3.オムライスは豆ごはん
「熱いので、まだ待って下さいね。危険ですから。」
えっ。危険?熱いうちのほうが美味しいんじゃ…。
私、猫舌ではありませんが?
「熱いうちの方が美味しいんじゃないですか?」
「卵料理は熱いうちは膨らみやすいので、まだ湯気の出てる状態で切れ目を入れると、そこから破裂するんです。」
「破裂ですか…。」
それは危険ですね。大人しく待ちます。
そうでした。ここは異世界。見た目通りのものとは限らないんだった。
(飲み物があれだけ見た目と味が違うんだもんね。食べ物だってそっか。)
今までは、たまたま知ってる料理に似た食べ物が出てきただけだったんだろう。
というか、そんな危険な食材扱って料理人さんは大丈夫なのかな?
「冷めるまで、他の料理の説明をしますね。
1番がこのパムノキです。2番がサラチのサラダ。3番が果物です。飲み物はカフェになります。」
え~と、オムライスにレタスとトマトっぽい赤い野菜のサラダ、果物の盛り合わせにコーヒーですか。
朝から重いメニューだなぁ。食べられるかな?
「食べたいものをお好きなだけ食べて下さい。ハルカさんのお身体にどの食べ物が合うのか確かめていきますので。」
「好きなものを食べたいだけ…ですか?」
いいのかな。
「好き嫌いはいけません」って子供のころから言われてるんだけど。
「ええ。ハルカさんは今まで遠い土地で暮らされていたと聞きました。
こことはずいぶん気候が違うようですので、食べ物も違うと思います。」
…そうだ。そういう設定でした。
何とか驚きが顔に出ない様にし、アニスさんのお話を聞くことにする。
「食べ物によっては、身体が拒否反応を起こす方がいます。また、魔素が効率よく吸収される食べ物にも個体差があります。
ハルカさんにとって、どの食材が合うのか合わないのか1つ1つ確かめていく必要があるのです。」
ああ、だから朝なのにてんこ盛りなんだ。
合わない食材ってアレルギーのことだよね?で、合う食材は…魔素が効率よく吸収されるのか。そこは異世界基準だな。
「もう大丈夫でしょう。食べられますよ。」
あ、冷めたんですね。
湯気は出てないな…よし。
「いただきます。」
手を合わせてスプーンを持つ。
若干ビクビクしながら端の方をすくうと、何事もなく黄色い卵と赤いライスをすくえた。
ライスの赤がちょっと心配になるくらいビビットな赤だけど、他は普通にオムライスだ。
一通り観察し終えると、パクリと口に入れた。
もぐもぐもぐ、ごっくん。
咀嚼して飲み込むと、思わずため息をついた。
…見た目オムライスで味が豆ごはんってどうよ?