葬儀屋シリウスの憂鬱な1日
葬儀屋は【亡くなった方の遺体を管理し、葬式を始めから終わりまで取り仕切る人のこと】
しかしここはダンジョンが点在する異世界、なので葬儀屋の定義も変わってくる。
この世界での葬儀屋は【ダンジョンから排出された死体を処理する団体のこと】を指す。
葬儀屋シリウスの朝は早い
ダンジョン内に毎日毎日飽きることなく冒険者たちが入っていくため死体になる者は事欠かさない。
1日中いろんな状態の死体が入口に湧いてくる。
その処理を葬儀屋のシリウスは任されている、つまり寝る暇がないまったくないといってもいい。
葬儀屋の朝は早い
「働くのが嫌だ 私はニートになりたい」
これが彼 シリウスの口癖である
しかし死体はまってくれない、次から次へと湧いてくる。
「今日はいつもより多めの死体が湧いている…なぜだ…ダンジョンで祭りでも開催されているのか?しかもなんだ…これはユッケか?」
ダンジョンに新しいモンスターでも湧いたのかそれとも亜種が生まれたのか
しかしシリウスには遠まわしに関係あるが直接は関係ないので黙々とユッケな死体を処理する。
上司に報告?そんなことするわけがない、シリウスはそんな時間があるのならば睡眠に当ててしまう人間なのだ。
「私はニートになりたい」
その言葉に誰も返事はしてくれない、はずだった
「俺は勇者を辞めたい…ニート万歳…」
「独り言に相槌が…睡眠不足で幻聴、これはもう休みを取るしかないな。口実ができたぞ…ふははは…」
「幻聴じゃない」
「足元のユッケが私に話しかけてる幻聴怖い…早退したい…」
「俺に、回復魔法を…してくれぇ」
「申し訳ない私は死霊魔術しか使えないのだ」
「それでいい…」
「私が良くない、考えてみろ。ユッケがスライムのように動くのだぞ気持ち悪いだろ無理控えめに言ってR-18G」
「容赦…なし…」
「当たり前でしょうそれでは来世ではまともな人間になれますようにamen」
「ここ異世界なんでキリs」びちゃっ
シリウスは何か言いかけているユッケに対し本部から配布されている聖水をかけて問答無用に消滅させた。
「勇者だか何だか知らないがユッケ状態になっているのに話していたらそれはもう存在が魔物になっている証拠だ。回復魔法をかけても魔物として死ぬだけ、実際聖水かけたら消滅してしまった。来世は勇者にならない平和な世界になるようお祈りはしてやろう」
葬儀屋の昼はない
ダンジョンからまだまだ死体が溢れてくるのだ
いつものように飯を片手に死体を処理する
「だるい…」
これも彼の口癖である
「なんだこれすごい穴ボコだらけの死体だなん あーーーーーーむりすごいこれなんだっけほら集合体みたいならんこれ?らんこら?れんこん?なんかそんな感じのまあ気色悪いなこれ…あっあっ穴からなんか出てきたよモンスターかな?虫かな??蛆だーーー!!!!米粒みたいで今私食べてるのこめだーーー!!おろろろろろ」
葬儀屋シリウスはメンタルが弱いわけではない。
ただ不眠不休で仕事をしているので一時的に大丈夫なことが大丈夫じゃなくなり、ついでに言動も可笑しくなっているだけなのだ。
それにも関わらず飯を片手に死体を処理するのだからついに思考回路までおかしくなっているのだろう。
「汚物は消毒だーーーーー!!!アヒャヒャヒャヒャヒャヒャッ」
この日、ダンジョンの中に不気味な笑い声が響く。その笑い声の狂気具合に冒険者たちの肝を冷やしたとかいないとか。
葬儀屋の夜は長い
ダンジョンからほのかにあふれる魔素に当てられ死体がゾンビに変貌するまさにクライマックス
葬儀屋シリウスはレベルを上げて物理で殴る主義だった。死霊魔術?棍棒で殴ったほうが早いとは本人談。
「次から!次へと!本当に!面倒!くさい!な!」
感嘆符と同時にゾンビの頭を棍棒で殴り潰していくと頭の中で音が鳴る。
「このタイミングでレベルが上がるとは喜ばしい。では念願のあれを呼ぼうではないか」
独り言を言いながらもリズムよくゾンビの頭を殴り潰しながらも術式を組みある者を召喚、現れたのは去年お亡くなりになった近所の神父だった。
神父に聖書でも読んでもらいゾンビにダメージでも与えるために召喚したのかそれとも聖魔術を使ってもらい一斉に消滅させてもらうためか、シリウスはどちらでもなかった。
「ここに死霊魔術で呼び出した神父がいる。 それを掴んで こう!!!!」
あろうことかゾンビの集団に投げ入れ囮に使ったのだ。
「ふははははいつもいつも口うるさい神父め、今までの腹いせに召喚し囮にしてやったわ!!」
彼はただ単に神父に復讐したいがために召喚しゾンビ集団の中に投げ入れ囮に使ったのだ。
シリウスは神父に釣られているゾンビどもの頭をつぶして回ろうと動いた瞬間神父を投げ入れた場所を中心に爆発が起きる。わけもわからず反応もできなかったため全身でゾンビの肉片を受け止めることになり、広範囲にわたって散らばる肉片に頭を抱えることになるのは数分後のことであった。
ここで疑問なのが葬儀屋をやっているためそれなりのレベルであるはずのシリウスが近所の神父を早々に召喚できなかったのか。シリウスは知らなかったがこの神父昔は枢機卿まで上り詰めたエリート様でシリウスよりもレベルが高かった。そのためシリウスは今まで神父を召喚できず、そんな人の肉体は闇属性にカテゴリーされるゾンビには猛毒で属性が反発し合い爆発が起きたというのが事の顛末である。何も知らないシリウスは今回の爆発は神父の怒りだと勝手に勘違いしゾンビ相手に囮役として召喚しないと心に誓っていたのでした。
そんなこんなで夜は更け日の出は上がり今日も今日とて葬儀屋シリウスは眠りにつけない。