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B・R  作者: ルイ《wani》
3/20

B・R 2

ドアを開けたアルクの前を人影が通り過ぎる。

がたんと窓が開き、そこから飛び降りていった。

思わず呟くアルク。


「……バレット姉さんも相変わらずね」


ここは三階。だが飛び出した彼女には些細な障害だ。

下に生えている木の枝を伝って着地し…森へ駆け抜けていく。


「バレット様は?!」


「また逃げられたか…」




屋敷の話し声は遠くなっていく。

邪魔なドレスの裾を持ち、バレッドは森を走り抜けている。

目指すは彼女だけの場所…湖。


「…ん?」


いつもの湖畔に、人影。

見知らぬ者だが、彼女はそれと昨晩出会っていた。


「お転婆な女だな、三階から飛び降りたろ」


赤毛の男。

スーツを着てはいるが、胸元ははだけていてだらしない。

普通の女性なら身分も分からない彼を警戒するのだろうが…彼女は別格。


「勇敢なる女性と言ってほしいわね、赤毛くん」


物怖じせず、気取らず、それでいて品のある振る舞い。

彼女の仕草に、赤毛くんと呼ばれた男は苦笑した。


こんなに無防備なのに、不思議と魅力的だったのだ。


「俺の名前は赤毛じゃねぇ。

ルイスって呼べ…お前なら許す」


「あら嬉しい、光栄だわ。

ルイスね、よろしく」


湖畔で靴を脱ぎ、上等なドレスで草むらに腰を下ろす。

…しかもあぐらだ。

彼も同じように腰を下ろし、彼女の横に座る。


「昨日はありがとうな、おかげで見つからずにすんだ」


昨晩、ルイスがヤードに見つかり追われていた際、偶然そこに居合わせた彼女に助けてもらったのだ。


「ありがたいが…なんで助けたんだ?

言っちゃなんだが、怖くなかったのかよ」


手を引き、森の深くに入って湖畔で二人…息を潜めてやりすごした。暗闇で、男と。

普通の女性では…考えられない。

しかし彼女は軽く笑うだけ。


「だってあなた、あんまり悪そうに見えなかったもの。

さて……お喋りはここまで、んじゃ探しますか」


「指輪か?何色だったっけ」


「あなたと同じ、赤色よ」


昨晩…ここに逃げ込んだ際に彼女の大切な指輪がなくなってしまった。

明かりのある昼間に、今日の礼として一緒に探すと…ルイスは約束したのだ。


「……ありがと」


そう言って笑った彼女の顔が、ルイスは忘れられなかった。


だから少し…指輪に嫉妬していた。


「そんなに大事なのかよ、その指輪」


「大切な人にもらった物だから……なくしたくないのよ」


期待通りの憎らしい答え。

しかも彼女の頬は心なしか紅くなっている。


ルイスはそれ以上何も言わず、二人で指輪を探した。




陽が傾き始めたところで…


「なぁ、これか?」


ルイスの手に、紅い薔薇が彫られた指輪が握られていた。


「それよ!ありがとう!」


だが、ルイスは手を伸ばした彼女から指輪を遠ざけた。


「……何するのよ?」


にやり、と悪戯っぽく笑うルイス。

彼には屋敷を訪れた理由があった。

人間と心を通わすこと…最初はやる気がなかったが、彼女なら。


「また今晩、会いに来るなら指輪を返してやる」


「……それって、デートしたいの?」


紅い指輪を彼女の白い手に落とす。

二人は笑う。


まるで恋をしているように。

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