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京都の王  作者: 宇井九衛門之丞
第3章 妖女(毛見郷編)
34/192

折合

「半兵衛……虻隈の仇!」

「そうだよ……ほら、もっとだ!」

夏はより勢いを増し、半兵衛はより煽る。


「くっ……おとなしく、咎を受けよ!」

自らの繰り出せし爪を、またも紫丸の刃にて受け流せし半兵衛に、夏は痺れを切らす。


「くっ……ならば!」

夏はにわかに、攻めを止め。

その場にて、立ち止まる。


「!? ……何だよ、言ってんだろ? ここは戦場だっての!」

半兵衛は躊躇いつつも、向かって来ぬならこちらからと言わんばかり。


「もらう!」

夏に紫丸を向け、改めて斬りかかる。


「夏殿!」

広人がその様に、叫び声を上げるが。


刹那、夏のがら空きの胴に飛び込みし半兵衛の刃は押しのけられ、更に。


「くっ! 刃だと!」

胴より殺気の刃が生え、半兵衛を襲う。


半兵衛はとっさに間合いを取り、からくも躱すが。

「くっ、どういうからくりだ……?」

先ほどのにわかに攻められしを受け、夏を見つめるや。


「ふん、さすがであるな……この攻めを躱しきるとは!」

夏はその、言葉と共に。


その身を覆いし刃に、殺気を纏わせる。

たちまちその身全てより、数多の殺気の刃を伸ばす。


そのまま夏は、爪を振り上げぬままに体ごと半兵衛に迫る。

「こりゃ針鼠かよ! そんな力があったとはな……」

言いつつも半兵衛は、紫丸の刃にて素早く、迫る数多の刃をいなし。


大きく後ろに飛ばされつつも、何とか耐えきる。

「ふん、猪口才な!」

夏は次には、右腕の爪を思い切り、紫丸の刃に打ちつける。


「ぐっ! こりゃ強すぎるな……」

半兵衛も再び、大きく後ろへ退がること避けられず。


「ふん、悔いておるか? 私を敵に回したことを!」

夏はそのまま左腕の爪を、紫丸の刃に打ちつける。


「くっ、この……!」

半兵衛はまたも押される。


先ほどより、半兵衛は退いてばかりである。

「くっ……あの愚か者め!」

母屋より戦いを見守りし広人は唸る。


あれだけ夏を、未だ幼気なる女子を煽っておいて。

いざ攻められればこの有様である。


「これでは……夏殿に罪を分からせるなどできぬ! ただ傷を抉りて広げ、怒りを抱かせしのみではないか……!」

広人は拳を握る力を、より大きくする。


「このままでは半兵衛、この戦場がそなたの墓場になってしまうのだぞ……!」

広人は苛立つと共に、その実半兵衛の身を案じておる。


今の夏の、半兵衛を追い詰めし様は。

先ほどの半兵衛と、まるで立場が逆である。


今や夏が、半兵衛に対しその目に殺気を宿す。

否、目のみではない。その身全てに殺気を纏い、殺気の刃を針鼠の針のごとく滾らせる。


「こりゃ、いよいよ先が見えて来たな……」

半兵衛は、自らの有様を自ら嘲笑う。


見れば、半兵衛は既に地に膝をつき。

何とか夏の攻めを、紫丸の刃にて防いでおる。


「ふん、これで終いだ……!」

夏は言うや、背を逸らし飛び上がり。

宙にて、くるくると回る。


その身全てに生えし殺気の刃と合わせ、夏はおのれの身を丸鋸へと変え。


そのまま半兵衛に、勢いよく迫る。

「くっ……ぐっ、ぐああ!」

半兵衛は紫丸の刃にて受け止めんとするが、夏に力負けし。


紫丸が飛ばされ、夏が回りしまま半兵衛のその身を、斬り裂かんと間合いを詰める。


