31.明かりも隠されてた
「ふふっ。びっくりした?」
メルバさんがルシン君を微笑ましげに見ている。
ルシン君はこくこくと頷いている。
「住むところが違うと習慣も変わるからね~。西と北でも違うところがいろいろあるんだよ~?」
「えっ。ルシェモモなのに、ですか?」
「基本は一緒だけどね~。住んでる種族のバランスで変わるんだよ~。
そうだね~。学校の話だと~、西では体術が必須でしょ?北では薬草の授業が必須なんだよ~。」
ルシン君がまた口をカパッと開けて驚いている。
考えてもいなかったって感じだなぁ。私も驚いたけど。
同じ街の学校なのに必須の授業が違うって、住んでる種族がそんなに影響するのかな?
その辺もフェラリーデさんに聞いておかないとなぁ。
とりあえずはここら辺に住むとして、そのうち家賃が安くて住みやすいところがあればそっちに移って…。
仕事探さないと。
「北は薬草を扱う店が多いから燃えるものに対する規制が厳しくて、その関係で本屋や布のお店も多いんだよね~。」
あ、布のお店って昨日見たあそこもそうかな?
色とりどりの布が垂れ下がっていて綺麗だったなぁ。
「あ。だから大きい本屋街が北にあるんですね。」
本屋街?
ここの本ってどんなのだろう。本を読むのは結構好きだったから気になる。
「そうそう。…あ~。6刻になったね~。そろそろ寝なきゃ。」
え。6刻って6時ですよね?
もう寝るの?
「は~い。」
ルシン君がしぶしぶといった様子で頷いている。
あ。寝るんだ。
「うん。いい子~。あ、ハルカちゃんはもうちょっと起きてるよね?傍の明かりの方をつけてカーテン引こうか~。」
「え。あ。はい。」
反射的に返事をしたけど、大人は寝なくていいんだ。
そうだよね。6時はいくらなんでも早すぎる。
「は~い。おやすみ~。えっと、ここを引っ張って~。」
メルバさんがカーテンを引いて壁のくぼみを引くと、引き出しみたいに箱状のものが出てきた。
ベッドのそばのスイッチをいれると明かりがつく。
明かりも隠されてた。
たしか洗面所も隠すように作ってあったけど、こっちでは基本的にそうなのかな?
何だっけ。これも収納式家具ってやつになるのかな。
物が少ないなぁって思ってたけど、病室だからじゃなくて隠されてるからなんだ。
壁を探ったらいろいろ出てきそう。
RPGっぽいなぁ。コソ泥みたいだからやらないけど。
あ、ルシン君におやすみって言ってない。
「あ、ルシン君おやすみなさい。」
「ふぁい。おやふみなさ~い。」
良い夢見てね。
今日はありがとう。