死闘!第二試合 その2
強敵、有馬の前に戸惑う吾郎!
『吾郎、どうした?』コーナーに戻ってきて、一番最初に声をかけてきたのは遠藤だった。
椅子に座らされ、タオルで煽られる。
『先輩・・・・あいつ、強いです。』
『当たり前だ。奴は総合の全国大会に二度も優勝してる強者だぞ』彼の足をマッサージしてくれながら、遠藤は言った。
『いいか?何と言ってもお前はまだ駆け出しなんだ。使える技だって限られてる。今まで通り、これは試合じゃなくって練習だと思え!』ホイッスルが鳴り、セコンドアウトの合図の間際、鮫島がそう言って、肩をぐっと抑えた。
吾郎は肩を振り回し、しこを二・三回踏んだ。
顔を両手でパンパンと叩く。
(そうだ・・・・これは試合じゃない。練習なんだ!)
相手があまりにも強すぎて、それを忘れかけていた。
中央のサークルで、再び有馬と向かい合って立った。
有馬はもう既に、涼し気な顔をしている。
『・・・・・』
黙ったまま、握手をし、パッと分かれた。
向こうからは攻めてこない。
(ようし、それなら今度は!)
そう考えた吾郎は、ぱっとマットを蹴って、相手に向かってダッシュした。
タックルを狙うつもりだ。
『いかん、やられる!』
冷静な南雲が珍しく感情的な声を上げた。
有馬は、吾郎の動きを察知していたかのように、横にパッと身体をよけると、彼の右腕をとり、柔道の大外刈りの要領で、吾郎を仰向けに倒した。
よけようがない。
そのまま仰向けに押さえつけられた吾郎は、マットの上にあおむけにされた。
『吾郎、動け!』
笠井が両手を口につけて叫ぶ。
吾郎は身をよじり、必死でもがき、どうやら片方の肩を持ち上げた。
だが、その瞬間、有馬の長い腕が巻き付くように、吾郎の右ひじをとらえた。
アームロック(腕絡み)である。
しかしまだ完全には極まっていない。
『吾郎、身体をあんまり上げるな!肘が極まるぞ!』
恐らく鮫島の声だろう。陣営から声が飛んだ。
確かに、まだ不完全だ。
いつもスパーリングの時に完全に極まると、身動き一つ出来ないのだ。
だが、痛い。
吾郎は必死で痛みに耐えた。
少しづつ、少しづつ、身体を動かし、向こうの力に耐えようとする。
『ギブアップか?』
レフリーが身をかがめ、吾郎に声をかける。
しかし彼は黙って首をふるばかりだ。
そして、どうにか相手の関節地獄を振り払い、身体を起こした。
有馬は相変わらず無表情のままである。
吾郎は立ち上がるとすぐに身構えた。
『吾郎!無理すんな!時間を稼げ!』誰かの声が飛んだ。
そして、もう一度彼がタックルに行こうとした時、二ラウンド終了のブザーが鳴った。