「くっ、ぐっ……!」

半兵衛の呻きと共に、夏がついに、半兵衛に迫り。

刹那、大きな土煙に場が、包まれる。


「くう!」

「これは……」

土煙より顔を守りつつも、広人、義常、頼庵は何とか目を細く見開き、成り行きを見届けんとするが。


如何せん土煙が息つく暇すら与えぬほどに立ち込める場にては、誰もがその場にいることのみで精一杯であった。


「くっ……半兵衛!」

物陰の中宮も、その様を見届けんとするが。

中宮もまた、同じ有様にて叶わず。


「半兵衛、そんな……」

土煙に咽びつつも、中宮が思い出せしは。





この戦より、二日ばかり前。

帝との謁見の次の日にて。


「半兵衛、此度のことは……何と申せばよいか。」

半兵衛の屋敷の空き部屋にて、中宮が躊躇う。


中宮はいつもの通り、侍女のなりにて半兵衛を訪ねておったが。


半兵衛は少し塞ぐようになっておるという。

中宮はその半兵衛を慰めんとして訪ねたのであるが、いざ半兵衛を目の前にすれば。


その顔の色は未だ見たこともなきほどに、褪せておる。

「は、半兵衛、何とした? いつもの勢いが死んでしまいしようであるぞ、この阿保兵衛!」


ひとまず中宮は、半兵衛に軽口を叩くが。

「……うるっせえな。いつもの俺をどう見てんだよ、中宮様?」

半兵衛もまた、軽口を叩く。


中宮という身分の上にある者にも軽口を叩くとは、そこだけ見ればいつもの勢いに半兵衛が戻り、胸をなでおろすべき物であるが。


中宮は胸をなでおろすどころか、より不安になる。

半兵衛のその声には、全く勢いのないためである。

「半兵衛……頼む、そなたを苦しめるものが何か、私に教えてはくれぬか!」


中宮はたまらず、半兵衛に頼む。

「……すまねえ、そこは嘘でも勢いよく返せてりゃあよかったんだがな……」

半兵衛はまた、力無く返す。


中宮はその様がより堪らず、ついに。

「教えよと言っておろう、半兵衛! 一人で背負い込めなどとは言っておらぬ! それとも……私では、力になれぬか?」

半兵衛に、怒鳴る。


僅かに沈黙が、場に流れる。

「……すまぬ。」

「いや、謝んのはこっちの方さ! さあて、稽古でもつけなけりゃな! すまねえ、中宮様。あんたの前じゃ威勢よくしてなけりゃって思ったら、生き返ったよ!」


半兵衛は先ほどとは異なり、勢いを取り戻せし様にて。

中宮に、返す。

「半兵衛……言っておろう、真のことを言えばよいと! 嘘で威勢よくされたとて、そなたが誠に気に病んでいることを知らねば落ち着かぬ!」


中宮はそんな半兵衛の様に、涙目にて返す。

と、半兵衛はそっと中宮に近づくや頬の涙を拭う。


中宮はそんな半兵衛の手を、そっと握る。

「半兵衛……」

「案ずるな。さっき暗かったのは、ちょいと昔を思い出したからさ。……此度のように、世話になった村を救えずじまいだったことがあってな。」


半兵衛は語りかけるが、話の半ばにて。

「すまねえ、これより先はまだ、話せねえ……とにかく、俺はそんな昔をまた繰り返しちまった。だからどうしても、せめて夏ちゃんを救いたい……」

詳しく話すを止め、そのまま自らの手にかけられし中宮の手をそっと外し。


そのまま踵を返し、部屋より出て行かんとする。

「……それでよい、私もそなたを困らせとうないが故、今はそれで! それに、そなたは秘め事を他の者への、冥途の土産に話すことが多いのだからな! むしろ話されぬままで落ち着いておる!」


