二人だけの時間
二人だけの時間
私たちは、目で頷き合うと、お互いに歩み寄った。
「今日は、外で話しましょうよ」
時子が最初に言った。
私たちは、いつもの喫茶店とは反対側にある公園に向かった。
平日の夕方近くだが、私と時子以外には誰もいなかった。 私たちは、隅にあるブランコに並んで座った。
「すごく、不安な気持がするの」
時子は思いつめた表情をしていた。
「死ぬのが怖くなったのか」
「恐いという訳じゃないけどとにかく不安なのよ」
時子は目に涙を浮かべている。
ふと、仁さんの温かい面差しが目に浮かんだ。不意に、私が今まで生きてきた
中で、経験したことのない感情がこみ上げてきた。
「わかるよ、君の気持は。私も君と同じだ。君と仁さんに会うまでの私は、
毎日のように酒で、自分の気持をごまかす生活をしていた。そうでもしないと、
不安でたまらなくて、自分がどうにかなってしまいそうだった」
私は、話していく間に自分の感情が落ち着いていくのを感じた。
胸のつかえが、消えていくような不思議な感覚だ。 私は、少し、ブランコを揺らしながら話し続けた。
「私と君は死ぬために出会った。しかし、この前、仁さんに本当にその覚悟があるのか。
死ぬほどの人生を歩んできたのか、と試されているような気がして、
私は、本当に死ぬべきなのかどうかわからなくなった。
それ以外の道も残されているのか。
ただ、私は今日、君に会いたくなった」
私たちは素直な気持で手を握り合った。
お互いの心と心が通い合う気がした。
時子の目から、涙がこぼれ落ちた。