2.洗面所は隠されている。
「さあ、顔を洗いましょうか。こちらに来ていただけますか?」
アニスさんが差し出した手を取って導かれるままに歩いていく。
ベッドと反対側の壁についたと思ったら、アニスさんが壁を押すと壁が横に動いた。
(…隠し扉?)
「ここが洗面所になります。その隣がお手洗いで…。」
洗面所ですか。
たしかにフェラリーデさんのところで借りたのと似た作りだ。
(でも、こんな隠すように作る意味あるのかな?フェラリーデさんの所はちゃんと木製のドアがついてたのに…。)
ま、気にしても仕方ないか。
とにかく身支度をしよう。
「これをこのコップに注いで、一杯分を口に含んで吐き出してください。口の中が万遍なく浸かるようにしてくださいね。」
差し出されたビンと小さなコップを眺める。
口をゆすぐってこと?歯磨きのかわりかな。
頷いて受け取ると、アニスさんは洗面所から出ていった。
ドアを閉めながら「着替えを用意してますね。」と言ってくれたので、たぶん、今用意してくれてる。
急いで身支度しなきゃっ。
とりあえず、受け取ったビンからコップに注ぐと、綺麗なミントグリーンの色が出てきた。
綺麗だなぁ。この世界の空の色だ。
…口に含みたい色ではないけど。いや。まだマシか。
(地球で売ってたやつはもっとどぎつい色もあったもんなぁ。)
うん。色味的には刺激が優しそうで安心感あるよね。
どうか辛くありませんように。ミントティーは好きだけど、ミントの刺激はごめんです。
覚悟を決めて一気に口に含む。
すると、口の中一杯に……水の味が広がった。
ガクッ
思わず肩を落として、言われた通り口をゆすぐ。
歯ブラシは無いみたいなので、丁寧にゆすぐことにした。
味が水なので洗えてる気がしないけど、そう指示されたので従うことにする。
口の中のものを吐き出し、顔を洗ってトイレにも行ってから出た。
「着替えが汚れるといけませんから、今日はこのまま朝食をとりましょうか。今朝はパムノキですよ。」
え?何の木?
聞き返そうとすると、目の前にホカホカ湯気の出ているオムライスが差し出された。