27.シードさんはヘビ
「副隊長さん…でしたよね?」
「ああ。優秀な副隊長だ。面倒ばかりかけている。」
「シード副隊長ってヘビの長の息子さんですよねっ。すっごく強いって聞きましたっ。」
クルビスさんが苦笑しながら言うと、ルシン君が目を輝かせながらしゃべる。
うわ~。目がキラキラしてる。憧れのひとなのかな?
「そんなに強いの?」
私が聞くと、ルシン君がキラキラの目でこくこく頷いてくる。
クルビスさんもルシン君の様子に苦笑しながら頷いていた。
「はいっ。ヘビの一族って体術が得意な方が多いんですけど、シード副隊長は守備隊の中でも1、2を争うくらいの凄腕だって。」
怒涛の勢いでしゃべり始めたルシン君に驚きつつ、昨日会ったシードさんのことを思い出してみる。
たしか後ろ姿が印象的だったんだよね。模様があってヘビみたいだなって思ってたんだけど、ホントにヘビさんだったんだ。
「シードはお父上が守備隊きっての武闘派だったからな。小さい時から鍛えられていたから、腕は相当なものだ。」
クルビスさんがルシン君に頷きながらシードさんのことを聞かせている。
微笑ましいって感じだ。優しい隊長さんだよね。
きっとクルビスさんも子供たちの憧れなんだろうな。
昨日の街のひと達の反応も好意的な感じだったし。
「ぶとうはって何ですか?」
「ああ。えっと、戦うのが好きで、戦闘が得意なんだ。もちろん鍛えるのも。」
ルシン君が首を傾げて質問するのに、クルビスさんが一生懸命答えている。
ふふっ。子供に説明するのって難しいもんね。
「シード副隊長はお父さんに戦いかたを習ったんですね。」
「ああ。俺も習ったが、一度も勝てなかった。触れることも出来なかったな。」
「ええっ。クルビス隊長でもですか?」
ルシン君が驚いて口をカパッと開けている。
歯を見せちゃいけないんじゃなかったっけ?驚き過ぎて忘れているのかな?
「ルシン君。お口。」
私が自分の口を指して言うと、ルシン君はハッとして慌てて口を手でふさいだ。
「ごめんなさい。驚いて…。」
「いいや。実際に見たらもっと驚くぞ。動きが早すぎて目がついていかないからな。
今年は武闘大会があっただろう?西でやるはずだから、見に来るといい。」
「はいっ。」
クルビスさんは気にした様子もなく、上機嫌で大会のことを教えていた。
ぶとう大会があるんだ。ぶとうって「武闘」の方だよね?踊るほうじゃないよね?
「武闘大会があるんですね。毎年ですか?」
「いや。2,3年に1度だ。警備が手薄になるからな。毎年は出来ない。」
あ~。そっか。強さを競うから、警備する方々が参加するんですね?
で、警備が手薄になるっと…そりゃ危ないわ。
クルビスさんの話に納得して、機会があれば見に行こうと頭の中で計画する。
だって、「見に来るといい」って言ったもんね。ってことは、クルビスさんも参加するんですよね?