いざ、出陣! その4
いよいよ初戦だ!
両陣営がアップを終えたところを見計らってレフリーが選手をマットの中央で、向かい合うように集めた。
レフリーを務めてくれるのは、やはり鮫島のプロレス時代の後輩で、もとアマレスの全日本チャンピオンにまでなった人だ。
そこで改めてルールの説明があった。
相手方は本来総合を練習しているのだから、打撃もやっているのだろうが、ここはこちらに合わせて、あくまでも関節技と絞め技で勝負を決めることになっている。
試合は1ラウンド3分間の3ラウンド制、フォールは無く、関節技か絞め技でどちらかがタップをするか、或いはレフリーによる『見込み一本』で決まる。
勝ち残り形式で、ポイントによる判定はなく、3ラウンド終えた時点で決着がつかなかった時は、引き分けとなり、次の選手同士の対戦になる。
吾郎は相手チームの選手をつぶさに見た。
四人とも、如何にも闘い慣れたという感じで、中には彼よりもはるかに背が高く、たくましそうに見える者もいる。
握手をして、二つの陣営はコーナーに帰った。
『いいか?吾郎!びびるんじゃねぇぞ?お前が半年間、みっちり練習したことを全部出すくらいの気持ちでやれ!』
笠井主将が乱暴に吾郎の肩をマッサージしながらハッパをかけた。
『サイエンス、サイエンスだよ。それを忘れるな?』
いつも通りの冷静な口調は南雲だ。
『・・・・・』遠藤は何も言わず、黙って親指を立てて、ぐっと突き出した。
『その瞬間でもっとも効果のある技を出せばいいんだ。ここは試合場じゃねぇ、いつもの道場だと思ってやれ!』
鮫島はそういって、目をみながら力強く言った。