表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/137

7. ゴムは蜜

「えっと、こちらにもゴムってあるんですか?」



「ええ…。ただ、同じ物かわかりませんね。実物を見て頂くほうが早いでしょう。」



 あ、そうですね。

 名前が同じっていうだけかもしれませんし。



 私が頷くと、フェラリーデさんは立ち上がって壁際の戸棚に向かった。

 目的の物はすぐに見つかったらしく、手に何かを持っている。あれがゴムかな?



「こちらがゴムです。ハルカさんが(おっしゃ)るゴムと似ていますか?」



 差し出された物は、ツヤがあってスケルトンブルーの色をしたひもだった。

 …触ってみないとわかんないかな。



「あの、触ってみても良いですか?」



「ええ。もちろん。」



 私のお願いに、フェラリーデさんが快く返事をしてくれる。

 それを聞いて、胸に手を当てて軽く会釈し、ブルーのひもを手にとってみる。



 手触りはスベスベしてる。私の知ってるゴム特有の抵抗は感じられない。

 力を入れずに指先だけでひもを持ってみる。そのままひもを引き抜くと、ほとんど抵抗なくひもは引き抜かれた。



 …すごい(なめ)らか。

 絹のひもだったらこんな感じなのかな?



「いかがですか?」



「ずいぶん滑らかですね。スベスベしてます。」



「ええ。カジュという花の蜜から作ります。本来は無色透明なのですが、これは染料で染めてありますね。」



 蜜?これ花の蜜から出来てるんですか?

 へぇ〜。なんか高そう。



 確か、地球のゴムは木の樹液だっけ?

 樹液と花の蜜かぁ。似てるようで、えらい違いだなぁ。



 でも、花の蜜なら無色透明でも納得。

 なら、伸縮性は?私が1番知りたいのもそこ。



 引っ張ってみると、ミニョ〜んと効果音がつきそうな軽さでブルーのひもが勢いよく伸びる。

 驚いて力を抜くと、ひもはすぐに元に戻った。



 ああ。ビックリした。

 伸びるのは伸びるけど、なんて柔らかいんだろう。



(地球のゴムとは似てるようで違うなぁ。これが異世界のゴムかぁ。)



 感心しながら何度も伸び縮みさせてると、ふと、ある事が気になった。



「あの、これって結ぶことは出来るんでしょうか?」



「ええ。可能です。ただ、ハルカさんが仰ったように、表面が非常に滑らかなものですからあまり長くは持ちませんが。」



 フェラリーデさんが興味深そうにこちらの質問に答えてくれる。

 成る程ねぇ。そりゃこれだけ滑らかならそうか。



「そうですか…。伸縮性があるのは故郷のゴムに似てるんですが、表面は故郷のゴムの方がはるかに抵抗力があります。」



 私は自分の髪をまとめてるシュシュを外す。

 それを見せながら、フェラリーデさんに説明を続ける。



「この髪飾りの中に輪っかに結んだゴムが入ってます。ただし、これは髪留め用なのでゴムを布でくるんでますが。」



 シュシュの中に入っている髪ゴムを出しながら説明する。

 結び目のところを見せれば、端っこから中の白いゴムが見えてるから、わかりやすいと思う。



「…成る程。ゴムの周りを布でくるんでしまえば、布で止まりやすくなりますね。」



 フェラリーデさんが真剣な顔で髪ゴムを見ている。

 差し出し続けるのもしんどくなってきたので、フェラリーデさんに手にとって観察してもらうことにした。



「それで、伸び縮みするところは似てるので、結ぶことが出来れば、端切れを使ってそのシュシュのような髪飾りも作れますし、そのゴム自体が良い髪留めになるなと思ったんですが…難しそうですね。」



 私がため息と共に考えてたことを言うと、フェラリーデさんが顔を上げた。



「いいえ。これならすぐにでも出来るでしょう。朝の支度が楽になります。」



 ホントですか?

 というか、フェラリーデさん。最後のが本音じゃありませんか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=279034186&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