28.晩ご飯は・・・つみれ?
「ん?もう5刻か。早いな。」
「お腹すきました~。」
クルビスさんとルシン君が会話を中断して、窓の方を見ながら言ってる。
不思議なのは私は耳を澄ましても何も聞こえなかったってこと。
これも能力差なのかな…。
だとしたらマズイよね。時間がわからないって生活に困りそう。
「そろそろ夕食が出来てるころだ。取ってこよう。食べたいものはあるか?」
「お肉食べたいんですけど、どんなメニューがあるんですか?」
「そうだな。大抵あるが、今日のメニューは確か…。」
クルビスさんが壁際に行って何かを見ている。
張り紙?今の会話からするとメニュー表かな。
(何だか学校みたい。)
クルビスさんの様子に給食のメニュー表を思い出す。
いつどんなおかずがあるかで、学校での楽しみが変わったんだよね。…ご飯に牛乳は勘弁してほしかったけど。
「ああ。今日のおすすめはポルテだな。中はピイのつみれとセパのひき肉から選べる。」
「ポルテがいいですっ。セパのやつっ。」
クルビスさんがメニューを読むと、ルシン君がものすごい反応をした。
ポルテ?って何かの詰め物料理なのかな。「中は」って言ってたし。
「はははっ。いいだろ。まだ鐘が鳴ったばかりだからひき肉はあると思うぞ。ハルカは何がいい?」
「えっと…。」
と、言われましても。こっちの食材ってほとんど知りませんし…。
無難にパスタにしとこうかな?
「あ~。やっと終わったよ~。お腹すいたね~。」
そう言ってメルバさんが入って来た。
あ、お帰りなさい。
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で、結局。ルシン君がポルテ、メルバさんがココット、私もポルテになりました。
全部クルビスさんが持ってきてくれました。ありがとうございます。
クルビスさんは部下の方の報告を聞かないといけないらしくて、私たちにご飯を持ってきてくれた後そのまま仕事に戻られました。
なんだか使うだけ使っちゃって申し訳なかったなぁ。
「ん。美味しいっ。」
一口食べて、感動した。
今までのご飯も美味しかったけど、この料理も美味しい。
口の中にお出汁が一杯に広がって、中のつみれがジューシーだ。
あ、そうそう。驚いたのが『つみれ』。
何と。日本のつみれが元ネタでした。
もちろん材料は異世界のものなんだけど…。食べた感じはつみれそのもの。
ルシン君はひき肉みたいだけど、私のはエビのつみれみたいなお味。
材料がなんなのかは考えない。だってメルバさん食べなかったし。
「よかった~。こっちの『つみれ』もハルカちゃんの口にあったみたいだね~。
あ~ちゃんもつみれが好きだったよ~。冬にはよく鍋料理にいれてたなぁ~。」
あー兄ちゃん、ここでも文化垂れ流し。
つみれに鍋…。こたつも作ってたりして。
(エルフの里に行ってみたいんだけどなぁ。夢が壊れたらやだなぁ…。)
そんなことを考えつつ、ポルテをもう一口。
私の頭にはこたつに入ってみかん食べてるエルフたちが浮かんでいた。
…違和感がありすぎる。
これは勘弁してほしいわ。ホント。