58.隊長さん達の試食
「もうちょっと甘めに作りなおしましょうか?抹茶ソースならすぐに作れますけど。」
「…いや。とりあえずこのままで隊長たちに味を見てもらったらどうだ?
さっきのは1番暑い時期の話だし、今ならこっちの方が受けると思う。
それに、隊士たちに向く味と、受け入れられやすい味は違うしな。」
そういや眠れないくらい暑い時期とかあるんだっけ。
そんなに暑かったら味も濃いめの方がいいってことなのかな。
「そうですわね。わたくしはこれぐらいの方がいいですわ。
そろそろ3刻ですし、休憩がてら試食して頂いてはどうでしょう?
キィ様もしびれを切らしてる頃でしょうし。」
ルドさんの意見にリビーさんが賛成する。
メルバさんはにこにこして頷いている。賛成なんだな。
う~ん。確かに、この暑い気候で和風の味付けがどこまで受けるのか…。
確かめるにはデータが必要だよね。自分の知ってる味付けで済むならその方がいいし。
1人より2人、6人いればさらにいいかな。
よし。とりあえず、これで試食してもらおうか。
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「美味いっ。」
「美味しいです。」
「美味しい。」
以上、キィさん、フェラリーデさん、クルビスさんのかき氷を食べた第一声でした。
良かった。受けたみたいだ。
「いや~。すげえな。抹茶だっけ?
前にリードに飲ませてもらった時は、香りはいいんだが、苦くて仕方なかったんだよな。
これくらいならいけるわ。」
やっぱ苦いんだな。
クルビスさんはどうだろう?
「俺は抹茶に慣れてるからあまり参考にはならないと思うが、甘過ぎなくて食べやすい。
…これで感想になるだろうか?」
「ええ。充分です。」
クルビスさんは苦笑しながら感想を言ってくれた。
私はこくこく頷いて何とか返事を返したけど、頭では今聞いた情報を整理するのに忙しかった。
慣れてる?抹茶を良く飲むんですか?
ルドさんが、抹茶ミルクでようやく飲めたのに?
え。イメージと違う。
お魚といい、クルビスさん和食系お好きですか?
「抹茶を良く飲まれるんですか?」
「母が深緑の森の一族だから、実家では家族で良く飲むんだ。父はいまだに慣れないみたいだが。」
ああ。そっか。
クルビスさんのお母様って、深緑の森の一族、つまりエルフだったっけ。
だから、抹茶が深緑の森の一族限定で広まってても、クルビスさんには抹茶にふれる機会があったんだ。
そこまで考えて、今日のお昼ご飯のことを思い出す。
(魚介もお母様がお好きだって話だったし、もしかしてこっちのエルフって和食系が好みとか?)
そう思ってフェラリーデさんを見てギョッとする。
え。何で?
(何でフェラリーデさん泣いてるのっ?)
キィさんと話してたはずのフェラリーデさんは、眉間を抑えて泣きながらも、かき氷を食べていた。
何で?どうして?
あ、もしかして『頭キーン』になりました?
違うかな。