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天滅の魔王-破天編- 1  作者: A.A.
3/12

魔闘技改『氾魔獄炎拳』

-城門前


「ハアアアァァァァァアア!!」


 白髪ロングの蒼い目をした女性、ガルディは槍の名手だ。と、言っても扱い方はむしろ薙刀(なぎなた)に近い。なにせ両先に刃がある魔槍“ガイアルグ』)“を使うなら敵を薙ぎ払うように扱うのが自然だ。

「相変わらず数が多いな…。仕方ない、『刻奏(ツァイトスピール)、開放』」

 彼女の能力、刻奏は自分の時間の流れを加速させることで他の者より速く動ける。だが、使えるのはたった30分、再使用には2時間はかかる。これは前線に立つものとしてはこれは致命的である。

 しかし、それは他のディスペアラーズによってプラマイゼロどころかアドバンテージへと昇華する。


「さぁ、私と一緒にこの一刻を奏でよう…」


 彼女とガイアルグによる一突き一切りがメロディーを奏でるように連なり、まるでピアニストのようだ。


「でも、時間がないから激しく行くわよ?」


 すると狂騒曲かのように動きが激しくなり、滝が流れるように倒れていく。その動きについていけるものは当然おらず、ただただ倒れていくのだった。


「さて、そろそろ終わった頃かしら?」



『ねぇダリアス、もうそろそろいい?』


 リティスはダリアスが倒していく姿を捉えながら連絡してきた。


「うん、もう十分溜められたよ!」

『なら、後は任せたよ。私は先に門に戻るね』

「了解!」


 テレパシーでの会話を終えると、ダリアスは勢いよく城門を飛び出した。敵の目の前に姿を表すのに10秒もかからなかった。


「ようやく来たか、では後は任せた」


 ガルディはそう口にすると、城門へと撤退を開始した。


「最初からブッ放すよ!『セーフティ解除、標的は…目の前の敵、全部!・・・・・デトネイトオオオォォォォ…』」

「『ブラスタアアアァァァアアア!』」


 水色のセミロングに緑色の目をした少女ダリアスの魔術は錬成、魔力を最大まで溜めることでオーバーアームド状態になり、超圧縮した魔力の塊を一気に放出することで敵を殲滅する『ディトネイトブラスター』を使える。

 その放線は放物線を描き、天使達は成すすべもなく飲み込まれていく。そして、激しい爆発音とともに吹っ飛んでいく。


『ダリアス、ちょっとやり過ぎ。魔力反応を見る限り死んではないけど、危ないわ』

「えへへ、ちょっとやり過ぎちゃった?テヘッ♪」

『テヘッ♪じゃないですよ全く…』


 フィネアは溜め息を隠し切れていないでいる。まぁ、私は気にしなきけどね。


「それはいいけどさぁ、あっちの方行っていい?なんか楽しそう♪」

『駄目です、サッサと撤退してください』

「(まずい、この低いトーンの時に反抗すると後で殺されかねない)」


 実際、本当に逆らうと普段は使うことのない広域爆発(エクスプロージョン)の規模を小さくしたモノを私に向けてはなってくるため、私はこうして従うしかないのだ。


「ハァァアイ…」


 そう言うとオーバーアームド状態を解除し、再び城門へと帰るのだった…。




-林付近



「我が眼に写りし者に憎雷を『死怨禅電波』!!!」


 紫のサイドダウンで水色の目をした女性、クリプトはその場にいる悪霊の呪いを力に変える呪術師なのたが、雷の魔術と組み合わせることで威力と範囲を増大させて放つその雷撃は容赦なく敵を襲う。


