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別話 気になるウワサ(クルビス視点)

「…で、これが結構いけるんだよ。」



「トラットにそんな使い道があったとは。驚きです。」



 キィの話にキーファが相槌を打つ。

 抹茶ソースの話に始まって、今はあの黄色い菓子の話になっている。



 どの話もキーファの興味を誘ったようで、キィの話に目を輝かせていた。

 こういう所は昔のままだな。



「まあ、材料が入り次第みたいだったから、メニューに出るのはそんなに遅くはなんねえと思うぜ。」



「楽しみです。」



 そこで言葉を切って、キィが息を吐き出す。

 キーファもそれを見て居住まいを正す。



「…んで、(わり)いんだが、もうチョイ、中央にいることになるわ。」



「…動きましたか?」



「ああ。さっきクルビスとも話してたけどな、カメレオンの一族とイグアナの一族におかしい動きがあった。」



 2つの一族名を聞いて、キーファが顔を固くする。

 どちらもシーリード族の中では珍しく、家系で長の地位を継承する一族だ。



 親から子へと継承する特殊能力を持つが(ゆえ)のことだが、そのために血統至上思想が強く、身内同士の婚姻も多い。

 身内のごたごたが今回の件に絡んでる可能性も大いにある。



「どちらも長の交代がウワサされてます。面倒ですね…。」



「ああ。だから、あと数日は応援って形で向こうで情報集めてみるぜ。ちょうど、向こうの術士隊も被害がデカかったから、手は足りてねえしな。」



「そんなに被害があったのか?」



 それは初耳だ。

 初日に中央に行けたのは北だけだったとは聞いたが。



「おお。半分がつぶれて、今入院中だ。中央は『たまたま』陽球の調子が悪くて、休眠期明けの調整も兼ねて、大半を検品に出してたんだと。」



「それが裏目に出たんですね…。」



 キィの説明をキーファが受ける。

 その陽球の無い時に気温が下がったのか…。タイミングが悪すぎたな。



「ああ。ただなあ。それについて変なウワサが流れてんだよ。」



「ウワサ?」



 俺が聞くと、キィが顔をしかめて言いよどむ。

 キィにしては珍しいな。いつもハッキリさせてから話すのに。



「ああ。陽球の管理倉庫から夜な夜な奇妙な音が聞こえるって、まあ、要するに怪談だな。」



 普段なら気にもしない他愛無いウワサだが、今回の陽球の検品のことを考えると関連があるかもしれない。

 しかし、おかしいな。そんなウワサが流れているのに管理してる連中は何してるんだ?



「そんなウワサがあるのに、何も調査はなされていないのですか?管理責任者はどなたんです?」



 キーファが声に険をにじませて言う。

 朝の調整には誰よりも気を遣ってるからな。



「そこなんだよなあ。ウワサは流れてるのに、それ以上の情報が流れてこねえんだよ。どうも、警備のルートからも微妙に外れてるっぽいしなあ。」



「ありえんだろう…。」



 キィの話に驚いて言うと、キィが肩をすくめた。

 ということは、キィにもそれ以上の情報が入ってこないってことか。ますますありえない。



 陽球は微調整が難しく、作れる技術者も調整できる技術者も少ない。

 そのため、備品の中でも高級品という取扱いだ。



 盗まれることもあるため、管理にも警備にも殊の外気を遣うのが普通だ。

 それが警備のルートからも外れている?おかしいだろう。



「作為を感じますね…。」



「ああ。まあ、一昨日の異常気象は、長様曰く偶然の産物だそうだから、陽球が検品に出てたのも、ここまで被害がデカくなっちまったのも運が悪かったんだとは思う。

 だが、警備のルートから外れてるってのは看過できねえ。仕入れたばかりの情報だから、どこまでホントかわかんねえけどな。

 少なくとも、今の現状は確認してから戻ることになる。キーファ、しばらく隊士が半分になるが、留守は任せるぜ。」



「了解しました。」



 キィの命令にキーファが礼を取って受ける。

 しばらく術士隊は半分か…。何事も無ければいいがな。

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