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色と数の輪舞曲  作者: 夕立


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(27)6日目-6 事件検証5

「この部屋のベランダから下の階のベランダって見える?」


 言いながら、桃子からの返事を待つでもなく白木はベランダに続く窓を開けた。

 外に出て手すりから軽く身を乗り出して下をのぞき込む。

 桃子の部屋は2階。

 下の部屋のベランダが全く見えない、ということはないが、プライバシー保護もあってか、やはりよく見えない。

 そんなこんなしている白木の隣に桃子も来た。

 桃子も手すりから軽く身を乗り出しながら下の階を指す。


「あそこの、お巡りさんが何人かいる辺りが黄山さんの部屋だったはずだよ」

「そうなんだ?」

「で、あっちの、松林を抜けた先の浜みたいな所で死んでたって」


 桃子の指す方向が海の方に移動する。

 黄山が亡くなっていたという方向には見事に光源が無い。

 といっても、そこまで困ることはないだろう。

 多少の時間ならスマートフォンでも十分頑張れるはずだから。


「毒殺が確定としてさ。殺害の証拠とか何か残ってなかったの?」

「さぁ」

「さぁって。毒殺っていうくらいだから、自殺じゃなくて他殺だって警察が考える要素が何かあったんでしょ?」


 この件の問題点は、黄山が自殺の可能性が残されている点だ。

 最悪、これまでの不審死を起こしたのが黄山で、目的を達したので自殺したというストーリーも立てられる。

 逆に、誰かを殺害しようとしたが、返り討ちにあった可能性もある。

 たんに殺されただけの道だってある。

 推理の方向を決める時点で情報不足だ。


「ていうか、他殺だとしたら、黄山さんを部屋から誘い出すだけでも結構な難関だよね。黄山さんって企画参加者さんとあんまり交流しないタイプだったんでしょ? 今まで喋ったことない人が急に呼び出しても、まず反応しなさそうだよね」

「あー、確かに」

「それにさ。死因が特定の毒だってわかってるなら、先に関係者の持ち物検査するべきだと思うんだよね。そこから犯人につながる証拠とか出てきそうじゃん」

「持ち物検査ならやられたよ。お巡りさん達、なんか頭抱えてる感じだったけど」

「頭抱えてたんだ? じゃ、めぼしい手掛かりが上がってこなかったんだろうね」


 まぁ、手掛かりが見つからない方が順当かとも思う。

 予定されている企画期間は明日まで。

 毒はもう不要。むしろ、残りを持っている方が不利益が大きいと考えるなら、何らかの手段で処分するだろう。

 なんなら、犯人の指紋を消した状態で、毒の容器を黄山に持たせたっていい。

 上手くやれば、黄山、毒で自殺説の完成だ。

 犯人が持っているはずの毒を持っているならと、一連の不審死事件の犯人だって黄山になるだろう。


「駄目だね。何もわかんないのと変わんないや」


 これ以上進まない推理を続けても仕方がない。

 黄山の件もここで保留だ。

 さっさと室内に戻って、茶を入れ直してすする。


「にしてもさ、これ、誰を殺すって、選んで殺していってるのかな?」


 白木と同様に茶をすすりながら、企画参加者の記された紙を桃子が見つめる。

 それは白木も気になるところだ。

 エクセルを使えばそこら辺の編集は簡単なので、死亡日と死亡者だけを抜き出してみる。



 4月26日:

 赤津五十一 67歳 女性 無職

 伊五澤橙吾 28歳 男性 会社員


 4月27日:

 黒澤五十鈴 34歳 女性 主婦

 小緑十四郎 38歳 男性 小売り契約社員

 七海茶和子 42歳 女性 パート社員

 六斉堂美緑 37歳 女性 フリーター


 4月28日:

 四国紫 49歳 男性 銀行員

 紫尾十二愛 17歳 女性 高校3年生

 橙山十令三 18歳 女性 大学1年生

 三枝朱絵 26歳 男性 メーカー勤務


 4月29日:

 青島未紗十 28歳 女性 化粧品メーカー勤務

 阿二青人 24歳 男性 メーカー勤務


 4月30日:

 黄山勘九郎 59歳 男性 無職



「今日までに亡くなったのは13人。男性も女性も亡くなってる。年齢も、ぱっと見た感じバラバラだね」

「バラバラに見えるようでさ、実は殺す順番にこだわりがあったりして?」

「例えばどんな?」

「えとー。えとー。……どんなだろ?」


 桃子が小首をかしげた。


「何か引っかかりがあって言ったんじゃないの?」

「ないよー。映画でそんなことがあった気がするから、言ってみただけ」

「映画や小説を参考にするのは悪くないと思うんだけどね。悪くないけど、あれ、言っても作り物だから。現実でやろうとすると条件が厳しいものも多いよね」


 それでも、考えようとするだけマシか。


「ちなみにだけどね。亡くなった人達の共通点、僕には、企画に参加してるってことしか見つけられないんだけど」

「モモも」

「全員が数字と色を名前に持ってるんだよね。亡くなった人の色か数字に特徴があるとかあるのかね?」


 亡くなった人の名を色と数字だけのシンプルな形にしてみる。



 4月26日:

 赤 五十一

 五 橙


 4月27日:

 黒 五十

 緑 十四

 七 茶

 六 緑


 4月28日:

 四 紫

 紫 十二

 橙 十令三 ●

 三 朱


 4月29日:

 青 十

 二 青


 4月30日:

 黄 九



「橙山さんの名前、数字の間に別の字が挟まってて、綺麗な数字の形にできないね。十か三か、どっちかだけを採用すればいいのかな?」

「とりあえずそのままでいいんじゃない?」

「だね。印だけ付けとこっか」

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