18/22
死闘!第三ラウンド その4
すぐに起き上がろうとするが、その時はもう遅かった。
有馬にバックをとられ、彼の二本の腕が、それだけが独立した生き物のように絡みついてきた。
スリーパー・ホールド(裸締め)である。
『逃げろ!逃げろ!』誰かの声が飛んだ。
だが、もう遅かった。
吾郎の首をとらえた腕に、軽く力がかかる。
次の瞬間、ふうっという感じで意識が飛んだ。
どこか遠くの方で、
『それまで、それまで!』と、誰かが叫んでいる。
天井がコマのように、グルグル回っていた。
虹の矢が飛び交う。
(あれ?俺、今日朝ごはん食べて来たかな・・・・)
そう思った時である。
両頬に鋭い痛みを覚え、はっと我に返った。
『気が付いたか?良かったな?』
目の前に先輩たちの顔が並んでいた。いつも面々が、じっとこちらを覗き込んでいる。
『立てるか?』南雲が言うと、吾郎はこくんと頷いた。
(ああ、そうか・・・・負けたんだ・・・・)
何だか、他人事のような感じだった。