中宮は半兵衛の背中に向かい、軽口を叩く。

半兵衛はその言葉に、ぴたりと止まり。

「……ようし、分かった。俺がこの戦から帰って来たら話してやろう! 中宮様、あんたの冥途の土産としてな!」


半兵衛も軽口にて、返す。

「むうー! それは謀叛か、半兵衛! ならば、半兵衛の話など聞きとうないわ!」

中宮も更に軽口にて、返す。


半兵衛と中宮は、お互いに笑い合う。

そのまま中宮は、立ち止まりし半兵衛を追い越して襖の所まで行き。


「そなたと話せてよかった。……半兵衛、くれぐれも死ぬな!」

中宮は襖を開けての去り際に、そう呟く。


「……当たり前だろ。」




「……半兵衛、死ぬな!」

中宮は未だ晴れぬ土煙の中、半兵衛の身を尚も案ずる。


再び場は半兵衛と夏の戦の場に、戻り。

中宮だけではない、広人も義常も頼庵も、半兵衛の身を案じておる。


と、その刹那。

にわかに土煙が、晴れる。

「!? な、これは……何とした?」

広人が訝っておると。


土煙を晴らせし半兵衛の紫丸の振りが、そのまま夏をも払い退ける様が。


「な、半兵衛様の妖喰いはとうに飛ばされたのでは……!?」

頼庵が驚いておるが。


「……殺気にて、お手元に呼び出されたのであろう。」

義常は場違いに落ち着きし様にて、返す。


「あ、兄者……! 何だその落ち着きは?」

それに引き換え頼庵は、全くもって落ち着かぬ様である。


「そなたこそ落ち着かぬか! ここは我らが主人の命を賭した戦なれば、我らが案じたとてどうにもならぬことよ!」

義常は弟を、窘める。


「義常殿……」

傍らにて聞いておった広人も、きまり悪き様である。


「……さあ、見届けようぞ。」

義常は顔を、庭へと戻す。


庭では未だ、半兵衛と夏が戦を、繰り広げる。

「ふん、先ほどの力をもってしても討ち漏らすとは……つくづくしぶとき奴め!」


夏は自らの爪を振るい、半兵衛がそれを防ぎ紫丸の刃を振るい。戦は再び、互いに少しも退かぬ押し合いとなる。


「ああ、よく言われるぜ! でも、長引くのは俺も好みじゃねえな。」

半兵衛は刃を振るいつつ、返す。


「なあ夏ちゃん……あんたはお父上が死んだこと、誠に何とも思ってないのか?」

半兵衛は夏に、尋ねる。


「当たり前であろう! あんな親、弟など……先ほど申した通りよ!」

夏は半兵衛に、言葉と共に爪の斬撃を返す。


「そうか……じゃあ一つ聞く。あんたに殺される時のお父上……伊尻さんはどんな様だった?」

半兵衛は夏の爪を紫丸の刃にて受け止めつつ、夏に問う。


「ふん、それは……」

刹那、夏の手がぴたりと止まる。


夏の頭に浮かびしは、今まさに最期を迎えんとする父の言葉。


私が憎いであろう? 殺せーー


「う、うわあああ!」

夏はにわかに頭を抱え、叫ぶ。


