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(21)5日目-3 生存女子の会

「あー! もう!! おじちゃんってば、これ絶対モモのこと放置モードに入ったよ~」


 白水館2Fにある一条の部屋で、二階がスマートフォンを手にしたまま大げさに騒いで机に突っ伏した。


「酷いね。でも、男の人ってそういう人多いよね。気にするだけ無駄だろうから、お菓子でも食べて忘れちゃお?」


 机に広げられているポテトチップスの袋を一条が二階の方に押しやる。

 ぅーぅー言いながらもポテトチップスにすぐに手が伸びているのは、さすが二階というべきか。


「二階さんが叔父さんと連絡とりたがる気持ち、ちょっとわかるな。叔父さんは部外者だから大丈夫だろうけど、もしもがあったら怖いしね。それに、私達だけだと、ちょっと心もとないところもあるし」


 一条自身は緑茶をすすりながら言う。

 同意と、八子は首を縦に振った。

 そこに、おずおずと一岩が話しかける。


「あの。企画に参加している女性で残っているのがあたし達だけって、本当なんですか?」


 誰からもすぐに答えは帰らない。

 沈黙を破ったのは二階だった。


「事情聴取したお巡りさんが言ってたしね。まさか、こんなことで嘘は言わないだろうし」

「そうなんですね。……なんだか怖い」


 一岩がふくよかな体を縮こめ首をすくめる。

 それでも、部屋に集まっているメンツを上目遣いに見るのは止めない。

 この部屋に集まれているのは、


 一岩浅黄、一条水澪、二階桃子、八子黒音


 の4人。

 企画が始まった当初、女性は11人いた。

 それが4人しか残っていないというのだから、半数以上が脱落したことになる。

 恐ろしい事態だ。

 一岩が集まっているメンツの観察を止めないのは、この中に殺人犯がいる可能性を考えているからだろう。


 八子に、一岩と絡んだ記憶はほとんどない。

 一岩は朝食や夕食でこそ白水館の食事処を使い他の企画参加者と喋りもするけれど、運営提案のイベントに参加してこないからだ。

 なので、彼女の人となりや性格がわからない。

 逆に言えば、一岩も八子達を知らないということだ。

 そのせいで自分以外信用できないのだろう。

 警戒心の現れか、一岩は、持参したペットボトル飲料以外に口をつけていない。

 毒を警戒しているのだろう。


「もしものもしもですけど、この場に犯人がいるとしてですよ。これだけ他人の目がある状態で犯行は犯さないと思うので、集まっている限り安全では?」


 八子はわざとそのことを指摘してやった。

 二階以外の2人がピクリと反応する。

 極力表に出さないようにしていたようだけれど、やはり誰もが考えていたのだ。

 八子だってそうなのだから、まぁそうだろう。


「部屋でおしゃべりしてばかりでは暇ですし、外に散歩にでも行きませんか? 宿泊棟の外の浜も綺麗なものですよ。運動する方が気も紛れますし」

「外って散歩できるの?」


 スマートフォンを眺めながらお菓子をかじってばかりいた二階が八子の提案に食いついた。


「できますよ。だって、建物と建物の間は庭ですし、垣根はありませんし。私1人で歩いてみたこともありますし」

「行く! 行く行くー! ちょっと暇だなって思ってたんだよね」

「私も行こうかな。新鮮な空気を吸いたい気分だし」


 二階、一条は散歩に行く気らしい。


「どうせなら全員で動くのが安全でいいと思うんです。なので、一岩さんもご一緒にいかがですか?」

「そういうものでしょうか。ええ、でも、そうですね。その方がいいかも」


 八子がもう一押ししてやることで一岩も同意した。

 一岩以外若者だらけの集まりになってしまっているのも、彼女が溶け込みにくい原因になっているのかもしれない。

 同じく主婦だった黒澤が生きていてくれれば、一岩でも少しは話しやすい相手だっただろうに。残念だ。


 戸締りをして、各自財布だけ持って部屋を出る。

 飲み物が欲しくなった八子は売店に寄ることにした。

 蓋をできるタイプのコーヒーがあったのでそれを買う。

 八子以外の面々も、それぞれ飲み物やらお菓子やらを購入していた。

 それならと、八子は買うものを増やす。


「いい場所があったら、そこで女子会第2弾といきませんか?」


 こんな時だからこそ、気を抜くタイミングは必要だ。

 他の子がお菓子代を少し出そうかと言ってくれたけれど、それは貰わないでおく。

 幸い八子は金銭には困っていない。

 自分の気晴らしに付き合ってもらう側なので、安い出費だ。


「わー、松林!」


 陽気に二階ははしゃいでいる。


「綺麗だね。これを観るのは気分が落ち着いていいかも。先に散歩してこのことを知っていた八子さんのお手柄だね」

「たまたまですよ」


 一条が褒めてくれるけれど、そんな大それたものではない。

 自分が散歩に行きたかったついでなのだから。


 松林から宿泊棟を眺める。

 振り向いた拍子に、八子達からほんの少しだけ離れて付いてくる警察官達が視界に入った。

 表向き警護をうたった監視人達。


 宿泊棟ロビーなどといった要所要所には警察官が立っていたけれど、外にはあまりいないようだ。

 八子の部屋をはじめ、1Fにも企画参加者が泊まっている部屋があるというのに、少し不用心ではないだろうか。

 1F部屋、外庭と多少の仕切りはあるけれど、行こうと思えばベランダから室内へ侵入できるのに。

 それとも、夜になれば人員配置が変わるのだろうか。


 なんにせよ、夜には注意をしておいた方が良さそうだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] どうやらポリスメンの動員数はそうでもないみたいですね。 そして私のクソ推理をお披露目する時がやってきてしまいました。 今回生き残った女子メンバー、みんな名前の数字が一桁の上位ランカーなんで…
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