54.抹茶は青緑
上手く出来てるといいなあ。
あ。せっかく餡子作ったんだし、餡子が冷める前に抹茶ソース作りたいなあ。
でもあるかなあ。
まあ、せっかくメルバさんがいるんだし、聞いてみようか。
「メルバさん。こちらに抹茶ってありますか?」
「あるよ~。深緑の森の一族限定で広まってるけどね~。これ~。」
そういってメルバさんが差し出してくれたのは、木の皮でつくった茶筒だった。
あるんだ。どこに持ってたんだろう…。
茶筒は工芸品で見たことあるなあ。
これも元ネタあー兄ちゃんかなあ。
何か塗ってあって、綺麗な光沢をはなってる。
皮の模様が桜の木みたいだ。
礼をして茶筒を受け取り、中を開けてみる。
中フタも木で出来てる。
あ。ぴったりな大きさのフタだ。抵抗なく開けれた。
いい作りだなあ。実家はこういう茶筒なんだよね。
で、肝心の中身は…。
…。
確かにお茶の粉末は入ってた。
深い青緑色だったけど。
うん。こっちの抹茶だもんね。
この微妙に色が違う感じにも慣れたよ。緑なだけマシかな。
香りは抹茶だ。
濃いお茶のいい香り。
「いい香りですね。」
「引き立てだからね〜。今朝粉にしたばっかりだよ〜。」
引き立てですか。
贅沢だなあ。
「ホント。濃いお茶の香りがこちらまで届きますわ。」
リビーさんが興味深そうに茶筒を見ている。
エルフ限定だもんね。珍しいんだろうな。
「『抹茶』か。前に『メル抹茶』は飲んだことがあるが、元はこんなに香りが強いんだな。」
ルドさんも興味深そうに茶筒を見ている。
ルドさんって本当に研究熱心なんだなあ。
一部の種族でしか飲まれてない飲み物まで知ってるなんて。
だから、トップクラスの料理人なんだろうな。
よし。これから、メルバさんがいないときはルドさんに食材のことを聞いてみよう。
豆の時みたいにこちらの希望を伝えたら、似た感じの食材を教えてくれそうだ。
「ルド君はさすがだね〜。これ外ではほとんど出回ってないでしょ〜?」
「知り合いの深緑の森の一族に頼んだんです。
最初はやめた方がいいと言われました。」
メルバさんも関心してるけど、ルドさんの返事は意外なものだった。
止められた?抹茶を?
「あ〜。お茶そのものだから苦いもんね〜。
それでメルで割ったんだ〜。」
「はい。蜜も入れてもらって、何とか飲めました。そのまま飲むのはシーリード族には厳しいでしょうね。」
ああ。抹茶だけだと苦いもんね。
そっか〜。クルビスさん達には厳しいかあ。
「甘いソースにするつもりなんですけど、それも無理でしょうか。」
「甘くするならいけるんじゃない〜?『宇治金時』だっけ?あれ作るんだよね〜?」
「はい。少し苦味のある甘いソースで、餡子と一緒にかき氷にのせます。」
どう伝えたらいいのか悩みながら説明すると、リビーさんはふむふむと頷き、ルドさんは茶筒を見ながら考えてた。
「とりあえず作らない〜?甘いソースなんだし〜。で、かき氷にのっけてさ〜。まずは試してみようよ〜。」
「確かに。料理は完成するまでわからない。途中で考えても仕方ないな。」
「わたくしも食べてみたいですわ。」
メルバさん、ルドさん、リビーさんに後押しされて、抹茶ソースを作ってみることになった。
問題は色だけど、餡子と合うかなあ。
もしかしたら、あのピンクの餡には色が合うかもしれない。
思いついて餡の隣に茶筒を置くと、違和感は少なかった。
お茶の色が黒っぽいくらい濃いめだから落ち着きがあるんだよね。
ベリーピンクがそこに並ぶと花が咲いたみたいで、お互いの色が引き立ってる。
いけそうだなあ。
よし。抹茶ソース作ってみようか。