「止めろ、止めるのだ! 何故だ? 何故そのような目をする! 私を幾年月も苦しめておいて、今更罪を悔いるな……!」

夏は尚も、叫ぶ。


「……あんたのお母上や弟さんはともかく、お父上は自ら、あんたに殺されたんだな?」

「な……!」

半兵衛からの問いに、夏は驚く。


と、半兵衛はにわかに、紫丸を放り投げる。

「くっ……何のつもりだ!」

夏は訝る。


「やっぱり苦しんでるんだろ? お父上を殺したことに。なら、また俺を憎めばいい。さあ、その憎しみ……晴らせよ!」

半兵衛は丸腰となり、両の腕を広げ。


今すぐにでも殺せと、言わんばかりである。




「なっ……あの愚か者!」

母屋の広人は、立ち上がる。


「広人殿!」

頼庵が引き止めるが。


「行かねば! 私は半兵衛を止めに。」

「い、いかぬ……」

「そうであるぞ広人殿、先ほども申したであろう? 我らはここで、見ておるしかない!」

尚も止まらぬ広人に、義常は言葉をかける。


「……義常殿……そなた落ち着き払い過ぎであるぞ! あのような行い、指を咥えて見ておれなどと!」

広人は敢えて義常に、言う。


「……主人様が、この戦の前におっしゃったのだ。自らの命を賭しての戦、黙って見届けよとな!」

「な……」

義常の言葉に、広人は返す言葉がなくなる。


始めより妙に、義常が落ち着きしはこのためか。

「……だとしても、あれは命を賭するのではない! 投げ出さんとしておるのだ、止めねば!」

尚も止まらぬ、広人であるが。


「広人殿! ここは通さぬ。そもそもそなた、一度は戦に割り込み責めを受けておろう? ここで再び責めを受ければ、どのような咎になるか分からぬぞ!」

「……ふむ、分かった。」

義常のこの言葉には、さすがに広人も黙り込む。


「さあ、主人様……」

義常は再び、庭に目を向ける。




「さあ、早くやれよ!」

母屋での諍いの間も。

半兵衛は夏に、自らを殺すよう迫る。


「ふん……そうであるな。全てそなたの……!」

夏は勢いをつけ、そのまま半兵衛に迫る。


「……半兵衛!」

「半兵衛様!」

「半兵衛!」

「主人様。」

母屋より広人、頼庵、義常が。

物陰より中宮が、叫ぶ。


あわや、半兵衛は夏にーー

殺されは、しなかった。


夏の爪は半兵衛の腹へあと少しの所で、止まり。

夏は腕を下ろすと共に、その姿を元に戻す。


「できぬ、私自らの罪を、他の者に押し付けて晴らすなどと……!」

夏はへたり込み、涙を流す。


「罪って、認めたな。」

半兵衛も広げし両の腕を下ろす。


そのまま夏の肩に、手を置く。

「何故、分かったのだ? 父が私に、自ら殺されたと。」


「……あんたは気づかなかったかもしれないが、あの死神の嬢ちゃんが村人の魂を連れ去った時、伊尻さんの魂もいた。その時のあんたを見つめる目がまさしく、親のそれだったから……かな。」

