56.試食タイム
「じゃあ、さっそくかき氷作ってみようよ~。もういいでしょ~?」
メルバさんがこぶしを上下に振ってダダを捏ねる。
いい年の男性が、しかもエルフの長が、ダダ捏ねるのが似合うってどうなんだろう。
違和感ないんだよねえ。
目もあんなに輝かせて、そんなに宇治金時が楽しみなのかな。
なんだか微笑ましい感じまでする。
リビーさんもルドさんも笑ってるし。
違和感ないのは、物事を純粋に楽しもうとしてて、それが周りにもわかるからだろうな。
そういうところは、本当に子供みたいなひとだ。
お医者さんしてる時とか、長として話すときはビシッと決めるのにね。
不思議なひとだなあ。
(あー兄ちゃんはメルバさんとどんな風に話してたんだろう。)
今さらながら気になる。
いつか聞けたらいいな。
「そうですね。ソースもだいぶ冷めたみたいですし。じゃあ、つくりましょうか。」
ソースの入った鍋からすでに湯気が出てないことは確認してたけど、もう一度確かめてかき氷を作ることにする。
ルドさんが冷凍庫らしき場所から氷を出してペンギンさんにセットして、後は自動でお任せ。
ギュルルルッガリガリガリッ
回転と氷を削る音が厨房内に響く。
音がすごいな。自動だからかな。
「できた。それでどうするんだ?」
ルドさんが手際よく小さな器に4つ、かき氷の山を作って私に聞いてくる。
早いですね。さすが自動。
「それじゃあ、ソースをかけていきますね。最初は少な目にしときましょう。」
ルドさんからお玉を借りて、少しずつ抹茶ソースをかけていく。
そしたら、今度は餡子のトッピングです。
スプーンで丸めてのせて…よし。
今回は粒あん、こしあん両方のせます。
「餡子をのせて…一応、これで出来上がりです。」
「わあ~。」
「綺麗ですわ。」
「花が咲いたみたいだな。」
出来たことを告げると、メルバさんリビーさんルドさんの順で歓声が出た。
青緑のかき氷山の裾にピンクと紫の餡子が花畑みたいに交互にのってる。
見た目は合格かな。
後は味。
「とりあえず、食べてみましょう。試作品第1号ですし、そこから改良していきます。ある程度完成してから隊長さん達には試食してもらうつもりです。」
上手く出来たら食べてもらうって約束だったし、一緒に食べたら味が合わない場合もあるだろうし。
クルビスさんに食べてもらうなら「美味しい」って言って欲しいもんね。
メルバさん達は頷いて、ルドさんが配ったスプーンでかき氷をすくう。
上手く出来てるかなあ。
シャクッ
スプーンをかき氷に突き立てて口に運ぶ。
口の中に冷たい氷の感触と抹茶ソースの甘みが広がった。
作りたてだから香りはあるけど、抹茶の量が少ないから苦味はほとんどないかな。
かき氷用のソースだから甘いけど、それでも砂糖を溶かしただけのソースよりあっさり味に出来たと思う。
「ん~。甘~い~。でもしつこくないね~。お茶だからかな~。」
「確かに。この甘さの割にはあっさりしてますわね。」
「これくらいならいけそうだな。抹茶の苦味が砂糖の甘さを抑えている。」
よしよし。好評みたいだ。
抹茶少なめにしてよかった。