73.身分証明ゲット
「知らぬ間にひ孫が出来たか。イシュリナに知らせなくてはな。」
ルシェリードさんが面白そうに言う。
え。ひ孫?
(ああ。クルビスさんが孫で、そのクルビスさんをこの子が親と思ってるから。)
疑問に思った瞬間、ヒヨコもどきを見て頭の中で答えが出る。
ルシェリードさんの茶目っ気が楽しくて、思わず笑ってしまう。
「あははっ。見に来そうだね~。あの子もセパのヒナを育ててたし。」
メルバさんも笑ってる。
でも、あの子って?さっきルシェリードさんが言ってた?
「…俺の祖母だ。セパのヒナを育てたというのは知らなかったが。」
クルビスさんが教えてくれる。
そっか。お祖母さま。
じゃあ、ルシリードさんの奥さんだ。
にしても、セパのヒナを育てたことがあるって…ヒナは珍しいんじゃあなかったっけ?
しつこく腕を上ってくるヒヨコもどきを見て首を傾げる。
「おお。そうだ。ルシン。お前に手紙を預かってきている。」
「僕にですか?」
「兄からだ。守備隊にいる。」
ルシン君が嬉しそうに受け取る。
よかったね。
「ハルカにはこれだ。」
え。まだあるんですか。
ヒヨコもどきだけだと思ってた。
ルシェリードさんが差し出した手には名刺サイズの木製のカードが乗っていた。
何だかキラキラしてる。
「ハルカの身元を証明するものだ。術式でこちらでの経歴が記されている。」
「身元を…。」
身分証明書ですか。
このキラキラって術式だったんだ。
今までで1番異世界アイテムぽい。
でも、説明からするとICチップ的なやつかな?
「ピギッ。」
受け取ると、ヒヨコもどきがつつこうとする。
こらこら。
「やめろ。」
「プギィイッ。」
クルビスさんがヒヨコもどきを引き受けてくれる。
ありがとうございます。
「随分早かったね~。もっとかかるかと思ってたけど~?」
メルバさんがルシェリードさんに聞く。
確かに。普通はもっとかかるんじゃないかな。
「中央も手が足りてなくてな。ビーガンが事務方に駆り出されたので、先にやってもらった。」
「ああ。それで~。ちょうど良かったね~。」
伝手があったってことかな?
何にしろ、今の状況ではありがたい。
異世界での身分証明ゲットだ。
これで生活する上で最も必要なものが手に入った。