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8. 知らないものには近づかない

「後で長にもお話ししましょう。開発に加わって下さるはずです。見本にお借りしてもよろしいでしょうか?」



 え、ホントに開発までやるんですか?

 あったら便利だなぁくらいにしか考えてなかったんだけど。



 ま、いいか。便利なものが増えるなら、それに越したことないし。

 フェラリーデさんに頷いて、了解の意図を返す。



「ありがとうございます。後で布を外していただけますか?

 この布はこちらにはない染めですので。」



 フェラリーデさんが楽しそうに話す。

 まあ、布が珍しいから、他の髪留めをって話になったんですし?外すのには賛成します。



 だから、その笑顔の輝きを少し下げてもらえませんか?

 まぶし過ぎて、目がチカチカします。



 比喩じゃなくて、ホントに。

 あ、なんか目が回ってきた…。



「ハルカさんっ。」



 フェラリーデさんの声が遠くで聞こえる。

 気が…遠く…。








 *******************



「ここは…?」



「医務局の奥の部屋だよ。」



 声がする方を向くと、メルバさんが枕元の近くに座っていた。

 手にはものすごくゴツい本を持っている。大きさも厚みも、百貨辞典2冊分はあると思う。



 だから、メルバさんは優雅に膝を組んでその上で本を広げてるんだけど、本が大き過ぎて違和感があるんだよね。

 こっちの本って、どれもあの大きさなのかな?だとしたら、私、持てそうにないけど…。



「気分はどう?君はいきなり倒れたんだ。」



 メルバさんの静かな声が部屋に響く。

 昨日も思ったけど、いつもの話し方とは違う…エルフの長として、お医者様として話す時はこんな感じになるみたい。



「大丈夫です。…いきなり倒れたんですか?どうして…。」



 記憶が無いからそうなんだろうけど、理由がわからない。

 昨日は魔素酔いを起こしたんだよね?今回は?



「ハルカちゃん、ゴムに触ったでしょ?それが原因。」



「え…。ゴムに触ったから倒れたんですか?」



「うん。ハルカちゃんはまだ魔素の訓練してないからね。垂れ流し状態なんだよ。

 そんな状態でゴムを伸ばしたでしょ?

 だから、魔素を一気に持ってかれて、倒れたの。貧血みたいなものかな。」



 魔素が一気に減って、貧血みたいになったんですね。

 なんで倒れたのかはわかりました。でも、ゴムを触っただけでそんなになるものかな?



 すでに異世界のものにはいろいろ触ってるけど、こんな風になったことないし。

 危険なものなら、フェラリーデさんが渡すはずないしなぁ。



「こっちのゴムってね。魔素を流した量で伸縮率が変わるんだ。

 ディーくんに聞いたけど、ハルカちゃん、ゴムを軽々と引っ張ってたんだって?

 多分、魔素が一気にゴムに流れ込んでそうなったんだよ。

 それで魔素の量が低下して、倒れちゃったって訳。」



 あ〜。引っ張った。引っ張った。何回も。あれが原因ですか。

 やけに軽いなと思ったんだけど、あれ自分でやってたんだ。



 …そんなの知らなかったし。

 知らないって怖いなぁ。



「基礎的な訓練が終わるまで、ここのものに不用意に触らないようにしてね?

 ハルカちゃんの部屋には大丈夫なものしか置いてないけど、ここは医務局だからいろいろ置いてあるんだよ。」



 メルバさんの言葉に、ベッドの中でコクコク頷く。

 知らないものには近づきません。絶対に。

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