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51.お菓子作り開始

「う~ん。」



 うなりながら目の前の煮豆を口に入れる。

 色は近いんだけど、食感が固いなあ。もっとさらっと崩れないかな?



「違ったか。こっちはどうだ?」



 料理長のルドさんが次の豆を差し出してくれる。

 今度はベリーピンクな豆だ。大きさは南京豆に似てるかな?



 色に多少ビビりつつも、その豆を口に入れる。

 ほろりと崩れる食感、(なめ)らかな舌触り…いけるかも。



「これならいけるかもしれません。」



「よし。じゃあ、こいつらを砂糖で煮てみるか。」



 上手く甘みがついてくれるといいけど。

 私は鍋の中の豆を見ながら願った。







 *******************



 いきなり始まってて驚かれたでしょうか?

 私は現在、餡子作りに勤しんでおります。



 そもそも、何で料理長のルドさんがいるかというと、迎えに来たメルバさん達と下に降りたら、厨房の中に背の高い水色のトカゲさんが待ち構えていました。

 メルバさんに聞けば料理長のルドさんだと紹介され、人目がないのを確認してその場でお互いに自己紹介。



 ルドさんはスイーツの技術も習得していらっしゃる1級の調理師らしく、メルバさんから珍しいスイーツを作ると聞いて、それなら厨房を貸す代わりに是非とも作り方を知りたいということで待ち構えてたそうです。



 最初は何で私に聞くのかわからず、メルバさんに聞いてみました。

 すると、ルドさんが1級という、最高クラスの調理師であることを教えてもらい、さらに私のご飯を作ってくれてることを教えてもらいました。



「ルド君にはハルカちゃんのことはある程度話してあるんだよ~。

 特に遠くから来たっていうのとこっちの食材に馴染みがないっていうのをね~。 ほら、ハルカちゃんとルシンのご飯作ってもらってるから~。」



 この方があの絶品料理を作って下さってるんですか。

 いつも美味しいご飯をありがとうございます。



 お礼を言って胸に手を当てると、ルドさんは「口にあったようで良かった。」と嬉しそうに目を細められて、「味が合わなかったらすぐに言ってくれ。」とも言って下さいました。

 ありがとうございます。美味しい食事は生きる糧です。



「僕も食材すべてを知ってるわけじゃないから、プロにいてもらった方がいいかな~て思ったんだけど、作り方を知ってるのは僕じゃないからね~。

 このスイーツ作りの見学に関しては僕に決定権は無いんだよ~。だから、ハルカちゃんに決めてもらおうと思って~。」



 例の知識の保護とかいうやつですね?

 それでルドさんが待ち構えていたのかと納得して、それなら『こちらの食材に詳しいプロがいた方がいいよね』と早速許可を出すことにしました。



 その際、私の口からも、私が遠い地域の出身でこちらの食材に詳しくないことを伝え、私の欲しい食材について一緒に探して欲しいとお願いしました。

 こっちの世界では私って子供より無知だもんね。



 で、現在、餡子作りのために豆の選別に入っているというわけです。



 これがまあ大変で。

 まず、メルバさんのリクエストで餡子を作ることになったので、ルドさんに豆を見せてもらったんだけど、種類がものすごく多かった。



 お皿に少量ずつ取って並べてもらったんだけど、たぶん50種類以上はあっただろうなあ。

 厨房の大きなテーブル一杯に豆のお皿が並んでいくのを呆然と見てた。



 メルバさん曰く、豆はここの気候に適してるとかで数多くの種類があるらしい。

 さらに驚いたのは、今回見せてもらった豆は市場に出回ってるうちの半分くらいなんだとか。



 多くの隊士の食事を作るのに時間のかかる食材は使えないため、比較的短時間で調理出来るものを選んでいるそうな。

 これで半分なんだ。内心ため息が出る。



(もしかして、他の材料も種類がいっぱいあるとか?…やめよう。やる気がそがれる。)



 いつまでも脱力してられないので、まずは食感の似た豆を探すことにした。

 味も大事だけど、種類も多いし、これ全部を今日中に試食するのは無理そうだったので条件を絞った方が良さそうだったから。



 で、味以外に思いついたのが食感。

 餡子を食べた時の滑らかな食感は譲れません。



 粒あんもこしあんも作りたいから、食感は重要です。

 特に、粒あんの粒の食感が引き立つにはつぶした時に滑らかさがないといけない。



 幸いルドさんに欲しい豆の食感を伝えたところ、候補を10種類ほどに絞ってもらえた。

 今はそれを煮たり炒ったりして食べれるようにしてもらって試食して、さらに数種類に絞ったところ。



 10種類ほどなら全部甘く煮てから試食しても良かったんだけど、ここでは砂糖は高級らしくあまり多くは置いてないとのことだったので、先に食感を試すことにしました。



「しまった~。こっちでは砂糖ってそこまで流通してないんだったね~。明日にでも里から取り寄せとくよ~。」



 隣でメルバさんが額に手を当てて盛大なため息をついていた。

 フェラリーデさんも「砂糖を使うのですか。」と驚いていたので、この街では砂糖を使うのは一般的ではないみたい。



「まあ、花の蜜のほうが安価だからな。甘みをつけるなら蜜で充分だし。」



 ルドさんの説明に納得する。

 そっか。花の蜜のほうが安いのか。



 そりゃ砂糖はそこまで必要とされないよね。

 甘味の調味料の一種って扱いなんだろうな。

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