34.夜明け前
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フェラリーデさんが部屋を出た後、しばらくメルバさんとお話していた。
話の大半はあー兄ちゃんと地球の話だった。
しかも、何故かスイーツの話に花が咲いて、次の日に早速作ることになってしまった。
お勉強と訓練が始まるんじゃなかったっけ?と疑問に思いつつも、甘味は欲しいので頑張ることにする。
どうも、こっちには冷たいスイーツがあまりないらしい。
原因は種族の差。
こちらの世界はクルビスさんのような爬虫類系の種族が多い世界。
体温が下がるのは身体の機能が下がるということだから、冷たい食べ物はあまり発達しなかったそうだ。
エルフや獣人のような恒温体質の種族には需要があって、かき氷や冷たいフルーツジュースなんかはあるみたいだけど、それくらい。
かき氷も氷を削ったものに蜜をかけるだけの簡単なもので、私が宇治金時や白玉をのせたかき氷のことを話すとメルバさんの目の色が変わった。
それもそのはずで、ここ数年気温の上昇のせいで、獣人型だけでなく爬虫類系の種族にも冷たいスイーツの需要が出てきたとか。
今までの簡素なものだけでなく新しい試みがなされているものの、今一つ上手くいっていないみたい。
そこに私がすでに完成されている新しいスイーツを持ってきた、と言うわけ。
完成されたっていっても、トッピングのバリエーションやアイスクリームくらいなんだけど、メルバさんは大喜びだった。
なんでも、かき氷も、昔、暑さにばてたメルバさんのためにあー兄ちゃんが作ってあげたもので、その時にすっごく感動したんだって。
他にもホットケーキもどきやドーナツなど、いろいろなスイーツを作っては喜ばせたんだとか。
それで今回の私のスイーツにも期待しているそうな…。
プレッシャーだなぁ。そんな言うほど知らないんだけど。
とりあえず、小豆みたいなのがあるか確認して、餡子作ることから始めなきゃ。
それより、フルーツはあるんだから、フルーツソース作る方が早いかな?
「ふああ。」
早く目が覚めてあれこれ考えていると、隣からあくびが聞こえてきた。
ルシン君だ。早いなぁ。たぶんまだ夜だと思うんだけど。
「おはよう。早いね?」
「あ。おはようございます。ええ。僕、朝ご飯作ったりしてたんで、夜明け前には目が覚めちゃうんです。」
じゃあ、今は夜明け前なんだ。
早いと思ったのは間違いじゃなかった。
にしても、ルシン君お家のことやってるんだ。偉いなぁ。
お兄さんと暮らしてるんだよね?だからかな?
「そうなんだ。えらいねぇ。」
「兄が仕事してますから。」
至極当然といった感じで答えが返ってくる。
こっちでは子供が家のことを手伝うのは当然なのかな。それとも、ルシン君が特別なのかな。
これもフェラリーデさんに聞いとかなきゃ。
さて、ルシン君も起きたことだし、顔でも洗うとしますか。
もう寝れそうにないしね。