46.習ったことは実践しましょう
「あの。お話し中申し訳ないのですが、少しよろしいでしょうか?」
フェラリーデさんが恐る恐るといった感じで話しかけてくる。
何だかすごく遠慮してるって感じだ。
「うん?大丈夫だよ~。」
メルバさんが答えるとホッとしたようにフェラリーデさんが笑った。
美形の弱った微笑みも素敵です。
「先程の「へその下」についてなのですが、それはへそのすぐ下の部分なのでしょうか?」
へその下?…丹田のことですか?
何でそんな聞き方するんだろう。
そんな言い方したっけ?
…言い方?
(そういえば、言葉じゃなくて意味が伝わってるんだって習ったっけ。)
今日の授業を思い出す。
フェラリーデさんが今みたいに目の前にいて説明してくれたんだよね。
私の認識がそのまま伝わってるんだなあ。
丹田はおへその下としかいいようがないし。そこまで詳しくないし。
それで確か、音だけならそのまま伝わるんだっけ。
早速実践することになるとは。
「えっと、それは「丹田」といいまして、へそのすぐ下のこぶし1つ分くらいの範囲ですね。
兄にはそう教わりました。」
自分でこぶしを作っておへその下に当てて説明する。
見せて説明した方が早いし。
「ああ。軸の中心の辺りですね。それならわかります。」
フェラリーデさんが納得したように頷いている。
わかってもらえたみたい。よかった。
「「たんでん」かあ。教えるには固有の名称があってもいいかもなあ。」
「ああ。個体任せの鍛錬では、基本の習得に時間がかかり過ぎる。」
「だなあ。もうチョイその辺詰めるか。」
クルビスさんとキィさんが頷きながら話している。
深呼吸や丹田で何だか話が大きくなってるような。
まあ、その辺はクルビスさん達のお仕事だよね。
お任せします。…あれ?
「ルシン君?」
メルバさんと私の横にフェラリーデさん、少し離れてクルビスさんとキィさん。
で、さらに少し離れてルシン君がいたんだけど、何だか目をつむってジッとしてる。
「ルシン~?何してるの~?」
「え。あ。お姉さんの話を聞いて、深呼吸っていうのをやってみようと思って。」
「おお。そりゃあいい。鍛錬は実践するのが1番だからな。」
メルバさんの質問にルシン君が目を開けて答えると、キィさんが嬉しそうに勧める。
クルビスさんも頷いてるから、同じこと思ってるみたい。
実践が1番かあ。確かにそうかも。
さっき、初めて音だけで伝えるっていうのをやってみたけど、意識しないと難しい感じだった。
練習がいるなあ。
しばらくは話すときに気を付けなきゃ。