いざ!初陣! その1
アマチュア総合格闘技団体との定期戦が開かれることになり、まだ
バリバリの新人である吾郎も出場することになった。
その日、いつものように練習を始めようとしていた時、遅れて入ってきた笠井主将が、いつもとは違った重々しい口調で告げた。
『定期戦が決まったぞ』
南雲、遠藤の両先輩は、特に表情を変えることなく、
『なんだ。今回は随分遅いんだな』
『勿体付ける必要なんかないのに』と答えた。
定期戦、というのは、我が城南高校キャッチレスリング同好会が出場できる『公式試合』と呼べるものだ。
何でも、鮫島先輩が以前プロレスラーをしていた頃に知り合った格闘家が主催しているジムが開いている大会で、出場するのはみんなアマチュアばかりであるが、それなりに経験を積んだ選手ばかりだという。
『定期戦』などと呼んではいるが、別に決まった日に開かれている訳ではなく、向こうとこっちのスケジュールの合った日に開かれるという。
形式は対抗戦、即ち団体戦で、勝ち抜き方式である。
とはいっても、こっちは三人だけであるから、必然的に3対3ということになるのであるが。
『しかしだ。今年は四対四となる』
えっ?と吾郎が言い、笠井主将に目を向けた。
『そう、お前も出るんだよ。吾郎』