59.美形の涙は凶器です
「あらら~。ディー君、ゆっくり食べないと危ないよ~?」
「食べる速度が落ちねえな。」
メルバさんが困った顔して言えば、キィさんが妙に感心した声で言う。
いや。見るとこそこじゃないです。キィさん。
「口に合ったんだな。この味はリードの好みだ。」
ルドさん、フェラリーデさんのお好みも把握されてるんですか。
さすが料理長。
「リードは冷たいものを食べるとすぐに頭が痛くなるんだ。それでも食べ続けてるということは、気に入ったんだな。ハルカは気にしなくて良い。」
クルビスさん説明ありがとうございます。
やっぱり頭キーンでしたか。でも、あんまり続けると危ないですよ?
「ふう。ごちそうさまでした。」
手で涙を拭う仕草も素敵です。
まるで1枚の絵画のよう。
美形だ美形だと思ってたけど、フェラリーデさんって真正の美形だ。
何をやっても崩れない。眼福です。
「大丈夫~?無理はだめだよ~?」
「つい。手が止まらなくて。ハルカさん。とても美味しかったです。」
真の美形が私に向かって、泣き笑いの表情でお礼。
これ誰得だろ?やっぱり私かな?ごちそうさまです。
「気に入っていただけて良かったです。あ、そこの黄色いのも試食してみて下さいね。」
何とか返事を返して、視線をスイートポテトに集める。
これ以上フェラリーデさんに見つめられたら、息が止まって倒れてた。絶対。
美形怖い。
涙なんて凶器じゃないですか。
「おお。これか。どれ、いただき。」
「綺麗ですね。」
「美味しそうだな。」
スイートポテトが目を引いたらしく、皆さんそれぞれ手に取る。
キィさんはポイッと一口で、フェラリーデさんはお行儀よく半分に割って、クルビスさんもパクリと一口だった。
それぞれ個性の出る食べ方だ。
この違いは性格もありそうだけど、1番は口の作りが違うからだろうなあ。
カエルさんなキィさんは口が大きいし、クルビスさんは頬っぺたがない、フェラリーデさんは3人の中では一番口が小さくて頬っぺたもあるもんね。
「んん。これも美味い。口ん中で溶けるな。」
キィさんはそう言って、もう1つ口に放り込んだ。
素早くてほとんど見えなかったけど、あー兄ちゃんのつまみ食いに慣れた私にはわかった。
間違いない。
すごい早業。
「少し甘いがとても美味しい。」
ここでクルビスさんの感想。甘いですか。
クルビスさんは甘すぎるのは苦手なのかな。覚えとこう。
「…美味しいです。」
こちらはうっとりとした表情でフェラリーデさんが。ゴホッ。
泣き顔も凶器だったけど、うっとり顔も威力がものすごいです。
「…ありがとうございます。」
内心吐血しつつ、表面上はにこやかに返事をする。
こういう時は別のことを考えろ。頑張れ。私。
「えっと、かき氷とそちらの黄色いの。2つを比べて甘みはいかがでしたでしょうか?もっと甘い方がいいでしょうか?」
気力でフェラリーデさんから視線を逸らし、お三方に意見を聞く。
もっと甘くするかどうかで話は止まってたんだよね。