『グオオォオオオオ!!!』


 気絶させるには十分過ぎるが、元に戻ってもその激痛で藻掻き苦しみながら叫ぶ者達が殺到した。そんな姿を彼女は『呪われないだけマシだと思え』と思いながら見ていた。


「…今ロクでもないこと心で呟いてた?」

「さぁ、なんのことだ?そっちの方は『もっと皆派手にブッ飛んじゃえ!』とか言ってそうだけど?」

「なんのことかなぁ?私はただゼヴォルカンともっと楽しみたいだけだけど?」


 黄色いサイドテールに赤い目をした女性、ゼラは魔戦斧“ゼヴォルカン”を軽々と肩に乗せる。とてもじゃないが私にはあれは持つこともできない。

 そして、魔術と組み合わせることで通常時でさえ私を蹌踉(よろ)めかせるほどの風圧を放つものが、一振りで自分の周りを吹き飛ばす竜巻へと昇華する。


「やっぱり…さっきのデカい竜巻群もあんたの大車輪一つで起こしてたか…。『殺さないように』って言われてるのに…」

「それはこっちのセリフだよ?あれどう考えても殺戮用だよ?まぁ、死んでないからいいけど」


 双方、オーバーパワー過ぎるため、一歩間違えると本当に殺りかねないので敢えてそれ以上は言及しない。


「おぉ〜ぅい、お二人さあぁ〜ん」


 おっとりとした呼び声とは全く合わない疾走をするユニ。緑色のハーフアップで蒼い目をした彼女は変身魔術を多用する偵察のプロだ。もちろん、他の部隊の偵察隊は勿論優秀だが、彼女の場合は敵に見つかっても倒して、その敵になりすまして潜入捜査までできる。

 そんな様子を見て、苦笑いしながら言葉を返す。


「お、お帰りユニ。それでどうだった?」

「そう、ユニは偵察から帰ってきたんよ。やっぱりいたんよぉぉお。周りと全然違うから一目でわかったんよぉぉ。アルちゃんにはぁあ報告しといたからぁ。後ろから叩くって〜」

「でかした、ちょっと待っててね」


 テレパシーで城門側に繋げる。


「こちらゼラ、ユニが十二宮の捉えたよ。アルセヴィアの指示により、私達はそっちに向かうね。こっちの敵は片付け終わったし」

『了解、でも気を付けてね。もしものことがあったら暴れ足りないダリアスが駆けつけるから』

「うん、それじぁね」

 会話を終えることを確認するとクリプトは声をかける。

「それではユニ、ゼラ、行きましょうか」

「了解」「はあぁ〜い」


 三人は林の中へと駆け出していった…。




-その頃…


「ねぇ、本当に行かなくてよかったの?」

「あぁ、彼女達なら大丈夫だ。万が一があってもいとも普通にやり抜けるさ」


 ディネアとアリムは軍の訓練所にやって来ていた。訓練をする予定だった兵士達はゼレスに『今日は少し訓練所借りるから、悪いが休日として英気を養ってくれ』と伝えてあるのでいない。


「それで魔王様、一体何を?」


 アリムの質問を『まぁ、ちょっと見ていろ』と言うと、急に拳を地面に叩き付けた。すると、まるで極小規模のクレーターかのようなものが出来てしまった。


「・・・え?なに、した…の?」

「私は弱い、生まれながら魔力量は莫大なのに魔術はなに一つ使えない」

「嘘…さっきのは魔術じゃ、ないの?」

「あぁ、私は魔術が使えないなりに死に物狂いで努力した。私のことはどうでもよかったが、私のせいで親が蔑まされるのが辛くて辛くて仕方なかったから。」

「そう言えば、魔王様のお母さんとお父さんって?」


 少し顔を俯き、ゆっくりと顔を上げて告げた。


「死んだ。十年前、原因不明の突然死でこの世を去った」

「そ、そんな…」


 呆然としているが無視して語り続ける。


「そして、生み出したのがこの『魔闘技』だ」

「魔闘…技?」

「あぁ、魔術とは必ず詠唱をしなければならないもの。私はそれが上手く出来ず失敗してしまう。だが、この魔闘技は詠唱はいらない。さっきのは、魔力を拳に集中させて魔力を纏い、普通に殴った」

