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エピローグ



 ユーロが冒険者ギルドから出ていき、その場でヨゼフとライムとが話し合っていた。


「良いのですか、ヨゼフギルド長……? あんな条件でユーロさんを帰してしまって……」

「よいよい、前も言うたじゃろうに。あやつは相当な実力者じゃ。あやつがクエストに積極的に参加してくれるなら、はした金をせびるよりはよっぽどワシらにとって有益じゃ」

「し…………しかし、こう言ってしまえば何ですが、ユーロさんは相当なトラブルメーカーですよ。あまりクエスト依頼を出さない方が……」

「ライムよ。もう少し審美眼を養うのじゃ。あやつは、トラブルメーカーなどではない。トラブルの中心に据えられてしまうのがあやつじゃ。まぁ、ライムにはまた迷惑がかかるのは確かじゃがのう」

「ということは…………」


 ヨゼフは、満面の笑みを表情に出す。


「今度から、より忙しくなるのう、ライム。またユーロの担当官としてよろしく頼むぞい」

「あああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁユーロさんの馬鹿あああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 ライムはまたユーロの責任で苦労を掛けられることに、決定した。









 ユーロが娯楽土竜を退治し、酒場にこもっている頃、ユーロの居城ではエヴァとソーニャとが初めて顔を合わしていた。


「ん…………誰…………?」

「あ! お初にお目にかかります、私エヴァです! 長いことお眠りでしたね!」


 ソーニャは起き上がり、エヴァはよろしく、とソーニャの前で深くお辞儀をした。


「私は新しくユーロさんと同棲することになったエヴァです、よろしくお願いします!」

「ん…………よろしく……ここ……どこ?」

 

 エヴァの話を聞いているのか聞いていないのか、ソーニャは眠たげに返答する。


「ソーニャさんのために、とユーロさんが買ってくれた新しいあなたの家ですよ! 居城です! 居城で巨城です!」

「そう…………ユーロは……?」

「ユーロさんですか? 緊急警報が鳴っていたので、今頃ユーロさんは今街の大規模クエストに参加してるんじゃないかな……と思いますが」

「ん……そう…………ユーロと遊びたい…………な」

「そうですね、ユーロさんあまり家にいないですもんね」


 初対面にも拘らず、エヴァとソーニャとは蜜月のように話し合う。


「エヴァ……ここ、家?」

「そうですよ、家ですよ。それがどうかしたんですか?」

「なんだか……安心する。安心する何かが……近くに……ある」

「安心…………? よく分からないですね、それはまた」


 エヴァは小首をかしげる。


「それで…………近くに……竜……いる?」

「……え?」


 ソーニャはあどけない顔で、質問した。


「いやいやいやいや、近くに竜がいるわけないじゃないですか! 全くソーニャさんはお茶目ですねぇ」

「違う……竜、近く、いる。私、竜の所いかないといけない……?」

「? よく分かりませんが、竜の所に行く必要はないと思いますよ」

「そう…………なら、また、寝て良い?」

「え……? は、はい。どうぞ、おやすみなさい」

「うん…………寝る……」


 ソーニャはそう言い残し、また入眠した。


「ユーロさんの言った通り本当によく寝るお人ですね……それにしても、竜がなんたらっていったいどういう……」


 エヴァは神妙な面持ちをしながら、エヴァのベッドに、腰かけていた。











 聖騎士団本部――


 ナリッサと聖騎士団長が、互いに話し合っていた。


「聖騎士長様、話したい事というと……?」

「そうだな、お前に言いたいことがある」

「は…………はぁ、言いたい事、ですか」


 竜の巣の報告は既に終えたはず……と、自身の落ち度についてナリッサは考える。


「話したい事とは、竜の巣のことだ」

「はっ…………はい!」


 やはり竜の巣のことだったか、と気まずい顔をする。何か落ち度が……と、考えていると、


「近々、聖騎士の主力を使い、竜を叩こうと考えている」

「叩く……絶命させるおつもりですか?」


 不穏な言葉に、ナリッサは言葉を返す。


「そうだ」

「しっ…………しかし、聖騎士長様、過日私も申しました通り、森の中にエルフの方がおりまして……」

「それがどうした」

「は…………はっ!」


 居丈高ない、制圧するように、聖騎士長は言った。


「そのエルフの老婆が本当のことを言っているのかどうか、何もわからない。最悪、その老婆が竜の変化自体なのかもしれないだろう」

「おっしゃる通りでございます」


 ナリッサは首元に大粒の汗をかきながら、迎合する。


「だが…………」

「はっ!」

「お前の言う事も一理あるな。一度そのエルフの老婆に話を聞いてから竜を抹殺しに行くのも悪くはないだろう」

「せ……聖騎士長様!」


 ナリッサは目を炯々と光らせ、聖騎士団長を見る。


「とにかく…………竜の抹殺の計画が動いているということを、念頭に置いておけ」

「はっ! 承知しました!」

「では、下がれ」

「失礼します!」


 ナリッサは恭順に返事をし、踵を返した。


「聖騎士長…………」


 目に少しばかりの不安と憂慮を湛え、ナリッサは今日も聖騎士としての任務に向かった。



これにて第一章は閉幕です。

第二章はまたしばらく書きためてから始める予定です。

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