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仲間が増えた! それはそれとして不幸だ。


「うー、うー」


 どういうわけかすっかり近寄らなくなった町人の代わりに、レーナは何かしら、僕に構ってくれていた。

 何を言いたいのか分からなかったけど、大抵は、一緒にご飯に行こうとか、寝よう、とか、そういうことらしかった。

 しかし、今日は違うようだ。


 レーナは僕を町外れの、例の盗賊がいた山に連れて行っていたのだ。


 盗賊達は、僕の奴隷になっており、今では全員あの街で真っ当に働いている。

 まあ、街に完全に馴染むかは分からないけど、そこは時間をかけてもらうしかない。


 僕が立ち止まって考えていると、レーナは怪訝そうに振り返った。


「うー」


 寝起きの呻きのような気だるい声で僕を急かすのだった。


「分かったよ。

 でも、こんなに遠くにくる必要があるのかい?」


 ふと、レーナは振り返った。


「なーいー」


 ふるふると首を振って、ごそごそと胸元を探る。

 僕はそれを黙ってみていた。


「うー」


 レーナが僕に渡そうとしているのは、一枚の便せんだった。


「僕に?」


「う……」


 レーナはこくりとうなずいた。

 何だろう。


 手紙は非常に高価な便せんに入れられている。

 金色の装飾に彩られていて、紙の材質も手触りからしてよほど高価なものだ。


 よく、盗賊に盗られなかったな。


 手紙を受け取り、レーナに許可を持って便せんを開いた。

 開け口に紐がついており、それをひっぱるとするりと抜けた。


 僕は手紙に目を落し、読み始めた。


『拝啓、身も知らぬ方。

 誠にお世話になっております。

 レーナの母親でございます。

 この手紙は、レーナに、信頼にたる人にだけ見せるようにと教えております。

 ですから、この手紙を見たという事は、貴方が信頼にたる人であるとレーナが判断したのだと考えます』


 手紙の字は、妙に丁寧で、真心に溢れている気がした。

 この世界の字は知らないはずだが、読めるようになっているので……。


『レーナには、何者かに寄って【逆流の呪い】が掛けられております。

 元々は非常に頭が良く、快活で、けれど、その他は至極普通な女の子だったのですが、そのせいで、知性と他の能力が逆転したのです。

 そのせいで、獣のように猛々しい女の子になってしまいました。

 私の住む村の村人は、憑き物だと言って気味悪がり、この子を処刑しようとしました。

 私はレーナをこれから逃がすことにします。

 本当であれば、我が子と共にどんな場所にも行く覚悟はありますが、私はもう老いさらばえ、病にも侵されております。

 どうか、あなた様に、この子の呪いを解いていただきたい。

 勝手な願いだという事は分かっております。

 けれど、こんな状態のレーナが信頼するのですから、きっとあなた様は信頼にたるお方。

 逆転の呪いを使う魔王が一人、どこかにいると聞いています。

 その魔王に我が子は呪いを掛けられたのではないでしょうか?

 ですから、どうか、仲間を集めて、魔王を倒していただけませんでしょうか?

