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仔猫殿下と、はつ江ばあさん  作者: 鯨井イルカ
第三章 仔猫殿下と、はつ江ばあさん
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仔猫殿下と、はつ江ばあさん・その二十九

 そんなこんなで、プルソン、ムツキとともに「超・魔導機☆」と対峙したシーマ十四世殿下だったが……


「さあ! 今ここに、魔界を救う勇者たちが集まりましたぞ! モニターの前の皆さま、どうか拍手でお迎えください!」


「リッチーは、リポーターなのか司会なのか、どっちなんだよ?」


 ……さっそく、ヒゲと尻尾をダラリと垂らして、リッチーにツッコミを入れる事態になっていた。


「まあまあ、殿下! この状況で細かいことを気にしたら、負けですぞ! それよりも、魔界の皆さまに今の意気込みをどうぞ!」


「あー……、まあ、ゴタゴタは三人でキチンと片付けるから、安心してくれ……」


 脱力気味のままのシーマの言葉に、プルソンが満足げにコクリとうなずいた。


「うむ! 我が輩たちに任せるのだ! 魔界のみんなは、絶対に守るのだ! な、金色!」


「あ……、はい。マテオさんたちも、応援してくれてるし、頑張ろうかと……」


 二人の言葉に、リッチーは眼窩をキラキラと輝かせながら胸の前で手を合わせた。



「素晴らしい! 御三方とも実に素晴らしい意気込みですぞ! それでは皆さま……」


  シャキーン


「……STARTですぞ、!」



「なんなんだよ、さっきのどっかで聞いたことある効果音は……」


 何かを討滅するときに聞こえそうな効果音にシーマがツッコむなか、プルソンが「超・魔導機☆」をキッと睨みつけた。


「二人とも! 我が輩が弱点を探す間は、攻撃を避けることに専念してて欲しいのだ!」


 プルソンの言葉に、シーマはコクリとうなずき、ムツキはオロオロとした表情を浮かべた。


「分かりました。プルソン王」


「でも、うまく避けられるかな……」


「大丈夫なのだ……、とぉ!」


 プルソンの掛け声とともに、二人に向かって白い光が降り注いだ。


「これで、福引のアレが攻撃するちょっと前に、攻撃の軌道と範囲がオレンジ色っぽい光で見えるようになるのだ!」


 プルソンの言葉に、ムツキは首をかしげ、シーマはヒゲと尻尾をダラリと垂らした。


「あれ……、この戦闘方式、なんかどっかで、見たことあるような……?」


「あー……、プルソン王? ひょっとして、兄になんか吹き込まれてませんか?」


 二人の言葉に、プルソンは得意げな表情で胸を張った。


「そうなのだ! この間魔王が『この魔法が使えると、異界のキラキラした英雄たちみたいな戦いかたができるから』って、教えてくれたのだ!」


「ああ……、元ネタはやっぱり……」


「あの……、廃人ゲーマー兄貴め……」


 プルソンの説明に、キラキラの金頭巾と、キラキラの仔猫ちゃんとは声をそろえて脱力した。

 そんな中、三人の足元がオレンジ色に輝いた。


「二人とも! すぐに避けるのだ!」


「分かりました……、よっと!」


「はい……、えいっ!」


「ごめんね! そのお願いは叶えられないよ!」


  ガラガラガラ

  ポヒッ


 三人が飛び退いたすぐそばを、「見た目は派手だけどダメージなく適度な距離に吹き飛ばす光弾」が通り過ぎていった。


「……まあ、兄貴の廃人ゲーマーぶりはともかく、けっこう役に立つな、この魔法」


「うん……、そうだね……」


 シーマとムツキが脱力しながらも感心していると、プルソンが凛々しい表情で拳を握りしめた。


「さあ! この調子でどんどんいくのだ!」


「はい!」


「う、うん!」


 プルソンの言葉に、シーマとムツキも凛々しい表情でうなずいた。


 そして……



「みんな! 連続攻撃が来るから、時計回りに移動するのだ!」


  ガラガラガラ

  ポヒッ

  ポヒッ

  ポヒッ


「この攻撃は……、避けるのは無理なかんじかな? 二人とも! 魔法障壁を張るから、ボクの方に!」


  ガラガラガラ

  ボンッ!


「今度はみんなであたったらまずそうな攻撃がくるから、散らばって!」


「ごめんね! そのお願いは叶えられないよ!」


  ガラガラガラ

  ポヒッ!



 ……旋回したり、集合したり、散開したりしながら、三人は「超・魔導機☆」の攻撃をかわし続けた。


 そんな中、プルソンが拳を握りしめて笑みを浮かべた。


「……よし! 弱点が分かったのだ!」


「本当ですか!?」


 シーマが問い返すと、プルソンはコクリとうなずいた。


「本当なのだ! アレを見るのだ!」


 そう言って指差したのは、八角形の一番上になっている辺にある、四本のネジだった。


「あのネジを外せば、中から魔力が漏れて、動力切れにできるのだ!」


「ネジですか……、なら……、ムツキ、魔力を物体に変える魔術は使えるか?」


 シーマが問いかけると、ムツキはションボリとした表情を浮かべた。


「ちょっと、むりかも……、ゴメン」


「そうか……、なら、物を魔法で動かしたりはできるか?」


「あ、うん! それなら得意なほうだよ!」


「よし。じゃあ、ボクがネジを外す大きなドライバーを四本、魔術で作る。ムツキはそれを操作して、ネジを外してくれ!」


「分かった! 頑張るよ!」


「プルソン王はその間、魔法障壁で攻撃を防いでいてください!」


「任せるのだ! 二人とも、頑張るのだ!」


 一通り作戦が決まるとプルソンが足を踏み鳴らし、三人は光のドームに包まれた。その中で、シーマはムニャムニャと呪文を唱え出した。



「ごめんね! そのお願いは叶えられないよ!」


  ガラガラガラ

  ポヒッ!

  ポヒッ!

  ポヒッ!


 その間も、「超・魔導機☆」は三人に向かって光弾を打ち続ける。

 それでも、シーマは怯まずに詠唱を続け……


「……いでよ、デッカいドライバー!」


 ネジの上に、デッカいドライバーを四本作り出し……


「よーし……、回れぇ!」


  キュルキュルキュル


 ムツキが全魔力を使って、デッカいドライバーを回してネジを外し……


  ガコッ

  パァァァァ


「ごめんね! そのお願いは叶えられないよ!」


  サラサラサラサラサラ……


 フタが外れた「超・魔導機☆」は、魔力を放出しながら砂のように崩れ去り……


  ジャーン

  パッパラー


「ララララー!」


 どこからともなく、ファンファーレ的な音楽とともに、勝利を讃える高らかな歌声が響き……


「勝利の音楽は、レディ・バステト率いる熱砂の音楽隊の皆さまがお送りいたしました!」


 ……リッチーが音楽の出どころをサラリと説明した。


「や……、やったぁ……」


「これで、魔界に平和が戻ったのだ! 二人とも、よく頑張ったのだ!」


「うん、まあ、解決したのはよかったけど……、バステトさんたちも忙しい中よく乗ってくれたな……」


 赤い空の下には、やり切った感満載のムツキとプルソンの声と、力ないシーマの呟きが響いた。


 かくして、仔猫殿下一行は福引のアレこと、「超・魔導機☆」の撃破に成功したのだった。

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