共通③ お姫様はお年頃
(オレがやったのか――――?)
新斗は先程の光景を思い出す。
規模の生物を見たこと。
怪物が呆気なく消滅したこと。
それらは見てきた生き物で、生きてきた中で、あり得ない力を使ったことを。
それはどちらも新斗自身がやったことである。
新斗には、自分がしたことを信じられない。
驚き、動揺し、なにも話せない。
「バケモンがいない…」
建物に隠れていた町の住民達が、不安げに二人を覗きながら出てくる。
「…!」
「大丈夫、言わなくてもわかるさ
君は頑張った誇りたまえ」
ディレスタントは新斗を、労い、落ち着かせた。
新斗は力よりなにより、ただ、人を助けたということ。
「バケモンは!?退治したのか!?」
「この兄ちゃんが倒したんだよ!!」
歓声を上げながら、新斗を取り囲む。
大勢の命を救ったことは、良かったし、嬉しかった。
新斗はそう実感するのだった。
「道を開けてください」
声がしたほうへ、一手に皆の視線は集中する。
その声の主の姿を視ると、人々は驚愕し、速やかに通り道を開けた。
「なんだ?」
「さてね?」
ざわつく彼等の様子に、ディレスタント、新斗はいぶかしむ。
「ん…?」
少女の衣服は袖はパフスリーブ、胸部には大きなリボン、腰はコルセットで絞められ、花の刺繍が繊細に施された生地のふわりと膨らんだ長いスカートにはフリルがあしらわれ、裾には細かいレースがある。
「エカドリーユ姫!!」
少女の姿を見たディレスタントは、その場に膝をつく。
「姫!?」
新斗は偉い相手に会ったことなど今のいままでない。
(死んだフリをしよう!!)
そのばにパタリと倒れようと、頭を打たないよにうまい方法を考えようとする。
「うわっ…なんだ!?」
思い付くより先に、エカドリーユ姫は新斗に飛び付いた。
「すごい…すごいです!!」
ドレスを着た少女は、新斗の顔を見るやいなや、感動したと言わんばかりの歓声をあげる。
(なんでお姫様が俺に抱きついてんだ!?)
新斗は尋常ではない姫の行動に、嬉しさ半分、困惑する。
「なあ…!」
新斗は必死にどうにかしてくれと、ディレスタントに視線で伝えようとする。
「どうしたんだね?」
「これ!じゃなくて!お姫様だよ!」
「そうだね、お姫様が君に抱きついている」
「だから…なんでだよ!?」
ディレスタントがあまりに冷静なので、騒いだ自分が馬鹿らしくなり新斗は自身を落ち着かせた。
「ああ、そうかよ、これって普通の挨拶なんだな」
この世界では普通のことなのか、新斗は納得してコクり、コクりとうなずいた。
「姫様ー先に行かないでくださいま…」
後から野次馬を掻き分けて現れた黒髪の女性は、抱き合う二人を見て、唖然と言葉を失った。
「姫様ああああああああ!?」
「普通じゃないんだがね」