死闘!第二試合 その3
右ひじを痛めた吾郎、しかしそれでも闘いは続く!
吾郎はさっきよりも大きく肩で息をしながら、有馬の顔をにらみつけた。
有馬はこちらの目をちらりと見ただけで、そのまま陣営に帰っていった。
ズキン!
右ひじに痛みが走る。
完全に極まらず、上手く逃げられたとはいえ、やはりあれだけ長く攻められたのだ。どこかを痛めた可能性は十分にある。
『おい、吾郎、大丈夫か?』
笠井が最初に声をかけてきた。
『遠藤!救急箱!』
そう言ったのは南雲である。
さすが彼は医師の息子だ。コールドスプレーをかけて肘を冷やし、テーピングをてきぱきとしてくれた。
『どうだ?』後ろから鮫島が覗き込んだ。
『幸い、まだ腫れは出ていないようですが・・・・・』
『吾郎、どうするかはお前が決めろ。だが、無理はするんじゃねぇぞ』
『だ、大丈夫です・・・・』
『本当か?』
『本当です!棄権なんか、絶対にしません!』
『・・・・・』三人は顔を見合わせたが、吾郎の意志が予想以上に堅いと見たのだろう。
『いいだろう。思い切ってやってこい!ただし、今度もし、おんなじことになったら・・・・』
『分かってます!』
三ラウンド、最終ラウンドを告げるブザーが鳴った。
吾郎は大きく息を吸い、マットの中央に進み出た。
握手をする。
『三ラウンド、開始!』レフリーの声が響いた。
有馬はやはり自分からは攻めてこない。
(落ち着け・・・・最終ラウンドだ)
吾郎は何度も自分に言い聞かせた。
『吾郎!ファイッ!』
『有馬先輩!落ち着いて!』
双方から声援が飛ぶ。
(ようし!今度こそ!)
吾郎は素早く有馬に向かって飛び込んだ。
腰に両手がかかる。
素早く、自分でも信じられないくらいの素早さで、彼は有馬のバックを取った。
『おっしゃあ!』陣営からまたも声援が飛んだ。
と、次の瞬間、吾郎は腕は外され、有馬の身体が深く沈み込むと、股に手がかかり、ものの見事にマットに叩きつけられていた。
エアプレーン・スピン(飛行機投げ)である。