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ディアル物語シリーズ

ディアル物語

作者: ユメ

 多分彼女と出会うのが俺の運命だった。

 そして彼女も、俺と出会うのが運命だったんだろう。



 膨大な森が大地の大半を占める大陸クリィタ。

 昔からこの辺は魔物が棲んでいた。

 そこに俺達人間が暮らし始めたのが、血で血を洗う戦いの日々の始まり。

 魔物を残らず絶やすため、生まれたのが『魔物ハンター』、俺もその一人。

 俺達の特徴といえば黒いマント、魔物の返り血で何色のマントを着ていてもこの色に変色してしまうのだ。

 今日も今日とて明日の飯の為に森に出る。

 魔物一匹に1,000ギル(1ギル10円)、どんなでかい獲物でもたった1,000ギル、のクセして小さすぎる魔物には賞金すら出ない。

 理由は不明、「知ろうとした者は闇に消える」そう言われている。

 なのに俺達が賞金稼ぎをするのは、それでも他の職業よりはずっと稼ぎがいいからだ。 

 心の支えもないこの暮らし、潤いが欲しい今日この頃だ。


 険しい森、それも並大抵の険しさではない、樹海を悪化させたような、うねりくねった嫌な森だ。

 いつどこから魔物が襲い来るかわからない。

「はぁぁ、温もりが欲しいなぁ」

 ぼやきながら歩くのは我らが主人公・ディアル。

「命を賭けて倒した魔物さえ、たったの千ギルだもんなぁ、せめて3千ぐらいにあげてくれないかなぁ?」

 孤独な森の中、一人出歩いていれば独り言がでるのは当たり前。

 な気がする。

 その時!



 ガウァ


 魔物(中ぐらい)が現れた。

 HP2000、MPなし!

 ディアルHPさて……、MP……?

 値段は千ギル!さぁどうするディアル! 

「倒すわボケ!」

 銀色に輝く剣を振りかざし、ためらいなく斬り捨てる。

 渾身の一撃!

 魔物は真っ二つになって息絶えた!

 ディアルは魔物(中ぐらい)を倒した。



「倒した証拠を持ち帰らないとね」

 がさごそと魔物の心臓を取り出す。(うわぁ気持ち悪ぅ)

「ヤイガイサルウ」

 呪文を唱え心臓を宝石へと変化させる。

「これでよし」

 宝石を腰から下げていたアイテム袋に入れる。



 これで今日の飯代は稼いだ。

 では街に戻りましょう……

「まだまだ、宿代があるんだよねぇ」

 という事でさらに森の奥へ。

 どうも最近は魔物にも知恵がついてきたらしく、人の姿を見るとでてこない。

 ただし相手を弱いとみたり、知能が低い魔物は相手構わず襲ってくる。

 つまりさっきの魔物はディアルを弱いとみたか、知能が低かったのであろう。

 まさに弱肉強食の世界だね。



 1時間ほど歩いて森の奥地に辿り着いたディアル。

 ちょっとばかり面白い状況になっていた。



 坂から転げ落ち、魔物の巣に……いや、ご立派。

 剣を構えるにも転げ落ちたさい、どこかに落としてしまったらしい。

 しかも落ちた先の巣は家族だった。

 親の陰に隠れて子供が鼻を鳴らしている。



「魔物……?」

 ディアルは正直戸惑っていた。

 今まで見てきた魔物といえば、角とかが生えていて、毛皮もごわごわもこれっぽちも可愛くない奴らばかりだった。

 殺すのに何のためらいもなく殺せる顔、と言っては酷いかもしれないが、本当にためらいなど感じない顔だったのだ。

 だがしかぁし!

 今目の前にいるのは白い毛皮がふっさふさの魔物。

 眼はルビーのように紅く、足を飾る爪は鋭く光る銀色だ。

 子供に至ってはそれがさらに激化し、まるで高級品のぬいぐるみ!

「可愛い……」

 唯一の弱点といえば弱点であろう、ディアルの弱点は『小さくて可愛い生き物』。

 幸い今まで出会った事がないから周りにはばれなかった。

『キュウ?』 

 ちょこりと首を傾げながら一匹が、ディアルの足元に近寄ってきた。

「うわぁぁぁぁ」

 奇怪な声をあげながらもう我慢できんと抱き上げる。

 親が唸り声をあげた気もするが、すでに聞こえていない。

 抱き上げが子はふわふわで強く抱き締めたら壊れてしまいそうなほど。

 瞳が殺さないでと訴えているようでディアルは……

「殺せるかぁ!」

 壊さないようそっと抱きしめながら頬擦りまで始めた。

 敵のはずが魅了され、すっかり『彼女』の虜になってしまったようだ。

 親もあきれたようにディアルを眺め、身体を横にしてくつろいでいる。

 警戒するほどの相手でもなく、まぁ安全だろうと野生の勘で見抜いたらしい。

 富士の樹海よりも険しい森の奥地を優しい風が通り抜けた。



 それからディアルがどうしたかって?

 クリィタではそれから魔物狩りがなくなったとかなんとか。

 魔物を狩ろうとすると黒マントの人物が現れ、大剣を振りかざして妨害するのだと。

 人間が戸惑っている間に魔物は魔法を身に付け、気付いた時にはだーれも手出しできなくなっていた。

 人間は土地を広げられなくなり、魔物は自分達の住処を護るのに成功した。



 この物語の締めくくりは?

 やっぱり「めでたし めでたし」でしょう♪



 おしまい

お読みいただきありがとうございました

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