74.強力な後見
「ありがとうございます。」
「何の。早めに用意出来て良かった。」
ルシェリードさんにお礼を言うと、目を細められた。
たぶん、身分証明をこんなに早く用意してもらえたのは、他の何よりルシェリードさんが後見についてくれているからだろう。
ルシェリードさんってすごく偉い方みたいだし。
強力な後見に感謝しきりです。
それにしても…やっぱり、クルビスさんに似てるなあ。
笑った時は特に。
しかも、年上の余裕と言うか、ドラゴンゆえの長い年輪の一端が見えているからか、話していてものすごく安心感がある。
こういうのを王者の貫録っていうんだろうなあ。
「うんうん。ホント、早く出来て良かったね~。普通なら1ヶ月くらいかかるし~。
あ。ハルカちゃん。それ、後でディー君に使い方習うといいよ~。」
「あ。はい…。」
驚いて半端な返事しか口に出来ない。
い、一ヶ月…。そんなに?
慌ててクルビスを見ると、頷いている。
ジッとカードを見てるから、クルビスさんも驚いてるみたいだ。
(うわ~。何か、反則技使ったみたいな気分…。)
でも、もともと身元があやふやだし、正規の手順だともっと待たされたかもしれない。
ここはラッキーだったと思っておこう。
「それじゃあ、訓練始めようか~。あ。ルー君も見てく?」
「そうだな。少し見学させてもらうか。」
あ。訓練開始ですね。
ルシェリードさんも見学かあ。
緊張するけど頑張ろう。
「では、俺はこいつのエサと寝床を準備してきます。もう食えるだろう?」
「ピギィッ。」
エサと聞いて、ヒヨコもどきが激しく反応する。
そういえば、この子食べてなかったんだっけ。
元気になったみたいだし、たくさん食べないとね。
クルビスさんお仕事増やしてすみません。
「いってらっしゃい。」
忙しいでしょうけど、頑張って下さいね。
そんな気持ちで言ったら、クルビスさんは目を細めて出て行った。
え。反応それだけ?
まあ、嬉しそうだったからいいけど…。
クルビスさんのことはまだまだわからないことの方が多いなあ。
当たり前か。前から知ってるような感じもするけど、実際は会って数日だもんね。
「…順調のようだな。」
「…ね~。いいね~。若いって~。」
うん?何かルシェリードさんとメルバさんが話してる。
あ。そうだ。訓練始まるんだった。