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(30)6日目-9 専守1

「あの、すいません。今起こっている連続不審死について気付いたことがあるのでお話したいのですが、江戸川さんはどちらに?」


 桃子の部屋の外に立っていた警察官に白木は声をかけた。


「伝言であれば自分が江戸川警部に伝えておきますが」

「相談したいこともあるので、ある程度裁量権を持っている方とお話した方が早いかなと。いえ、実は、姪が怖がっているので、今晩僕もこの部屋に泊まりたいんです。その許可ってあなたからでも貰えます?」

「残念ながら自分にその権限はありません。警部に連絡をしますので、少しお待ちください」


 そう言うと、警察官は白木達にやや背を向けて無線で連絡を取り始めた。

 一言二言やり取りが行われただけで、警察官が白木達に向き直る。


「1Fの102号室に江戸川警部がいらっしゃいます。そちらで話を伺うとのことでした」


 102号室。

 以前、白木が事情聴取を受けた部屋もそこだったような気がする。

 詰め所兼応接室になっているのかもしれない。


「1Fの102号室ですね。ありがとうございます、行ってみます」


 礼を言って1Fに降りる。

 予想通り、102号室は白木が以前事情聴取された部屋だった。


 目的の部屋が近付くと、後ろから付いてきていた桃子付きの警察官が無線で何やら話しだす。

 白木と桃子が部屋の前に到達した時には、内側からドアが開かれた。


「詳しいことは中で聞きましょう。どうぞ」


 江戸川警部自らの出迎えだ。

 だからといって特に何も気にせず白木と桃子は部屋に入った。

 先に部屋に入った江戸川は律義に茶を淹れてくれている。


「事件について気付いたことがあるとか? あと、姪御さんの警護にあたりたいと聞きましたが」

「ええ。捜査のお役にたてるかは微妙ですが。ほら、企画に参加してるのは桃ちゃんなんだから、桃ちゃんが言ったら?」

「えー。モモそういうの苦手だから、おじちゃんにパス」

「そこは頑張ろうよ。あ、どうも」


 江戸川が湯飲みをよこしてくれたので、白木は軽く頭をさげる。

 出てきたばかりの茶で唇を湿らせた。


「結論から言うと、一連の殺人はまだ終わっていない。特に、一岩さんと八子さん、御茶屋さんは被害者になる可能性が高いと思うんです。可能なら警備を強化してあげる方がいいかと」

「その結論に至った経緯を聞かせてもらえますか?」

「企画参加者からの話とネットに転がっている話を集めてまとめて、一連の不審死に法則性がないか考えました」


 白木はsurfaceを開き、エクセルが立ち上がったままであるのを確認して、タブレット部分を江戸川に渡す。

 人物を数字と色だけの記号に置き換えたこと。

 数字順に並べ替えたら見えてきたもの。

 そんなことを順に話していく。


「ふむ。その法則に則って殺人が行われているのだとすると、確かに一岩氏と八子氏、御茶屋氏が危険ですな」


 江戸川が画面を見ながら眉間の皺を深くした。


「ちょっと失礼」


 言うが早いか白木達から顔をそらし、無線を口元に持っていく。


「江戸川だ。一岩、八子、御茶屋の監視を厚くしろ。理由は後で話す」


 警察の中では、警護ではなく監視という業務にくくられているらしい。

 まぁ、どちらの呼び方であろうと、やってくれることが同じであれば、白木としてはどうでもいい。


「被害軽減のご協力感謝します。案を採用させていただきました。これで犯行が止まればいいのですが」

「ですね。あ、あとですね、それとは別の話でお願いがあるんですが」

「そういえばおっしゃっていましたね。何でしょう」

「うちの桃子が一連の犯行を怖がってて、僕に彼女の部屋に一緒に泊まってくれって言うんですよ」

「姪御さんには警護のための警官が1人付いているはずですが」

「それを言ったら黄山さんにだってお巡りさん付いてたんじゃないの?」

「それはそうですが」

「ほら。お巡りさんが部屋の外にいたって安全じゃないじゃん。おじちゃんがすぐそこにいてくれる方が、ずっと、ずっとずーーーーっと安全だよ」

「僕がいたら安全ってのは自信ないんだけど」

「だからお願いします!」


 桃子が机にぶつかるスレスレまで頭を下げた。

 白木の主張は無視らしい。


「わかりました。白木さんの同室での滞在を許可しましょう」

「え? ほんとに? やったぁ!」

「いいんですか?」


 白木としては若干ガッカリだ。

 桃子のことが心配なので近くにいるのはいいのだが、同室だと面倒なのだ。

 隣室で待機くらいにしてくれるのが一番良かった。


「我々としても、関係者には一か所に集まってもらっている方が何かと楽なので。ただし、この旅館は我々の所有物ではありません。宿泊料を高めに請求されるかもしれませんが、構いませんね?」

「ええ、まぁ」

「それなら、白木さんが二階さんの部屋に宿泊できるよう、我々の方で旅館に掛け合ってみましょう。連絡を入れるので少し待っていてください」


 江戸川が立ち上がった。

 部屋の入口まで行ってそこで何か喋っている。

 外の警察官に旅館との交渉を頼んだのかもしれない。




 それからしばらくして部屋に電話がかかってきた。

 江戸川が出る。


「白木さんの宿泊が許可されましたよ。別に1部屋取ってありますけど、そちらではなく、二階さんの部屋に布団を敷くようにしてくれるらしいです。宿泊プランは、企画参加者の皆さんと似たようなものの1泊版になるそうです。細かい値段は受付で確認してくださいとのことでした」

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― 新着の感想 ―
[一言] 流石にこじつけかとは思うんですが、桃→もも→百→100で、名字と名前両方に数字があるとか、2階の100号室が異世界に繋がっていやしないか? とか考えてしまいました(異世界から離れろ!)。 旅…
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