42.訓練…開始?
「長。それは少し早いのでは。」
フェラリーデさんが静かにメルバさんに言う。
確かに初心者がいきなり…術士だっけ?…要はプロ向けのコースを選んだら、止めるよねぇ。
「そう?ルシンがもうその練習始めてるし、話を聞いた感じだといけると思うんだよね~。」
か、軽い。大丈夫なのかな。不安。
上がったテンションが一気に落ちていく。
「まあ、今日はせっかくクルビス君に来てもらったんだし、どこまで出来るか確かめてみようよ~。」
え?クルビスさんはいる予定だったんですか?
思わず見ると、クルビスさんが微笑んで頷いてくれた。
「では、私も見学してよろしいですか?」
「あ、俺も俺も。」
フェラリーデさんとキィさんが手を挙げて見学希望を述べる。
…いいんですか?隊長ってトップですよね?
「あの、皆さんお忙しいんじゃないんですか?」
思わず聞いてしまう。
いや。部外者がどうこう言うのって僭越かもしれないけど、正直、ここのトップ3に見守られての訓練って嫌だ。
「大丈夫ですよ。私はもともと見学させていただく予定でしたので、リリィには伝えてありますし。」
「俺もキーファがいれば大丈夫だしな。長がせっかくいらっしゃるのに、ここで帰るなんてもったいない。」
「俺はハルカの魔素の調整役だ。この時間は開けてあるから心配いらない。」
口々に大丈夫な理由が返ってくる。
そうですか。大丈夫ならいいんです。…緊張するなぁ。
「そうなんですか。」
とりあえず、納得したことを伝える。
クルビスさんが目を細め、フェラリーデさんが麗しく微笑み、そしてキィ隊長は目を笑みの形にして楽しそうにしていた。
カエルさんはこっちではヒト型みたいに笑うんだなぁ。
細めるだけじゃなくて、ちょっと弓型になってる。
種族が違うっていうことをちょっと感じつつ、これからやることに不安を感じる。
初めてのことっていうのもあるけど、私、見られてると緊張するんだよね。
でも、クルビスさんと会えたのは素直に嬉しい。
まあ、良くないことがあったら良いこともあるもんだよね。良いことだけ考えてようか。
「じゃあ、ハルカちゃんこっちに来てくれる?」
「はい?」
メルバさんに呼ばれて近づいて行く。
クルビスさん以外は少し距離を取った。
「目を閉じて、おへその下あたりに何かあるのがわかる?」
いきなりですか。
まあ、いいですけどね。あー兄ちゃんで慣れてるし。
おへその下、おへその下…あれ?
なんか熱い…。冷たい?
(何だろう。何かある。…もやもやっとしたものが。)
「あった?」
「はい。熱くて、冷たくて、もやもやするものが…。」
何か意識したらすごい気になるんだけど。
私の身体、どうなってんの?