 そして、それが成し遂げられたら、私に顔を見せてはいただけませんでしょうか。

 まだ見ぬ貴方の顔、そして、娘の顔をまた見れることを、心から祈っております

 敬具』


 字は後半になるほど乱れて行った。

 急いで書いたのだろう。

 娘に、こんなものを持たせて、必死で逃がしたのか。


「レーナ……」


 どうにも、気持ちに整理がつかなくなって、レーナの頭をくしゃくしゃと撫でることにした。


「うー、かあ、さん。

 あい、たー」


 レーナが初めて表情らしい表情を見せた気がした。

 僕の足に抱きついて、ぽろぽろと涙を流しながら、顔を押し付けている。

 青い髪、これが、故郷につながるヒントかもしれない。


「そうだな。

 だけど、その前に魔王を倒そう。

 【逆転の呪い】を使う魔王。

 よし、目的は決まったね」


「ほん、とー?」


「ほんと、ほんと、これからどうしようかなって、考えてたんだ」


「うー」


 レーナはもう一度、僕の足に顔を埋めた。


「そこの御仁。

 誠に心苦しいが、そのお話聞かせていただいた」


 とくり、心臓が鳴った。

 恐る恐る振り返る。

 僕の能力値は全てが上がっているから、敵を探索する能力も飛躍的な向上を見せている。

 見なくても、音だけで敵の居場所をある程度は把握できるし、殺気なんかを感じることも出来る。


 だけど、何の気配も悟らせずに、僕の背後に誰かがいる。


 僕だけじゃない。

 レーナの超人的な直感力でも、誰かが近づけばすぐに探知が出来たはずだ。


 僕は恐る恐る振り返った。


 忍者? か……。


 黒色の忍者装束。

 童顔なのか、それとも本当に幼いのか、少女なのか、少年なのかも分からないくらい中性的な顔。

 しかも、飛び抜けて見目麗しい。

 マナさんとは真逆、日本的美人だ。


 また、作り物みたいな印象のキャラクターが……。


「あいや、失礼。

 拙者、にぶかげと申すもの。

 越境して参った。

 御仁、よろしければ、貴方の旅に付き合わせてはもらえないだろうか?」


「何だって?

 どこの誰だか知らないけど」


 僕はレーナを庇いながら、後ずさった。


 にぶかげと名乗った子供は、身体の随所にクナイや刀のような武器を持っている。


「むむ、武器を持っていると見るや、話し合う姿勢を見せながらも、仲間を庇う。

 好感だぞ、御仁」


 にぶかげはくすりと笑った。

 しかし、その顔はひどく険しい。


「……殺気を、感じるんだ」


「むむ、殺気?

 そうか、御仁。

 私から不穏な空気が出ているのは確かにその通りだ。

 私から、そのような空気を感じ取るとは、本当に聡い方だな。

 ますます好感だ」


 なんだか、語るたびにこの子の好感度を荒稼ぎしているみたいな口ぶりだが、これも、僕を油断させるための罠じゃないのだろうか。


「しかし、違うのだ。

 私が、今、不穏な空気を発しているのはな」


 にぶかげは、ぎろりと僕を睨みつけた、ような気がした。

 右手をゆっくり、ゆっくりと動かして、腰の辺りに持って行く。

 そこには剣がある。

 かちり、と剣が動いた。


 僕はあわててレーナの身体を引っ捕まえて、逃げる準備をした。


「お腹が減っているから、顔が険しくならざるを得ないのだ」


 ぐぎゅるるるるるるるー。

 にぶかげはお腹に手を置いて、ぱたりと倒れた。


「すまぬ、二年の放浪その間、あまりまとまった食事を摂っていないのだ」


「す、すぐに、行こう。

 おんぶするよ」


「うー」


 僕がにぶかげに手を差し伸べると、レーナが僕の手を弾いた。

 まさか、レーナもにぶかげに何か不穏な物を?


「うっ♪」


 レーナはやや上機嫌そうに親指を立てた。

 そうして、這い寄るように、にぶかげの身体に近寄ると、その身体に潜り込む。

 気だるそうに両手を上げると、にぶかげの身体を担ぎ上げた。

 なんの負荷も感じさせない、自然な持ち上げ方だった。

 僕は唖然としていた。


「お、おお、童殿。

 随分力持ちですね」


「うー」


 そう言えば、筋力もSSだったのだ。

 何だか、よく忘れそうになる。

 

「レーナ、僕が担ぐよ、大丈夫」


 しかし、女の子に無理を強いる訳にも行かない。


「けー、がー」


 レーナは僕の身体を指差した。


「ん?」


「怪我をしておられるとおっしゃられたいのでは?」


 意味も分からずに立ち尽くしていると、にぶかげが補足してくれた。


「あ、ああ!

 そうか、ありがと、レーナ。

 じゃあ、任せようかな」


「うー♪」


 レーナは満足げだった。


 はたから見ると、僕たちはさぞかし変な集団に見えただろう。

 にぶかげに関する警戒を完全に解きながら、僕はこの子の事を聞くことにした。


「にぶかげも、逆転の呪いに?」


「は、はい、そうなのです。

 私は、敏捷性を逆転されました」


「そうなんだ」


「ええ、それで貴方を探していたのですよ。

 勇者ul殿」


 にぶかげは、僕を憧れのものでも見るような表情で見ていた。

 ような、ではないのかもしれない。

 にぶかげの瞳は、本物の好意に光っていた。

 憧れそのもののような。


「【不条理の逆流】感服致しました!」


「何だって?」


 僕は思わず振り返って、にぶかげと目を合わせる。


 聞くことも出来た。

 けれど、僕はまず、自分に問いかける。


 この子は、何でそれを知っているんだ?


明日の朝は更新無理かもしれません。

するかもしれないけど。

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