「でも、なんで見せたの?」

「アリムが剣を使えない状態で、魔術詠唱をしようとしているとする。それを相手が待ってくれていると思うか?」

「ないですね」

「そのための魔闘技だ。一応部隊の皆には教えているが、実際に使える者は隊長クラス、つまりはゼレスやアルセヴィア位だ」


 するとアリムの顔が少し強張った。それは少し怯えているようにも見える。


「やっぱり…難しいですか?」

「あぁ、私も使い物になるまでは5年はかかった。けど、お前なら簡単に出来るだろう。なんせ、アリムはいつも極僅かの魔力を纏っているからね」

「えっ…私が?」

「あぁ、気付いたのは朝だがな。服がボロボロなのに傷が深くなかったわけはそれだ」

「私…そんなことを」


 自分の手を嬉しいのか怖いのか分からないが複雑そうに見つめていた。


「これから教えるのは魔力を全身に纏うこと、そして一極に集中させることの2つだ。まずは一極に集中させる所だ」

「ハイッ!」

「まず、魔力というのはいつも身体に流れている。この魔力の流れを感じることからだ。そうだな…自分の血液と同じように流れていると思えばいい」

「血液…ですか…」

「あぁ、目を瞑って右手に集中してごらん。身体の力を抜いて、自分の中の魔力を詰めていくように」


 アリムは目を閉じ、深呼吸をすると動きが止まった。彼女の表面の魔力が少しずつ右手に集まっているように思う。


「なにか…流れてくる。これが、魔力…なのですか?」

「そうだ、そのまま右手に留めるんだ。右手が鉄拳に変わったような感覚になると思う」

「ンッ…」


 右手に集まった魔力が少しは漏れているが、それでも十分に魔力が溜まっている。


「それじゃ、一回そのまま地面殴ってみて」

「・・・ハアアァ!」

 彼女の拳は、地面をほんの少し抉ったようだ。

「フウゥゥゥ…」

「凄いな、これなら1年もかからずに完全にモノにできるかもしれん」

「そうです…か?でも、言い過ぎでは…」

「いや、初めてでそこまで行けたのはアリムだけだ。大したものだよ、私も驚いているよ」

「ありがとう…ございます」


 声は静かだが、とても嬉しそうにしているのがよくわかる。


「だが、拳から魔力が漏れているからまだまだだがな」

「…次はもっと上手く出来る気がします」

「そうでなければ困る」

「でも、一回だけ見せてもらえませんか?」

「ん、もしかして私の技か?」

「はい、あの時は見られませんでしたから…」


 “あの時”と言うのは多分昨日彼女を助けたときに放った技のことだろう。確かにあんなに心も体もボロボロな状態でちゃんと見えているはずがなかった。


「…わかった。けど、絶対真似しようと思うなよ?これやる暇あったら剣術と魔術を磨いている方がずっといいからな」

「はい、むしろそんなことするのが恐れ多い位です」

「では、しっかり見るんだぞ」

「(魔力を双拳に集め…表面の魔力を反発させ合い…)」

「えっ?なに、この音…」

「(拳は炎をも纏う!)」


 すると鮮やかな紫色の炎が拳に現れる。それは禍々しさよりも、暖かさを感じさせる。


「これが魔闘技改、『氾魔獄炎拳』。まだ技には種類はあるが、本当にやるとここが焼き焦げるから纏うまでしかしないが」

「凄い、魔術を使わずにこんなことができるなんて…。でもどうして炎は出てるの?」

「いいや、これは普通なら使うことはできん。魔力を反発させ合うことで出しているから、暴走させると自分を(むしば)みかねない技だ」


 すると、心配するどころか冗談かわからないことを言ってきた。


「でも、それを使い熟すのが魔王様、でしょ?」

「まだだ、私は『使える』だけでまだ『使い(こな)す』ことはできてはいない」

「そういうことにしておきます」


 本当に不思議なやつだな、とその笑顔を見て一瞬思うも自分の周りが不思議なやつだらけだから今更だと、そう捉えればいい。


「それでは、続きをするよ」

「はい!」

「(もしかしたら、私以上になってしまうかもしれんな…)」


 そんなことを考えながらアリムに自分の技を教えるのだった。

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