とシャベルくらいだな。こいつらを使って塞ぐか。この穴がどれくらい奥に続いているのかわからないが、できるだけ埋めて、土を押し固めるしかないか。どれだけ時間がかかるかわからないな。取り敢えず、まずは穴の奥行きを調べるか。)


 彼は腰に掛けていたライトを手に持ち、穴の中を覗く。


「おーい!」


(光が届く範囲に穴の終わりは見えない。声の反響で穴の奥行きを確かめたかったが、土に音が吸収されてあまり反響しないな。やはり中に入ってみる必要があるか。)


 つなぎに着替え、ゴム長靴を履く。そして穴の前で深く息を吸い、呼吸を整える。


(ははっ、気分は探検家だな。穴が崩れる可能性を考えて、調子に乗って進みすぎないようにしよう。あまりに深いようなら引き返して、穴を全て埋めるという作戦を考え直す必要があるな。今は時間の勝負だ。できるだけ早く穴の奥行きを知る必要がある。)


 遂に彼は穴のふちに足を掛け、素早くそして慎重に穴の中に入っていく。


(土は随分と押し固まっているな。これなら俺が歩いても崩れる心配はなさそうだ。風が吹いていないのに、不思議と息苦しさがない。もっと奥の方でどこかと繋がっているのか?もしそうならシェルターがシェルター(笑)になってしまうな。くそが…。)


 10分ほど穴の中を進むと、奥の方の地面に表面が苔むした石畳が見えた。


(あれは石畳か?よく見えないな。ここまで進んできたが地面や壁、天井の悉くが固く押し固まった土だけであった。そのことも不自然だが、この土ばかりの状況で石畳が急に現れるのももっと変だ。)


 抱いた違和感に一抹の不安を覚えるが、彼は引き寄せられるように穴の奥に進むのだった。 

 そして進んだ先にあったのは下に続く幅3mほどの階段であった。


(はぁ、やっと奥までついたな。で、さっき見えたのは階段だったか。遂に人工物か。はぁ…。いつの間にかシェルターにクソでかい穴が空いていて、その穴の奥には階段か。もうなんでもありだな。ここまできたら行ってやるか。現時点で穴を埋めることは、土嚢の量を鑑みるに不可能だろう。だが、流石に階段を降りた先の様子ぐらいは確認しよう。)


 着ているつなぎで手汗を拭い、ライトを握りなおす。そしてできるだけ音を立てずに、ゆっくりと階段を下っていく。


(階段の壁も石なのか。完全に土から石に変わったな。すでに5分ほど降っているのに階段はまだ結構続きそうだ。長すぎだろ…。そして何よりこの階段少し急だ。緊張や何やらで疲れてきた。もう階段の先を見たらさっさと帰ってシェルターのベットで寝よう。シャワーも設置されているがそんなの浴びる元気はないな。)


 さらに10分ほど進むと階段の終わりが見え、その先はなんらかの明かりによってぼんやりと照らされていた。


(明かりか…。もう何があっても驚かないが流石にやりすぎじゃないか….。まぁ、取り敢えずライトをつけたままだと目立つから消しておくか。階段の先に何があるのか想像もつかん。よし、気を引き締め直して行くか。)


 足取りをさらに重くしながら彼は進む。そして後数歩で階段を降り終えるといったところで、しゃがんで覗き込む。


(この先も石畳で壁と天井も石。高さ5m、幅5m程で土の穴とほぼ同じ大きさだな。なぜか壁と天井がぼんやりと発光しているが、気にしたら負けだ。それ以外はただの石の道って感じだな。一旦降りてちゃんと観察してみるか。)


 そう考え、残り数段を降り、石畳に片足をつけた瞬間彼の頭に中で謎の声が響いた。


 〈ダンジョン領域へようこそ。初めての侵入につきまして、スキル付与を行います。そのままの状態でお待ちください。〉


(はぁ?)

スキル使えるサプライズ

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