81.たらこは紫
単語解説
リギ…お米。
リギヤ…米を使った炒め料理。チャーハン。
恐る恐る、チャーハンをスプーンにすくう。
今まで美味しく食べられたんだから、今回も大丈夫だとは思う。
だけど、鮮やか過ぎる具にちょっと躊躇してしまう。
特にこの青みがかった紫色の粒粒が…。
「どうかされましたか?」
チャーハンに見入ってると、アニスさんが控えめに聞いてくる。
しまった。食べ物の相性を見るために、アニスさんもいるんだった。
私は異世界初日から1人でご飯を食べたことがない。
何があるかわからないからだ。
だから、私の事情を知ってて、いざと言う時、治療を行えるひとが常についている。
日によって、クルビスさんだったり、フェラリーデさんだったり、メルバさんだったりするけど、基本的にはアニスさんがついていてくれる。
わかっていたのに、毒々しいともいえる紫色に驚いて、アニスさんに心配をかけてしまった。
失敗した。迷惑かけないようにしたいのになあ。
「え。あ。大丈夫です。あんまり色鮮やかだから驚いちゃって…。」
誤魔化しても仕方ないので、正直に話す。
すると、アニスさんは納得したように頷いた。
「ああ。ミンクの卵ですね?ちょっと変わった紫色でしょう?
ミンクという魚の卵なんです。確か、親魚の方は昨日のお昼に食べられたと聞いています。」
あ。昨日の白身の?
へえ。あの魚の卵なんだ。じゃあ、大丈夫そうだな。
「ええ。食べました。あの魚の卵だったんですか。…何だか想像がつきません。」
しみじみを眺めてひと口。
もぐもぐもぐ。あ、たらこっぽい。
「美味しいです。」
「良かった。色が青みがかった紫であるほど味がいいんです。今日のはずいぶん良い卵ですね。」
へえ、卵の色味で味がわかるんだ。便利。
食べてみてわかったけど、黄緑は葉物野菜みたいで、スカイブルーな具はねぎみたい。
ピンクは…人参みたい?
具が細かすぎてちゃんと特定出来ないけど。
でも、要はたらこのチャーハンだ。
スパイスも程よく利いて美味しい。
「前にも似た料理をいただいたんですけど、具が違うと全然違いますね。」
「そうですね。リギヤは、家庭ごとに味があると言われるほどで、具の組み合わせは千差万別です。
具を細かくするので、お年を召した方や小さいお子さんにも食べやすく、大抵の食堂にメニューとして並んでいますね。」
はあ~。家庭ごとにかあ。
そんなところもチャーハンみたい。
リギヤね。
チャーハンはリギヤ。覚えとこう。