表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生きる  作者: カトユー
1/6

〇への旅立ち

 ども、連載を全て未完にしている糞主ことカトユーです。クソヌシだって()

 以前、太平洋戦争に勝たせようとしましたがミスりました。「太平洋戦争~とある人間が変えていく歴史~」参照。

 今回は最後まで書くつもりです(10話くらいかな〜)

 

昭和十七年八月上旬

 ジリジリと茹だるような暑さの中、凡そ八十人の兵士が空母の前に集まり、ガヤガヤと騒がしく話していた。ある者は「俺達の死に場所が決まったな」と言い、別の者は「なぁに、死にはしないよ」と偉そうに言っていた。

 「横田、こっちへ来ーい」と呼ぶ声が聞こえた。自分は大日本帝国陸軍第一二四連隊(通称川口支隊)所属の横田秀雄(よこたひでお)一等兵だ。ついこの間教育隊を出たばかりだったが、何故か前線行きを命じられた。そして、我々は今、海軍の空母瑞鶴(ずいかく)の前に立っていた。

 「横田!はよう来んか!」そう小隊長のモノマネをしながら自分を呼ぶのは同期の足立(あしだ)だ。彼は元気な奴で、良くも悪くも我らが小隊のムードメーカーであった。

 彼のもとへ向かうと「横田、手を出せ」と彼はニヤニヤしながら手招きした。言われた通り手を出すと、彼は「皆にはナイショだからな?」と言って竹皮に包まれた何かを渡してきた。不思議に思いつつ、ひと目を避けて包を開くと中には純白のおにぎりが入っていた。しかも2つもだ!!

 驚く自分を見つつ足立は「そこの婆さんが「頑張る兵隊さんへ」って言ってくれたんだ。感謝しろよ?」と言ってきた。見れば日の丸を振りながら涙を流すお婆さんが立っていた。息子が出征するのだろうか?


 集団から離れ、自分は暖かさを感じられるおにぎりを一つ食べた。具は梅干しで中々に酸っぱいものであったが、五臓六腑に染み渡る白米の柔らかさと美味しさに涙が溢れてしまった。


 米の一粒一粒を味わおうと思いつつ噛み締めていると、何処からか「集合!」との声が聞こえてきた。自分はもう一つのおにぎりを背嚢にしまうと皆のもとへと駆けた。


 その後は、乗船時の注意事項等を聞き、乗船することになった。自分は初めて空母を見たが、コレがびっくりするぐらい大きなフネであった。驚いたことにあの長門より大きいらしい。しかし、大きなフネを眺める暇もなく我々はフネの中に押し込まれた。


 フネの中はもっとすごかった。迷路の様に入り組んだ通路は、何処に行けば何があるのかなど見当もつかない。このフネの何処かに我々の居住区があるそうだが、そこに向かう途中に皆と逸れてしまった。何処かで別の道に入ってしまったのだろうか?そう途方に暮れていると、一人の男に声を掛けられた。


(おか)の連中とは珍しいな。なんだ?迷子にでもなっちまったか?」


 小馬鹿にしたような口調に自分も少し腹が立ち、「うるさい、休憩していただけだ」とつっぱねるように応えた。男はくくくっと馬鹿にしたように笑って、「お前さんも素直じゃないねぇ」と言ってきた。

 こんな奴に構ってられるかと思い動こうとすると、「そっちは艦橋だ。艦長にでも用があるのか?」と言われてしまった。慌てて別の道に向かおうとすると「アハハッ、嘘だ嘘。そっちは機関区だ。やっぱり迷子じゃないか」と言われてしまった。謀られたか!そう気づくと、彼は「すまねぇ、言って俺もこのフネに乗って一ヶ月しか経って無いんだ」と謝ってきた。どうも、足立に似てて無下には出来ないな。そう思って、自分は彼に案内を求めた。「自分は迷子だよ。良かったら案内してくれないか?」そう言った傍から彼は嬉しそうに「じゃあ、艦内旅行に出発だな!」と言ってきた。


 アヒルの子供の如く彼の後ろをついていく。道中、「ここは鬼の機関長がよく居るから避けた方が良い」だとか「ここには戦死者の幽霊がいる」だとか、一々止まって説明してきた。自分は全くもって興味が無かったので「そうなのか」、「へぇ」と空返事をしていた。

 歩き始めて何十分か過ぎたとき、彼(永島と言うらしい)は「ちょっと待っててくれ」と言ってどっかへ去っていった。

 乗組員達の奇異の視線に耐えつつ待っていると、荷物を持った永島が小走りで帰ってきた。「何だそれは?」自分が聞くと永島は偉そうに胸を張って、「ギンバイしてきた!」と言ってきた。自分はギンバイという単語を知らないので永島に説明してもらった。どうやら食べ物を盗んでくることらしい。陸軍でも同様のことをする奴は何人か見てきた。彼らは中々に手際も良くて、何よりずる賢い。


 教育隊にいたある日、食事中にブレーカーが落ちたことがあった。同期がわざと灯りを落とし、その混乱のさなか厨房に忍び込んで大量の肉を盗んでいたのだ。盗みをはたらいた彼はバレることなく、何度も同じ手口で肉や菓子を盗んでいた。


 目の前の永島も同じなんだろう。何処かぬけた顔をしているが、頭は冴えているんだろう。彼は「歓迎会だ。あそこでやろう」と自分の手を引っ張ってきた。

 彼に連れられてやってきたのは高角砲だった。ここが永島の持ち場らしい。

 彼はよっこいしょと言って座ると、足元に色んな物を広げた。

 酒、何か判らない缶詰、菓子、サイダー等々。何処に入るのか聞きたいくらいたくさんの食べ物が出てきた。永島はなにくわぬ顔をしてサイダーを飲み始めた。サイダーを豪快に飲み干した永島は唖然とする自分を見て、「何だよ。好きなモン食ってけ。お前の歓迎会だから」と笑いながら言ってきた。

 ここで遠慮するのも不自然なので自分は、さっきから気になっていた缶詰を手に取った。どうやら、牛缶のようだ。「それに目をつけるとは遠慮が無いねぇ」と永島が言ってきたが、自分はコレを食べたくて仕方がなかった。

 永島は道具も使わずに器用に缶詰を開けると「ほらよ」と言って渡してきた。自分は背嚢から真っ白なおにぎりを取り出し、大和煮を上にのせた。「お、おい!お前、そんな良いモン持ってるのかよ!」食べようとしたところで鬱陶しい邪魔が入ってきた。「それ!白米だよな!俺にもくれ!な?」永島は縋るような目で自分を見てきた。ここであげないのも後味が悪そうなので、永島には半分だけあげた。「美味い…美味い……」そう言って、永島は泣きながらおにぎりを食べた。自分も同じ感じだったんだろう。


 次に白米が食べれるのは何時だろう?戦争が終わってからだろうか?湿り気を含んだ生暖かい風を感じながらふと疑問に思った。

 川口支隊…あっ(察し)

 ガダルカナル島の戦いがメインです。バッドエンド不可避。

 瑞鶴がこの頃日本に居たのか知りませんが、個人的には空母による陸兵輸送に憧れたので……。

 陸軍航空隊の整備兵が空母で輸送された記録はあるんですがね。

 次回は……残酷シーンかも。

 今週中には投稿します。毎日投稿?知りませんなそんなこと()

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