25.知らないことは聞きましょうパート2
「ハルカでなければキグスの糸には気付かなかった。ルシンを見付けたのはハルカの手柄だ。」
キグスの糸って、あの見えないくらい細い糸ですよね?
確か、あの糸を持ってたからルシン君とお話出来たってメルバさんが言ってたような…。
記憶をたどってキグスの糸の情報を思い出す。
昨日は盛りだくさんな1日だったけど、あの糸は印象に残ってる。ほとんど見えないくらいの細さだった。
「キグスの糸って、あのすごく細い糸ですよね?」
「ああ。キグスという蜘蛛の吐き出す糸だ。伸縮性が強くて、この糸で織った布はドラゴンの一族が本体に戻っても破れたりしない。」
「ええっ。ドラゴンの本体って、あのおっきい身体ですよね?」
衝撃だ。ドラゴンの本体を見たのは影だけ見たルシン君のと、遠目で見たルシェリードさんのくらいだけど、かなり大きかったはず…。
その大きさに耐えられるとか、丈夫とか伸縮性があるとかって言葉じゃ足りないような…。
私の驚きにクルビスさんもルシン君も笑ってる。
きっとこっちでは常識なんだろうなぁ。
「ははっ。ビックリしますよね?僕も最初に教えてもらった時は信じられませんでした。
でも、本当に破れないんですよ。」
ルシン君が笑いながら説明してくれる。
ルシン君も最初は信じられなかったんだ。そりゃそうだよね。大きさが違い過ぎるだろうし。
「すごい糸だね。でも、あの糸で布を織るのって大変そう…。」
何年もかかるんじゃないかな?
私が思わずつぶやくと、クルビスさんが答えてくれた。
「ああ。あの糸を布に織り上げるのには非常に技術がいる。専門の技術者がいて、1枚の大きな布を織るのに大体30年から50年かかるそうだ。」
いいっ。やっぱりすごく時間がかかるんだ…。
人間なら1枚織れるかどうかで寿命が尽きるだろうなぁ。高そう…。
「手間ヒマがかかってるんですねぇ。」
「ああ。だが、ドラゴンの一族には必須だからな。皆1枚は持っている。」
「でも、僕の破れちゃいました…。あれ、すっごく高い布ですよね?」
ルシン君が心配そうに言う。
やっぱり高いんだ。
「…ああ。親戚にもらえないのか?」
「親戚にもらったのが破れたやつだったんです…。僕のところ、ドラゴンの一族は大叔母しかいなくて…。」
「それは珍しいな。」
ルシン君の話にクルビスさんが驚いている。珍しいんだ。
ドラゴンが大叔母さんとルシン君だけ…。確かに異種族婚が当たり前でも、親戚にこの2人だけっていうのは少ない気がする。
「そんなに珍しいんですか?」
でも良くわからないから聞いてみよう。
ドラゴンのことは知りたいもんね。