表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
B・R  作者: ルイ《wani》
5/20

B・R 4

俺がアルクの部屋に来て、七回月が沈んだ。

なんだかんだ言いつつ、彼女は俺を看病してくれている。


背中の傷はだいぶ良くなって、痛みも少ない。まだ動かしていないけれど、羽も揃ってきた。

俺の背中の傷に薬を塗り、薬と水を用意してくれる。

おそらく俺が人間ではないものだと――

……羽も生えているし再生能力も普通の細胞速度ではないから…

それに気付いて、家人の目を盗みながらやりくりしているにちがいない。


すごく広い部屋だから、たぶん掃除する人が本来はいるのだろう。

でもその掃除を、おぼつかない手でしているのも、彼女だった。


「…ありがとう、アルク」


人間は怖くてすぐに武器を向ける、と聞かされていたので驚いていた。

確かに俺の羽に銃を向けたのは人間だけれど、全員がそうというわけではないみたいだ。


礼を言うと、彼女は決まって背を向けて『別に』と呟くだけ。

嫌われているのかと思っていたけれど、語尾が柔らかいからきっと気持ちは伝わっているんだと思う。


「アルクはあまり家族以外の話しないよね。

…友達とかは?」


「………人間は嫌いなの。

友達なんていらない」


俺がその話をすると決まって嫌な顔をするので、それ以上話せない。


何があったのかは分からない。

彼女を何が苦しめているのか分からない。

その苦しみを俺がなんとかできるものなのかも、分からない。

…それでも諦めたくなかった。


俺を助けてくれた…この人の力になりたい。

何もできなくても、せめて話を聞くことくらい…できるなら。



「ねぇ、もうソファーで寝るの辛くない?」


俺をベッドに寝かせているので、彼女はソファーで寝ていた。

ベッドのように大きくふかふかみたいだったから、最初は心配していなかったけれど。

さすがに何日も寝床を占領しているのは気が引けた。


「は?じゃあアンタは何処で寝るのよ」


「別にソファーでも大丈夫だよ、もう背中痛くないし」


ベッドから体を起こす。もう歩くこともできた。

ソファーへと歩く俺の前に立ち、睨み付ける。


「病人はベッドで寝なさいよ」


「でも……あ、そっか。

二人で寝ればいいんだよ。

今日からそうしよう」


名案だと人差し指を上げる。

でもアルクは俺の顔を見て、固まっていた。

俺の兄さんとは一緒によく寝ていたんだけれど…やっぱり、人間じゃないから、かな。


「……一緒に寝るのは、やっぱり怖い?」


何故か彼女は真っ赤になって怒った。


「そーゆーことじゃないわよ、この馬鹿っ!」


睨んだその瞳が、一瞬優しくなる。


「エミリオみたいな馬鹿は大嫌いよ…」


そう言って、彼女は初めて笑った。

出会ってから初めて…笑顔を見せてくれた。

ふいに笑ったからか、俺は鼓動が高鳴る。


人間は…こんなふうに笑うんだ。


嬉しくて俺も笑ったら、何故か睨まれてしまった。


その夜は二人で並んで、夜空に浮かぶ星を眺める。

最初は黙ったままだったけれど、ぽつりと自分の話を互いに語りはじめた。


「姉様達のことは好きよ。

でも…他の人間はきっとあたしのことが嫌いなの。

好きな事が出来ないと不機嫌になるあたしを、みんな嫌な目で見るから」


だから人間は大嫌い。

あたしを嫌いなら大嫌いになる。


アルクは仏頂面のまま、両拳を握る。強く誓うように。

でも俺には、強く見せているように見えた……本当は違うんだ。


「俺の事、助けてくれて本当にありがとう」


「別に。アンタは人間じゃないから…だから助けたの!

それだけなんだからね!」


そうか、と彼女の言葉でちょっとしゅんとなる。

人間じゃないから傍においてるって、最初に言ってたもんなぁ…。


「じゃあさ…」


俺が人間だったら、嫌いなの?


そう聞こうとして、言葉を切る。

気配を……感じた。


「ね、エミリオ、窓開けた?」


冷たい気配、見知った感覚。

思わず彼女の手を握る。


「俺から離れないで…


悪い奴が、来た……!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