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(24)6日目-3 事件検証2

「でもさでもさ。催眠って、自殺しろって指示までできちゃうものなの?」


 桃子がもっともな突込みをいれた。


「どうだろうね。自殺しろなんて指示は厳しそうな気がするけど。催眠はさ、基本的に、”催眠をかけられる相手にとって益になるもの”でなければかかりにくいはずだから」


 白木は催眠について解説してくれるサイトを探す。

 目的のサイトはすぐに出てきた。

 書かれている内容によると、相手を催眠にかける上で最も大切な要素は、「信頼関係」だそうだ。

 催眠にかけてもらいたいと思っている状態で、信頼している相手からの催眠だからこそ、容易くかかる。

 この人なら、自分にとって益になることしかしないだろうと信じているから。


「この、相手を信頼しているって部分を拡大解釈して、心を開いている程度でもOKってとるならさ。結果的に死んでしまうかもしれない暗示をかけるだけならできそうな気もするけど」

「例えば?」

「開聞岳の頂上で自殺させたいんだったら、標高何メートル以上の高所にいると認識したら飛び降りろ、とかさ」

「頂上から飛び降りて死ねって指示まんまじゃん」

「そうかな? 頂上飛び降り事件を知らない人からしたら、高所恐怖症の治療にとれるかもしれないよ」


 白木としては思いついたことを言ってみているだけだが、なるほど、この方法なら無くはないような気がしないでもない。


 だが、問題にも気付いてしまった。

 催眠をかけるタイミングと、どうしてあの4人を標的に選んだのかだ。

 それとも選んでいないのだろうか。

 もっと多数の人間に催眠をかけたけれど、自殺までもっていけたのが4人だったというパターンもあり得る。

 それとは別に、催眠術師はどこにいたのだ?

 企画参加者と共に開聞岳を登っていたのか?

 それも、トップグループと同じくらいのハイペースで。


「駄目だね。身内の犯行なのか外部犯なのか、それすらわからないや」


 悪くない推理のような気がしたのだが。

 情報不足でこれ以上の絞り込みは無理だ。

 27日分はここで保留。

 28日の不審死検証に移る。


「28日の検証に移るよ。亡くなったのは四国(しこく)(ゆかり)さん、紫尾(しび)十二愛(そにあ)さん、橙山(とうやま)十令三(どれみ)さん、三枝(みつえだ)朱絵(あかえ)さんの4人で合ってる?」

「合ってる」

「4人とも昼間は元気に大ハンヤを観て回ってたけど、夜寝ている間に亡くなったらしいね。死因は共通の毒らしいけど」

「寝てる間に毒殺とか意味わかんないよね。次の日の朝ご飯の時に、ドレミちゃんなんかと大ハンヤ回ってた人と話したんだけどさ」


 大ハンヤに参加した組は、その日1日、八子を除き、全員同じ食事処を利用したらしい。

 夕食後、亡くなった4人だけが特別な何かを飲み食いしていたといった行動は見られていない。

 4人だけがこっそり集まって何かを食べたということも無さそうだ。


「属性が違いすぎて、よっぽどのことがない限り、この4人だけで集まるって無さそうだよね」


 四国は49歳男性。銀行員。

 紫尾は17歳女性。高校3年生。

 橙山は18歳女性。大学1年生。

 三枝は26歳男性。メーカー勤務。


 桃子の話から、紫尾と橙山は仲が良く、よく一緒に行動している感じなので、この2人から共通の毒が検出されたのはおかしくない。

 問題は四国と三枝だ。

 男性同士という共通項はあるものの、一回り以上年齢が離れている。

 さらに職業。

 三枝はメーカー勤めだったということだが、職務は何だったのだろうか。

 事務担当なら銀行員の四国とも多少は話が合ったかもしれない。

 けれど、現場労働者だった場合。

 考え方などに大きな隔たりがありそうな気がする。

 そんな2人が特別に親しくなったりするだろうか。


「桃ちゃんさ。四国さんと三枝さんに共通の趣味があったりとかって話知ってる?」

「知らないよー。ていうか、モモは基本的におじさんと喋るの苦手だし」

「おじさん側も若すぎる女の子と話すのは難しいから、積極的には話しかけてこないだろうしねぇ」


 紫尾と橙山の情報はある程度桃子から引き出せそうだが、四国と三枝についてはお手上げかもしれない。

 いや、被害者の性格などの前に、根本的な問題がある。

 どのタイミングで毒を摂取させたかということだ。

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