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(35)最終日-4 被害者選定の法則2

「エイトボールのルールはなんとなくわかったよ。被害者を決める法則もなんとなくわかった。てなるとさ、この、他の球を落として回ってる白い球の人が犯人じゃないの?」


 大発見といった感じで桃子が身を乗り出した。


「僕も最初そう考えた。でもちょっと待ってよ。自球はあくまで道具なんだよ。目的球を落とすためのね。自球を突くプレイヤーがいる」

「え? あ、あー。そういえば、球単独じゃ動けないもんね。じゃぁ、誰が黒幕なの?」

「わからない」

「殺人トリックの肝を見つけたのに?」

「僕が見つけられたのは、連続不審死の被害者を決める法則だけだよ」


 ビリヤードの球やルールと連続不審死が対応していることに、犯人に繋がるヒントは含まれていないように思える。

 企画参加者、運営、その他部外者、誰もがプレイヤーとなり得る。

 さらなる情報がなければ犯人特定は不可能だ。


「犯人見つけられないの? 犯人がお縄になれば、事件解決めでたしめでたしなのに?」

「無理。僕達にできるのは、これから被害に合いそうな人を警察に垂れ込んどくくらいだよ。でもよかったね。このルールが厳格に適用されてるなら、桃ちゃんが標的にされる確率はすごく低いよ」

「凄く低いじゃなくて、標的にされないって言ってよ」

「黒澤さんの例があるからね。無差別に大人数を狙う殺し方で来られると、ファウル扱いの巻き込まれ事故が起こる可能性がある」


 まぁ、それを言ってしまうと、桃子と行動を共にしているせいで、部外者な白木にまで殺される可能性が出てきてしまっているのだが。

 指摘すると桃子が騒ぎそうなので、あえて言わないでおく。


「じゃぁさ、じゃぁさ。これから殺されちゃうかもしれない人をお巡りさんに言って、せめてこれ以上何事もなく旅行を終わろうよ」

「そうだね。僕もそれがいいと思うよ」


 下手に犯人をあぶりだそうだなんてした日には、犯人から目をつけられて殺害対象に格上げされてしまう可能性がある。

 それは御免だ。

 一般人である白木は、自分と、自分の周囲の人間に、被害が及ばなければいいのだ。



 1:黄 (一岩浅黄)

 2:青 (阿二青人) 死亡

 3:赤 (三枝朱絵) 死亡

 4:紫 (四国紫) 死亡

 5:橙 (伊五澤橙吾) 死亡

 6:緑 (六斉堂美緑) 死亡

 7:茶 (七海茶和子) 死亡

 8:黒 (八子黒音)

 9:黄と白 (黄山勘九郎) 死亡

 10:青と白 (青島未紗十) 死亡

 11:赤と白 (赤津五十一) 死亡

 12:紫と白 (紫尾十二愛) 死亡

 13:橙と白 (橙山十令三) 死亡

 14:緑と白 (小緑十四郎) 死亡

 15:茶と白 (御茶屋伊十五朗)

 手球:白 (九之坪眞白)



「狙われる可能性が高いのは、一岩さん、八子さん、御茶屋さんだね。3人とも警察に注意を促してはあるから、今更何もしなくてよさそうなのが救いかな。エイトボールのルールに則って犯行が行われているなら、次に狙われるのは一岩さんか御茶屋さんかもね」

「昨日は被害者誰もいなかったのかな? お巡りさん騒いでないよね」

「温泉で九之坪君と話した感じだと、何もなかったっぽいよ」

「そうなんだ? モモ達が、お巡りさんに、3人が危ないかもってチクった甲斐あった?」

「かもね」


 連続殺人の進行状況を頭の中にいれてsurfaceを閉じる。

 手に持って桃子と部屋を出た。

 部屋の外には桃子付きの警察官が立っている。


「連続殺人の標的になる人がたぶん完全にわかりましたよ。江戸川さん、この前と同じ102号室にいますかね? ていうか今から向かうので、いないようなら来るように言ってください」

「はい?」


 警察官がぽかんとしていようと白木は歩みを止めない。

 正気に戻った警察官は、無線で連絡をとりつつ、白木達に追いつきすぐ後ろをついてきた。

 102号室のドアは開いていて、再度ドアが閉まるのを江戸川が体で抑えている。

 白木達の姿を認めた江戸川は渋い顔をした。


「連続不審死のことを考えて意見をくれるのはいいんですが、君達の動きはいつも急ですね」

「思いついたが吉日というか、早く動く方が犯行を防げると思って」

「それもそうだ。どうぞ」


 江戸川が室内に引っ込む。

 白木達も続いた。

 江戸川が茶を淹れてくれるので、その間に白木はsurfaceを開く。

 江戸川が座るであろう場所にタブレット部分を置いた。


 茶の配膳を終えた江戸川が座布団に座ってタブレットをのぞき込む。


「以前のデータよりスッキリなっているし、人名がきっちり書かれていますね。この数字と色は何でしょうか」

「今から説明します」


 画面と逆方向からだと説明し辛いので、白木は江戸川の横に移動する。

 白木の横に桃子までついてきた。


 桃子のことは無視して、ビリヤードについて説明した。

 まずは球についてだ。

 球の説明が終わったら、それぞれの球に対応する人物がいることを伝える。


 次はエイトボールのルール説明だ。

 エイトボールはローボールとハイボール、それぞれの組の球全てを落とし、最後に8番球を落とすゲームであるから、次に狙われるのは一岩か御茶屋になる。

 企画終了時刻が迫っている今、犯人は犯行を強行するのだろうか。

 それとも諦めるのか。

 どちらになるのかはわからない。

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