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天滅の魔王-破天編- 1  作者: A.A.
7/12

緊急魔族会議

-次の日


(さて、昨日に引き続き今日も三時間か…)

 昨夜は緊急魔族会談の準備で徹夜で指揮をとっていたため、結局余り眠れなかった。

「それにしても、ディスペアラーズは団子パーティーか…。まぁ、たまにはいいかな」

 本当は自分も食べたかったが、作業放棄する訳にもいかないから止めておいた。

「ご、ごめんなさい主様…」

 アルセヴィアが寝室に入って来て申し訳なさそうに頭を下げてくる。昨日手伝いに来てくれたときもこうして顔を下げられたが、いい気がしない。

「…聞かれていたか。昨日も言ったが気にするな、私はこんなことで注意するような族ではない」

「…はい。それでは、朝食…と言いたいところですが、現在は9時です。この料理長のクロワッサンで耐えてください」

 そう、寝たのは朝6時…つまりは既に日が登っている。認めたくない現実が、彼女のメンタルを襲う。

「うっ…。今日は絶対7時間寝てやるぅ…!」

「会談に私は参加出来ませんが、その間無礼なことはしないようにしてくださいね?」

『分かっている!』

 当たり前だと言わんばかりの返事をすると、彼女はクスクスと笑っている。多分半分冗談だ。

「そうだ、ちょっとアリムを見てやってくれないか?」

「アリムを…ですか?」

「あぁ、昨日教えていたら魔闘技の基本が身体に染み付いたようだから、ゼレスと一緒に見てやってくれんか?」

「承知しました。それで、アリムはどちらに?」

「彼女は今頃訓練所でゼレスに剣を叩き込まれてるだろう。こっちは流石にモノにするには時間かかりそうだが…」

「はい、それでは失礼します」

「うん、頼んだよ」

 彼女が部屋から去るのを見送り、身支度を始める。

「さぁてと、今日も頑張りますか…」



-30分後

「久しぶりだね、こうして集まるのも50年ぶりかな?」

 この爽やかな美青年はシア。魔剣『ヨヌ=ネグロ』の使い手で、圧倒的剣筋、骨さえ残さず消し去る魔剣の力、そしてその風格から破滅の貴公子と呼ばれている。

「まぁ、そんなところですね。それより今は今回のことについて話すことが先決ですよ」

 おしとやかな銀髪淑女はネム。その裏にはとても強い好奇心があり、ひょんなことから彼女に氷漬けにされることが絶えず、絶対零度の魔女と呼ばれることとなっている。

「にしても天使が闇に落ちるとか…笑えねぇ冗談だぜ…」

 見るからに厳つい漢はザッド。私と同じく拳で敵を捩じ伏せるスタイルだ。違う点と言えば、コイツの場合は雷の魔法使ってくるといったところか。威力としてはクリプトの10倍位だな。

「こっちは城が半壊状態で目も当てられない…」

 この静かなやつはテリシア、普段は大人しいが戦闘になると魔鎌『カームエルト』を無表情で振るい、敵味方問わずその姿から死神と呼ばれている。

『えぇい!雑談してないでさっさと始めるぞ!』

 ディネアはこれ以上続くと楽しいトークタイムに突入しそうなので、止めに入った。

「そうですわ!早く会談を始めましょう!」

 このお嬢様感満載のやつはイシュカル。ダリアス以上の錬成魔術の使い手で、一瞬で城を築き上げる程の力を持っている。そして戦闘だけでなく、彼女は人間にも影響を及ぼすほどの資本家である。そのときのコードネームはlian。名乗り始めてから70年、今では彼女なしでは営業が続けられない企業が複数ある程だ。

 そして、部屋が静かになると空気が少し重くなった…。

「…まず、天使達が堕ちた理由だが調査しているがまだわからない。ただ、分かることは天使が闇に堕ちると他を傷付ける習性が出てくるようだ」

「ええ、確かにそれは確認済みですね」

「そして十二宮の天使達は自我があるようだが、性格がまぁあれなことになる…ようだ。こちらで確認したのは宝瓶宮のガブリエル、処女宮のハマリエルだ」

「こちらは白羊宮のマルキダエルを確認したわ」

「僕は磨羯宮のハナエルを確認したよ」

「俺は天秤宮のズリエルを確認した」

「私は獅子宮のウェルキエルを確認しましたわ」

「つまり、確認されたのは半数か…」

「それでは、個々の被害状況を見ましょうか」

「エスカルは見ての通り、被害という被害はない。だが、街の人民はほとんどが亡くなってしまった」

 この世界では主に5つの大陸に分かれている。東側にゼリスティア、西側にドーランシア、北側にツヴォルディア、南側にグロンシア、中央に位置するゾーレンシア大陸だ。そして、エスカルはゾーレンシアにあり、温暖で四季がある。

「人民が亡くなったのは他も同じだろう。オルヴェスじゃ街の復旧でてんてこ舞いだ」

 オルヴェスはドーランシアの砂漠地帯にそびえ立っているが、実際住人が住んでいるのは地下であり、鉱石類などが多く採れることで有名だ。多分、その地下が狙われたんだろう。

「それを言うならアグラルス。さっきも言ったけど城は半壊、街も被害を受けている。だから、混乱が続いている…」

 アグラルスはゼリスティアにある港町の一角にある。唯一人間と共存していて、漁に出たり酒を交わしたりと賑わっている。ここの人間は種族とか関係なしのスタンスだからかもしれないが…。

「ベスペリアはエスカルと同じで、多くの人民を失ってしまったわ」

 ベスペリアはツヴォルディアの雪山に潜んでいる。こちらはオルヴェスと同じく地下に街がある。雪解け水で作った野菜がとても美味しく、料理長もたまに足を運ぶほどである。

「ハルメリアは特に問題はありませんわ」

 ハルメリアはグロンシアにあるリゾートだ。人間とは共存しているわけではないが、施設の護衛等で魔族がいることに不審に感じることはないようだ。そして、住んでいるところはそれぞれ分かれているが、ビーチだけは共有している。

「…つまりは、人員と食料がオルヴェスとアグラルスには不足しているということか?」

「あぁ、その通りだ」

「今回の件はアグラルスだけでは対処出来ない…」

「人員は私の家臣を派遣しましょう。一人で職人10人分の仕事はしてくれるでしょう」

「となると、エスカルとベスペリアは食料だな。それぞれ具体的にはどの位だ?」

 それぞれの報告書に目を通し、互いに目を合わす。

「なるほど…これなら普通に出せるぞ」

「ええ、だからと言って多く供給することは出来ませんが…」

「いや、充分すぎる位だ。助かる」

 ザットは確かに厳ついが肝が据わっている。少し怒りっぽい口調だが、本当に怒っているならまず会話が成り立たなくなる。

「…ありがとう」

「テリシアさん、涙を流すのは天使達を元に戻してからにしましょう。あなたには大事な役割があります」

「…うん」

『ディネア様!』

「…会談中なのにどんな理由で入ってきた?」

「人が…連合と名乗る者の首が面会を所望しております!」

「私はいいですよ、話し合いをすると言うのなら」

「私も同意見ですわ」

「私も…いい」

「俺も気にしねぇぜ」

「じゃぁ、決まりかな?」

「通すように伝えろ。後、誰かにここまで案内させろ」

「承知しました!」

 急ぎ足で家臣が部屋から飛び出していった…。

(あぁ、面倒くさいことになりそうだ…)

 彼女は大きな溜め息をついた。

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