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B・R  作者: ルイ《wani》
15/20

B・R 14

エミリオとアルクはもう少年少女とは言えなくなった。

二人はいつも手を繋いで、一緒に森へ駈けていく。


それでも三年しか経っていない。


あの赤い指輪も結局見つからないまま…どうせあいつが持っていったのだろうけど。


「アルクもすっかり外が好きになったわよね」


姉様は柔らかく笑う。

ルイスの事は誰にも言ってない。

エミリオがヴァンパイアだと知って、驚きはしたけれど受け入れられたのはルイスがいたから。

何も知らないはずだけれど、姉様は何もかも知っているみたいに…優しかった。


「バレットの事だから、私がなにか言っても、ずっとまだまだ待つのでしょう?」


あたしがルイスを待っていることも姉様にはお見通し。

三年経っても縁談を断り続けるあたしの事を、姉様に心配させたくない。


でも、気持ちは止まらなかった。

誰も好きになれなかった。


「…悪魔に恋しちゃったのよね」


呟いて、ため息。

姉様のいる部屋でぼうっとするのが最近の日課になってきている。

夕方以降はチャールズがいるので、姉様を独り占めできるのはアフタヌーンティーの時だけだ。


前はアフタヌーンティーなんて関係なく、よく遊び回っていたけど。

今はそんな気持ちになれない。


「そろそろ風が冷たくなってきたわね。

バレットとエミリオくん、大丈夫かしら」


「ん。じゃあ、あたしが声かけてくる。

たぶん湖の方だろうから」


せめて気持ちが切り変わればと、久々に敷地の奥にある森へ向かうことにした。


木々を抜け、風で揺れる髪を押さえながら進む。

傾きだした陽を見上げて、ため息。


「…相変わらずだな、お前は」


振り向く。

見間違いじゃなかった。


「ルイス」


赤い髪は変わらない。

少し雰囲気が変わった気がする。どこか強くなったように。


「…少し痩せたか。

なぁ、指出せよ」


ぶっきらぼうな口調。

でも穏やかな瞳に、赤い髪が揺れる。

あたしは幻でも見てる気分だった。

駆け寄る。…醒めてしまう夢みたいだったから。


「なに…」


「いーから、指」


ぐいとあたしの手を掴む。

その暖かい体温で現実だと感じる。


ルイスのポケットから出てきたのは、あの赤い指輪だった。


「…やっぱり持ってたんだね」


「本当は、戻れないと思ってな」


あたしの指にはめると、少しゆるくなっていた。


「無いほうが、忘れないだろうと思ったんだ……」


照れ臭そうに目をそらす彼に、あたしは笑ってしまう。

そうするとますますルイスの顔は赤くなる。


「あー、クソッ…また出直す!」


「え、やだ…待って!」


思わずルイスの手を掴む。

また姿を消したら、次はいつ…?

あたしの不安な気持ちを察してか、少し真剣な顔をして頬に手を伸ばす。


――頬に軽く触れるだけの口づけ。


「次はちゃんと…さらいに来る。

その指輪は、その約束だから」


覚悟しとけよ、と笑うルイス。

その言葉に応えるように、あたしは赤い指輪に口づけた。


「…早くしなさいよ?」


羽ばたいて、出来たばかりの暗闇に消えていく。

指輪を眺めながら、あたしは軽く苦笑した。


「……これで二回目なんだから」

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