表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/45

プロローグ



 数多の聖騎士が倒れ伏している。


 体中に傷を負い、もはや動きも出来なくなった聖騎士が森の中で横臥し、屍山血河しざんけつがの様相を呈した戦闘は尚も続いている。


「聖騎士長様、撤退のご指示を!」


 女の声が、森の中で響いた。


「ならん! 駄目だ、今ここで撤退の指示を出せば隊列が崩れる!」

「し、しかし聖騎士長様、もはや隊列すらありません! 秩序も何も、もうないのです!」

「それでも駄目だ! こいつを打ち倒すまでは撤退を許さん!」

「目を覚ましてください! このまま戦闘を続けてもいたずらに犠牲者を増やすだけです!」

「状況を理解しろ! 今私たちが退けば他の奴らはどうする! 私たちだけが逃げおおせたとしても、動けない仲間が多い! 全員が食い殺させるぞ!」

「しかし…………しかし!」


 女は言い募るが、四方八方に聖騎士が横たわっており、聖騎士長の言が正しいと理解する。

 頭で理解はしていても、本能はやはり退避の考えか、足がすくみ、腰が引けている。


「ナリッサ、気をしっかり持て! 意識を飛ばすな! ここで私たちが死ねば誰がこいつを討伐する! 持ちこたえろ、援軍が来るまで持ちこたえろ!」

「し…………しかし聖騎士長様、援軍が来るまで持ちこたえることが出来るかは……それに、この国に私ども以上の戦力はありません!」

「援軍が来た時に、援軍に任し、部下を引き連れて街へ逃げ狩るのだ!」

「な…………何をおっしゃってるんですか聖騎士長様! そんなことをすれば援軍が鏖殺おうさつされます!」

「皆で、皆で帰るんだ! 援軍も聖騎士も、皆が皆生きて帰るんだ! そこまでは気張れ、ナリッサ!」

「そ…………そんなこと……」


 出来ない。

 聖騎士長の言っていることは夢物語だ。

 そう、理解していた。


 しかし、最早撤退の二文字は考えられない。

 ただひたすら死力を尽くし、敵を打ち倒すことしか、もう方法がなかった。


「くそっ…………」


 怨嗟の声が漏れる。


「くそおおおおおおおおぉぉぉぉ!」


 女は眼前の強大な敵に、突貫した。


 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