夏の問いに半兵衛は、返す。


夏は涙声にて。

「分かっていた、私の罪……父や母や弟、虻隈……を殺せしこと……」

自らの罪を、敢えて口にする。


「夏ちゃん、もうそれでいい。」

半兵衛は優しく、言葉をかける。


戦はこれにて、終いとなった。

「半兵衛!」

「主人様!」

「半兵衛様!」

広人や義常、頼庵が、駆け寄る。


が、広人は。

半兵衛に駆け寄るや、殴る。

「痛! な、何だよ広人……」

「……ふん、そなたの罪に対する咎であるぞ、半兵衛! 全く、何故そういつも、自らに憎しみを向けさせる?」


広人は半兵衛に、問う。

「……まあ、広人。あの、大蛇(おろち)との戦の時は悪かったよ。あんたの傷、抉ったりして……」

半兵衛は広人に、謝る。


「ふん……今更柄にもなく何を申すか! そんな謝り方で許せる訳が無かろう!」

広人は鼻を鳴らし、半兵衛に言い返す。


「……まあ、そうだよな。」

半兵衛は広人に、やや気まずい様にて返す。


「……ゆ、え、に! 半兵衛、せめてそなたはこの先も長く、私に許しを乞い続ける生き地獄を味わえ! どうだ、悪くはなき咎であろうあはは!」

わざとらしく笑い声を高らかに、広人は踵を返す。


「……そりゃどうも。」

半兵衛は再び、夏に近づく。


未だ泣いておる夏に、半兵衛は。

「えっと……夏ちゃん、すまねえ! 夏ちゃんの傷も抉るような真似して! ……それで、すまねえついでなんだが……」

「……ない。」

「……え?」

「私には、帰る家がない……!」


言葉をかけるが、夏より聞こえしこの言葉には、痛み入る。

「……夏ちゃん、さっきのことすまねえついでに、うちの屋敷に来ないか?」

「……何?」


半兵衛はそれでも、夏に自らの考えを伝える。

「……そなた、阿保なのか? 何故、私などという罪人ーー面倒を自ら抱え込むのだ?」

夏は半兵衛に、呆れて問う。


「ぷっ……あははは!」

半兵衛はにわかに、笑い出す。


「な、何がおかしい……?」

真面目に問うたはずであるのに、それを嘲笑うとは。

夏は半兵衛を、より訝しむ。


「ああすまねえ、夏ちゃん……罪人? 面倒? 何故それを自ら抱え込むかって? ……それは、もう今更な問いなんだよな!」

「……今更?」

半兵衛の言葉を、夏はますます呑み込めぬ様だが。


「まず……俺が罪人だ! かつて世話になった村を救えず、此度も救えなかった。そして……さっき去っていった広人の友……隼人を救えなかった! これを罪人と言わずして、何て言うんだ?」

「な……!?」

夏は思いもよらぬことに、驚く。


更に水上兄弟が半兵衛の近くに寄り。

「いいか、我らも罪人だ。……我らはある者に、父を殺された。そしてその仇を、この主人様や帝であると騙され、危うく手を下す所であったのだ。」

「な……何!?」

夏は義常の言葉に、更に驚く。頼庵も、兄の傍らにて頷いておる。


「し、信じられぬ……そなたらは罪人の集まりなのか?」

夏は言葉を絞り出すことが、やっとであった。


「おうおう、よくぞ言った! まあ、男所帯のむさ苦しい俺たちだが、なるべく離れも早く作ってお迎えしたい。なあ、あとは夏ちゃん、あんたの心に従ってくれ!」

半兵衛は夏に笑みを返す。


夏は水上兄弟、そして半兵衛を見比べる。

誠に、こんな私でいいのかーー


「いいのか? 私は誠に面倒だぞ?」

夏は問うが。


「だから、そんなことはもう今更だ! 後は夏ちゃんが望むか否かだけだぜ?」

半兵衛も問い返す。


夏はすっかりまいり。

「私は……」






「なるほど、それが答えか……」

摂政より話を聞きし帝は、ため息をもらす。


内裏にて。帝は摂政より、半兵衛と夏の戦のいきさつを聞いておった。


「私は此度も、半兵衛に頼らざるを得なかったと……」

帝は再び、ため息をつく。


「帝、何卒あまり気落ちなさらず! ……それに、今は都の一大事でございますれば、恐れながら悩み続けることもできますまい。」

摂政は帝を、なだめる。


「……うむ、そうであったな……」

帝が返す。


その時である。襖の向こうより、声がする。

「帝、只今よろしいでしょうか?」

「……ああ、そなたか。よく来てくれた。」

帝が摂政に襖を開けさせると、声の主は摂政にも一礼し中へ入る。


「それで、どうであったか?」

帝は、声の主に問う。

この者には()()()()を、調べさせておった。


「……は、内裏の奥にしまわれし()()()は、盗まれてはおりませぬ。……ただ、何者かが見し跡は、見出しましてございます。」

「うむ……では改めて刃笹麿(はざさまろ)、そなたに此度のこと……禁じられし妖喰い"宵闇(よいやみ)"について、妖喰いの使い手と共に引き続き、調べてほしい。」

この男ーー帝お抱えの陰陽師・阿江刃笹麿(あえのはざさまろ)の報せに、帝は言葉を返す。


「は、妖喰いの使い手たちと共に……?」

「何かあるか?」

「い、いえ……滅相もございませぬ!」

やや難色を示せし自らに対する帝の問いに、刃笹麿は慌てて弁明する。


都の真の一大事は、これより起こらんとしておったーー

次回より、第四章 宵闇が始まります。

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