(29)6日目-8 事件検証7
一 黄(一岩浅黄) 〇
一 水(一条水澪) 〇
二 青
二 桃(二階桃子) 〇
三 朱
四 紫
五 橙
六 緑
七 茶
七 翠(七野翠) 〇
八 黒(八子黒音) 〇
九 白(九之坪眞白) 〇
黄 九
青 十
橙 十令三 ●
紫 十二
緑 十四
茶 十五(御茶屋伊十五朗) 〇
黒 五十
赤 五十一
※〇印付きは生存者
※●印付きは数字が未確定
企画参加者の共通項、色と数字だけを名前から抽出して、数字順に並べ直してみたのだが。
「被害者の人だけ並べてた時は法則性が見えたような気がしたんだけど、生きてる人も含めてやると、よくわかんなくなっちゃったね」
「だねぇ。でもまぁ、全員並べると規則性が見えにくくなったってことは、規則外の人も混ざってるってことだと思うよ」
規則に沿って殺人が行われているのならば、規則外の人間の安全度はぐんと上がる。
無差別に近い殺害方法をとっている例もあるので確実に安全だとは言い切れないけれど、ピンポイントで狙われることはないのではないだろうか。
桃子が現在置かれている状況を正確に把握するためにも、安全圏は見つけ出したいところだ。
もう一歩踏み込んで考えるならば。
これからも殺人が続くと仮定しての話だが。
規則さえ見つけ出せれば、今後殺される可能性が高い人物を特定することもできる。
被害者を減らす大きな助けになるだろう。
「とりあえず、数字の場所が苗字組と名前組とに分かれてるのは間違いなさそうだよね。まずは、企画参加者を2つのグループに分けるよ」
【数字が苗字組(A組)】
一 黄(一岩浅黄) 〇
一 水(一条水澪) 〇
二 青
二 桃(二階桃子) 〇
三 朱
四 紫
五 橙
六 緑
七 茶
七 翠(七野翠) 〇
八 黒(八子黒音) 〇
九 白(九之坪眞白) 〇
【数字が名前組(B組)】
黄 九
青 十
橙 十令三 ●
紫 十二
緑 十四
茶 十五(御茶屋伊十五朗) 〇
黒 五十
赤 五十一
「次は何をするの? 数字の謎解き?」
「数字の謎解きは今の段階じゃちょっと無理じゃないかな。被りや飛びがどういう規則で起こってるのか全くわからないし。そもそも意味があるのかもわかんないし」
「じゃあ何するの? 色の何か?」
「そうだねぇ。殺される標的になる色が決まっているなら、それを見つけだせるといいよね」
視覚的にわかりやすいように、各人のセルを対応する色に塗る。
翠はちょっと困ったが、エメラルドグリーンにしておいた。
ようは、緑とは違う色だとわかればいいのだ。
色塗りしてみると、各グループに同じ色を持っている人間がいないことがわかる。
偶然とは考えにくい、意図的にだろう。
「どちらの組も、青、紫、橙、緑の人は被害にあってるね。片方のグループの人だけが被害にあってる色は黄、朱、茶、黒、赤」
「黄、朱、茶、赤って、なんか、似たような色ばっかりだね」
「そうだね。特に、朱はアカとも読むしね」
自分で言っておいて、おや、と白木は思った。
朱色担当の三枝朱絵の名前の読みはアカエ、「アカ」だ。
ひょっとして、赤色担当なのではないだろうか。
そうなると、どちらのグループにも赤色担当の被害者がいることになる。
担当が2人いる色を持つ人間はもれなく殺される法則が頭をちらつく。
担当が2人いる色を持つ人間はもれなく殺される法則が正だと仮定して。
色の片割れが落ちているのは、A組の一岩と八子、B組の御茶屋だ。
旅行企画の自由行動日は今日まで。
明日には朝食を食べて鹿児島中央駅まで送られて解散になると桃子から聞いている。
最後の自由行動日の今日、一岩や八子、御茶屋が殺される可能性はそこそこ高いのではないだろうか。
残日数の少なさも手伝って、犯人は対象を絞り込んで確実に殺そうとしてくるはずだ。
それとも、残日数が少ないからこそ、無関係な人間も巻き込んでの大量虐殺を仕掛けてくるだろうか。
犯人がどう考えているのか白木にはわからない。
それでも、ピンポイントで桃子が狙われる確率は低いように感じられる。
桃子に関しては、巻き込まれ事故に気を付けていれば、とりあえず大丈夫だろう。
「僕思ったんだけど、一岩さんと八子さん、あと御茶屋さんが危ないと思うんだよね。僕の考えがあってるかわかんないけど、警察に一言言っておいた方がいいと思う」
思ったら行動と、白木は立ち上がった。
一連の事件のトリックを暴くにはまだまだ思考不足だが、現状簡単に解けるものではない。
頭も疲れてきた。
今の収穫だけで満足して休憩するにはいい頃合いだろう。
部屋を出ようとする白木の前に桃子が移動してくる。
前進するのに微妙に邪魔な位置取りだ。
白木が動けば桃子も動いて、道を遮ってくる。
「桃ちゃん、邪魔なんだけど」
「お巡りさんにクオンちゃんと御茶屋さんと一岩さんのことを言いに行くのはモモも賛成だよ。ただ、モモ、おじちゃんに1つお願いがあるの」
「お願い?」
この面倒な時になんなのだ。
「明日になったらこの企画ともバイバイじゃん? それまで、おじちゃんもこの部屋で一緒に泊まって、モモを守って欲しいの」
「それって無理じゃない? 宿泊プランから外れちゃうよね?」
「そこはほら。お宿に直接掛け合ってどうにかしてもらう方向で。可愛い姪のためにひと肌脱ぐのが叔父さんの役目だと思うの」
叔父にそんな役目はあるものだろうか?
今まで散々面倒みさせられてきたのだから、むしろ、そろそろ解放されていいと思うのだが。
「はいはいわかりましたよ。けど、こんな状況だから、旅館側が新規の宿泊客を取らない可能性もあるからね。そうしたら諦めてよ」
「わーい! おじちゃん大好き!」
桃子が白木に飛びついてくる。
この娘、叔父とはいえ、男にこんなに無防備で大丈夫なのだろうか。
叔父ながら、心配になった白木であった。




