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40.キィ隊長はカエルさん

 何が驚いたって、クルビスさんと共にいたのが大きなヒト型のカエルさんだったから。

 もう一度言うけど、ヒト型のカエルさん。他に表現のしようがない。



 クルビスさんみたいに人の顔に近い感じだから、頭も顎も小さめだ。

 でも、つるつるした緑色の皮膚にプリティな黒の大きな目、何でも頬張れそうな大きなお口はカエルにしか見えない。



(青ガエル?)



 真っ先に浮かんだのが、遠い昔に見たかわいらしいの緑のカエルだった。最近見てないなぁ。

 爬虫類系の種族がメインだと思ってたけど、両生類系もいたんだ。



「これはこれは…。お揃いでしたか。」



「さっき帰ってきたんでな。ついでに集まった。…そちらが例のお嬢さんかい?」



 カエルさんが私を見てフェラリーデさんに聞いている。

 さっきまでのざわついた感じは無くなって、今は静かだ。



(この感じは…あいさつした方がいいかな?)



「ええ。ハルカさん。彼はキィランリース。この北の守備隊の術士部隊の隊長です。」



 隊長さんっ。

 そういえば、クルビスさんに隊長も副隊長も3人いるって聞いてたっけ。



 じゃあ、このひとが最後のひとり。

 術士部隊かあ。魔法部隊みたいなもんだよね。たしか。



「キィ。彼女はサトミ・ハルカさん。ルシェリード様が保護された方です。」



「よろしく。お嬢さん。俺はスタグノ族のキィランリース。長いからキィって呼んでくれ。」



「里見遥加と申します。里見が家族名で遥加が名前です。どうぞハルカと呼んで下さい。よろしくお願いします。」



 種族名を名乗っていいのかわからなかったから、名前だけ名乗って挨拶する。

 フェラリーデさんを見ると頷いていたから、それでよかったみたい。



 ヒト嫌いのエルフもいるんだもんね。

 うかつに種族名は名乗らない方がよさそう。



「うんうん。いいお嬢さんじゃねぇか。おお、そうだ。ハルカさん、後ろにいるのが俺の副官のキーファだ。おい、キーファっ。」



「そんなに大きな声で言わなくても聞こえてますよ。」



 キィさんの後ろから静かな声が聞こえた。

 ちょっと冷たい印象を受ける声だ。話し方のせいもあるかもしれないけど。



「ハルカさん。こいつが俺の副官のキーファだ。キーファ。お前から名乗れよ。」



「わかってますよ。私はスタグノ族の青の一族、キーファと申します。術士部隊の副隊長を務めさせていただいております。どうぞキーファとお呼び捨て下さい。」



 そうやって礼儀正しく挨拶してくれたキーファさんは、青緑色のカエルさんだった。

 青緑と言っても、青みの強い感じだ。



 見た目の印象はキィさんに似てる。…カエルさんだから当たり前か。

 でも、背はフェラリーデさんより低いくらいで、どっちかと言うと私に近い。



 いるなんてわからなかったけど、キィさんが大きいから見えなかったんだな。

 制服をきちっと着こなして、きびきびとした身のこなしで前に出てきた。



 さらに注目すべき点は、メガネをかけてること。

 メガネ丁寧口調の副官とか、テンプレな感じだなぁ。カエルだけど。



「里見遥加と申します。里見が家族名で遥加が名前です。どうぞ遥加と呼んで下さい。よろしくお願いします。」



 私が礼をすると、キーファさんも礼を返してくれた。

 何だか、ピシっとした印象の副隊長さんだ。きちんとしてるひとなんだろうなぁ。



「キーファ。お前はなんでそう固ぇんだ。もっとにこやかにしろよ。お嬢さんが怯えてるじゃねぇか。」



 なぁ?と同意を求められて、慌てて首を横に振る。

 いえいえ。礼儀正しいご挨拶をしていただきましたよ。充分です。



「何言ってるんですか。礼儀というものはいつどのような時でも…。」



「…おいおい、キィもキーファも終わったらどけよ。後がつかえてるんだぜ?」



「おお。悪い悪い。」



 呆れたようにそう言って、キィさんの巨体を押しのけて前に出てきたのはシードさんだった。

 シードさんもいたんだ。キィさんが大きいから…以下略。



「リリィ。お前から先に言ってくれ。俺は後でいいから。」



 シードさんに押されて前に出てきたのは、カーキ色の髪が美しいきりりとした美女だった。

 長い耳が見えてるから、エルフなんだろうな。美人だし。



「え、ええ。初めまして。治療部隊の副隊長をしております、深緑の森の一族が一葉、リリーエンタールと申します。どうぞリリィとお呼び下さい。」



「初めまして。里見遥加と申します。里見が家族名で遥加が名前です。どうぞ遥加と呼んで下さい。よろしくお願いします。」



「んで、俺が戦士部隊の副隊長のシードだ。俺には名乗りは不要だぜ。一昨日聞いてるからな。」



 シードさんに頷いて、自己紹介は省略させてもらう。

 正直疲れてたから助かった。



「そんでもって、リリィとは番だ。よろしくな?」



「よろしくお願いします。」



 番…夫婦ってこと?

 へぇ。シードさんとリリィさんってご夫婦なんだ。



「これで、皆と顔合わせは済んだかな~?」



 メルバさんが明るい声で前に出てきた。

 あ、ルシン君もだ。



「これから、僕共々、しばらくやっかいになるよ。よろしくね~。」



 メルバさんが言うと、私とルシン君以外の全員が礼の姿勢を取った。

 …ビックリした。いきなりだもん。でも、ビシっとしててカッコいい。



 それを余裕の表情で受けてるメルバさんもすごいけど。

 やっぱりエルフの長だけあって、メルバさんって偉いひとなんだなぁ。



 甘味狂いの変わったエルフって認識を改めなきゃ。

 話してるとどうしても『エルフの長』っていうのを忘れちゃいそうになるんだよね。

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