75.訓練2回目
「じゃあ、鍛錬始めようか~。ハルカちゃんは昨日やったやつを10回。出来るとこまででいいから~。ルシンは深呼吸の練習しながら一通り基礎練習から~。」
昨日やったやつ…深呼吸して、魔素のもやもやをお腹から手の平に移動させるやつですね?
よし。がんばろう。
「「はい。」」
ルシン君と返事をする。
ルシン君がごそごそと帯に手紙を挟んでたので、私もカードを帯にしっかり挟み込んだ。
落ちたら怖いけど、走り回るわけじゃないから大丈夫でしょ。
穴が開いてるからひもが通せるみたいだし、後でひもをもらって首から下げよう。
「じゃあ、始め~。」
メルバさんの言葉を合図に足を肩幅に開く。
肩の力を抜いて、深呼吸。
お腹の下、丹田に意識を持っていき、それを意識する。
相変わらずもやもやしてる。
熱かったり、冷たかったりする不思議な感じには慣れない。
呼吸を乱さないよう意識して、へそ、胸、肩、ひじ、手首に移動させていく。
手の平を上に向けて、水をすくうイメージで魔素を留まらせる。
そしたら、今度はゆっくり5つ数えてから逆の順で魔素を丹田に戻す。
そこまでしたら、もう1度、身体の力を抜いてリセットする。
これは昨日連続でやった時に身体にかかる負荷が増えた気がしたから。
最初は、そのままやってみた。
そしたら、その次からはもっと負荷を感じるようになって。
びっくりして普通の呼吸に戻したら、負荷が少なくなった。
どういう仕組みかは知らないけど、慣れない練習をしている時には、身体の負担が少ないのが良いと思ってこの方法にした。
間違いじゃなかったとわかったのは、クルビスさんに褒められたから。
…お姫さま抱っこの時に。
何で、耳元でささやく必要があったんだろう…。今でもよくわからない。
あれで腰が抜けそうになったのはクルビスさんには秘密だ。
まあそれで、クルビスさんが言うには、魔素移動は連続的にすればするほど負荷がかかるんだとか。
慣れないうちは身体への負担が大き過ぎてケガをすることがあるんだって。
だから、一呼吸置くぐらいでちょうどいいと言われた。
先に言ってて欲しかったけど、監督してたクルビスさんもメルバさんも問題があればその場で止める気だったそうだ。
先に言わなかったのは、魔素による負荷も身体で体感する必要があるため、誰でも一通りはさせることになってるらしい。
口で説明するのが難しいので、『実践あるのみ』なんだとか。
確かに感覚的過ぎて、説明に困るよね。
私の場合は、魔素なんて『もやもやの塊』としか言いようがないし。
そんなわけで、今日も無理せず慎重に訓練を行っている。
回数も昨日は8回が限界だったから、7回を目指してみよう。
いくら練習が必要でも、歩けないほどはやり過ぎだ。
おんぶや抱っこで運ばれるのはクルビスさんの時だけで充分です。